1060連目 コンプリート?
前回のあらすじ
『セルシウス、アリサと和解成立』
外注さんの今日のひとこと
『最近後書きで局長がイジめてくるんです……』
外注さんのワンポイント攻略情報④
『ガチャですでに持ってるキャラが出るとASLvが上がるで』
『ASLvがMAXのキャラは、ガチャから出なくなるんやで』
地獄絵図、阿鼻叫喚。ガチャとはこうも人を狂わせるのか……。
目の前の光景は、俺を妙に冷静にさせた。
「うがーー!! またダブった!!」
「貴方とはすでに契約してましてよ!!」
「違う、そうじゃない」
そんな声に、本人の意思と関わらずダブって契約してしまった者達は、非常に気まずい顔をするばかりだ。
その様子に、鬼若はチラチラと俺を見る。
「どうした?」
「主様も……、俺との契約の時、あのように思ってたのでしょうか」
「…………。正直に言えばそうだな。
ま、そういうシステムなんだから、誰のせいでもないさ」
回す方も、出てくる方にも残酷なのが、ガチャというシステムだ。
しかし今回に限っては、鬼若の鬼ダブりはプラスに働いた。
なにせ「俺は鬼若を90回ダブらせた男ぞ?」と言うだけで、こうやって見守る役に回れたのだから。
俺を除く23人で全員契約できれば良し。
もし何人か残るようであれば、俺がなんとかするという手筈だ。
普通なら運0の俺にそんな事はできない。
しかし、すでに他の契約主と契約している者は、ガチャから出てこない。
そのため、俺が最後に回す事によって、未契約の者のみが出てくるという寸法だ。
何人未契約者が残ってしまうかによるのだが……。
「まくまさん、やりましたよっ!
ごしゅじんがSSRを引き当てたのですっ!!」
「おっ、やったなカオリ。これで残るSSRは何人だ?」
「あと2人だね。でも、もうほとんどの人が、契約石を使い切っちゃったみたいで……」
「おーっほっほ! 最後はわたくしが2人抜きして差し上げますわ!!」
これほど分かりやすい死亡フラグがあるだろうか……。いや、爆死フラグと呼ぼうか?
ほら、言わんこっちゃない……。
「くっ……、2人抜きはなりませんでしたが、1人は確保いたしましたわ!」
「喜んでる所悪いが、それ100回目の確定枠だからな?」
「なっ!? いえ、なんであっても1人には変わりありませんわ!」
「あぁ……。うん、そうだな」
そうなのだ、今回は契約さえできればいい。出てきたキャラの強さも関係ない。そして残すは1人。
他の奴らは皆契約石を使い切ったので、俺がソイツを引けばミッションコンプリートだ。
俺にSSRを引き当てられるわけないだろって思うかもしれないが、そこは大丈夫だ。
なぜなら、先月の配布石で100連分は貯まっているので、先ほどのアリサのように確定分で必ず手に入る。
そして俺の手持ちのSSRは、ASLvシステム変更時に貰ったアイテムを使い、双方ASLvがMAX。
この2人がダブりで出てくることはなくなっている。つまり勝ち確定である。
そんなワケで、俺は意気揚々とガチャを回したのだ。
「これで90連目っと……。
あれ? なんでSSR演出が?」
魔方陣から発せられる七色の閃光。それは誰もが羨むSSR確定演出で間違いなかった。
けれど俺の運0では、100回目にしかお目にかかれないはずなのだが……。
「まくま君、年末に10連契約したじゃない」
「あっ、そっか。イナバが出たときの……」
あまりのショックに記憶から消し去っていたが、あの忘年会での爆死だ。
ま、残る1人が少し早く出てくれた、俺にとってはその程度の話だ。
さて、最後のSSRは、一体どんなヤツなんだろうな?
「はいっ! さいっ! 熊殿、ご指名ありがとねー!」
「えっ? お前はケモナー三銃士の……」
「もしかしてさ、僕の名前覚えてなかったりー?」
「いや、そんな事は……」
現れたのは、ケモナー三銃士の緑枠だ。
しかしおかしい、モブは5属性まとめて1人扱いのはず。
ならばコイツが出てくる事などありえない。しかもSSRでなど……。
「……彼はハジメ。……冬のイベントに先立って、去年の10月に実装されたキャラクター」
「あぁ、だから俺が知らなかったのか……。ってことは、アカメと別枠なのか?」
「そうだよー? 同じ趣味を持つ同志だから、一緒にいただけだよー?」
「その通り。私と同一扱いの5人、そしてハジメ殿。
その後に熊殿が会に入ったため、熊殿は会員No.7番だったのです」
どこからともなく解説に入るアカメ。
なるほど、色々と説明が付くが……。それなら先にその辺教えておいて欲しかったな。
まぁ、知らなくても困ることはなかったけど。
「ともかく、これで全員だよな?
アイリ、最終確認と同盟の手続きを頼む」
「ちょっとお待ちになって。これが、なぜ助かる事と繋がるのです?」
「あぁ、説明してなかったな。神様が願いを一つ叶えてくれるって話は聞いてただろ?
その願いを“契約で繋がっている者をカオリと一緒に転移させて欲しい”ってのにするつもりなんだ」
「でしたら、カオリさんとの契約が必要ではなくて?」
「それは同盟で解決できるんだ。
同盟ってのは、システム的に“契約主同士の契約”って事になってるからな」
そう、学園運営局に泊り込んだ2週間の間に、俺は同盟システム制作を手伝った。
その時、作業を簡略化させるため、俺は既存のシステムを流用したのだ。
手抜きのつもりだったが、めぐり廻って、こうして皆を助ける事に繋がったわけだ。
そして、それを知るのは、局長達が居ない今、俺しか居ない。なのにあの白熊は……。
「なるほど。その文言であれば、同盟の契約で繋がった先の契約者も、鎖のように連なって“契約関係で繋がっている者”と見なす事ができると……」
「そういうコト」
頭の上に“?”を浮かべていたアリサだったが、アカメの解説で一応納得したようだ。
しかし、ここで思わぬ自体に見舞われた。
「……同盟システムって何?」
「ちょっ、アイリ!?
同盟は、契約主同士の協力関係を運営が承認するシステムで、お前に承認してもらわないといけないんだけど!?」
「……こちらでは、そのシステムが実装されていないのだけど」
「……マジ?」
「……マジ」
「ウソだろ……」
そうだ、そうだった。同盟システムはゲームに反映されていない。
それは、局長室でアイリと話したときに聞いていたハズだった……。
まさか、最後の最後で躓くとは……。
「お待ちなさい! 諦めるのはまだ早くてよ!
その方が知らなくとも、実際わたくしとアーニャは同盟を結んでおりますわ!
ならば、存在しないわけではありませんわ!」
「……調べてみる」
アイリが調べる間、俺は嫌な汗をかき続けた。
大口叩いておいて、やっぱりムリでしたなんて結果は絶対に受け入れたくない。
何より、皆を助けられないなんて真っ平御免だ。
そして、アイリはもったいぶった口調で喋り出す。
「……良いニュースと、悪いニュースがある」
「どっちでもいいから結論を」
「……同盟システムらしきものは見つかった」
「よしっ! これで助かるな!」
「……けど、やり方がわからない」
「嘘だろ!? 紙にサインして、承認してもらうだけだぞ!?」
「……そちらではただの紙でも、こちらではどういったデータなのか分からない」
そうか、アイリにとっては、この世界自体がただのデータなのだ。
手続き上の、単なる紙にしか見えないものでも、1からプログラムを組む必要があるのだ……。
そしてそれは、局長達が行うよりも、もっと複雑な作業となるのは目に見えていた。
「前書きで私を悪者にするのはやめるんだぜ!」
『実際そうやん?』
「で、結論を聞かせて欲しいんだぜ」
『んー、まぁ一応できなくはないけど?』
「なら決まりなんだぜ」
『職権乱用な気がするんよなぁ』
「それは職権を与えたヤツが悪いんだぜ」
『これはひどい開き直りを見た』
「そんな事はどうでもいいんだぜ!」
『はいはい。次回は7月23日(火)更新予定!』
「用意された結末なんてぶっ壊してやるんだぜ!」
『結末を! ぶっ壊す!!』「結末を! ぶっ壊す!!」
『局長元ネタ分かってる?』
「分かってないんだぜ」




