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910連目 ゆっくり尋問されていってね!

前回のあらすじ

『まくら氏、局長に呼び出される』


外注さんの今日のひとこと

『湿度と気温が上がりゆく季節。俺はすでにダウンしそうです……』



「ゆっゆっ! お茶だよ~!

 おまんじゅうもあるから食べてね~!」



 局長室へ案内してくれたのは、ピンクのボール……。

じゃない、職員A(仮)は、器用にお茶を淹れてくれた。

俺達は「あぁ」とだけ返して、そのお茶を飲みながら局長を待つ。

部屋は前に来た時とは違い、本棚などの家具が増え、色々な書類らしき本や置物が置かれている。

どうやらこの部屋も有効に使われているようだ。



「もうすぐ局長くるからね~。

 ゆっくりしていってね!!」



 いつもの決めセリフを言った職員は、ノルマ達成とでも言いたげな、ドヤ顔をしながら部屋を出てゆく。

残された俺達は、部屋をキョロキョロと見回しながら、暇を持て余していた。



「なんだか、前と雰囲気が違うね」


「あぁ、前に来た時から四ヶ月くらいか?

 職員達も、落ち着いた感じがあるよな」


「そうだね。うまくやれてるようで安心したよ」



 カオリが前に来た時は一番荒れていた時期だ。まさに阿鼻叫喚といった様子だった。

その頃から考えれば、局内は綺麗で、掃除が行き届いている事が見て取れる。

それに、職員達も目の下にクマを飼っている事も無い。


 それもこれも、局長がああ見えて優秀であることの証明だ。

そうこうしていると扉が開き、見慣れた黄色ボールがぽよぽよと部屋に入ってきた。

噂をすればなんとやら、である。



「待たせて悪かったんだぜ」


「よう、久しぶり……、でもないな。修学旅行の時に会ってるし」


「え? 修学旅行に来てたの?」


「バトルの立会いをしただけなんだぜ。

 だからクマには会ったけど、南の島を観光したわけじゃないんだぜ」


「せっかくなんだし、ちょっとくらい遊んだって良かったんじゃないか?」


「残念な事に、局長ってのはそんなに暇でもないんだぜ」



 そんな話をしながらも、局長はマイマグカップにコーヒーを淹れ、俺達の座るソファーの前に陣取り、饅頭を頬張り一気に流し込んだ。

とこで、コーヒーと饅頭は合うのだろうか?



「で、そのお忙しい局長様が俺達に何の用だ? また何かの依頼か?」


「それならメセージで済ますんだぜ」


「それじゃぁ、また不具合が起きたの?」


「不具合……。まぁ、そう言えなくも無い問題だぜ」



 いつもの様子とは違い、なんとも歯切れの悪い返事だ。

言葉を選ぶほどの思慮深さはないと思ってたんだけどな。



「ま、単刀直入に聞くんだぜ。

 クマ、お前の隠し事、全部話してもらうんだぜ」


「へぁっ!?」



 なんとも気の抜けたバカみたいな声が出てしまった。

隠し事? うん、色々あるけどさ。ドレノコトカナー?



「いやいや、隠し事って何の事だよ?」


「しらばっくれても無駄なんだぜ! ネタは上がってるんだぜ!!」


「なんだその、刑事ドラマの取調べみたいなノリは……」


「あくまでもシラを切るつもりなら、こちらにも考えがあるんだぜ!」



 妙なテンションの高さで取調べごっこをする局長は、何やら本棚の書類の中から一枚の紙を取り出す。

そしてテーブルの上に置くと、その紙から魔方陣が浮き上がり、何やら雑音混じりの声が聞こえてきた。



『……う訳で……っ! 俺はあんま親父……きじゃないんだよな、って悪……なつまんねー話してさ』



 雑音混じりで途切れ途切れではあるが、その声は確かに俺のものだった。

そしてそれは、あの修学旅行の夜にカオリと話していた内容だ。


 その録音された音声を聞いたカオリは顔を青ざめさせている。

俺にしてみれば、この世界を牛耳っている学園運営局(うんえい)がこんな事をするのは、予想こそしなかったが、不可能ではないだろうな、という程度の認識だ。



「うわっ、盗聴かよ……。趣味悪いぞ局長」


「学園都市を管理する者として、手段は選べないんだぜ」


「はぁ……、証拠があるんじゃ言い逃れは無理か……。

 けどさ、この時の話以外に何を話せと?」


「知ってること全部なんだぜ!」


「つまり、俺の生い立ちやらなんやら全部を、履歴書に書くように話せと?」


「そうじゃないんだぜ!!」



 ぷんぷんという音が聞こえそうな雰囲気で、ぽよぽよ跳ねながら反論する局長。けれど“知ってる事全て”ってのはそういう意味になる。

情報を聞き出したいなら“何を”知りたいのか、明確にすべきなんだぜ?


 なんて事を本気で思ってる訳ではない。ただ、ちょっと時間稼ぎをしただけだ。

うまく誤魔化す方法を考えるために。



「で、結局何が聞きたいんだよ?

 俺が異世界人だとして、学園都市には来訪者って名前の異世界人が溢れてるじゃねーか。

 もしかして、報告してなかったのがマズかったのか?」


「そうじゃないんだぜ! あっ、そこも問題だけど、そこじゃないんだぜ!

 一番聞かないといけないのは、この世界がゲームだとかいう話なんだぜ!!」



 どうやらうまく誤魔化されてくれる気はないようだ。

異世界人だらけの世界観のおかげで、俺とカオリが異世界からやって来た人であっても問題はない。

その話でうまく丸め込もうなんて思っていたんだがな。


 今さらだが、この世界の成り立ちを喋ったのは失敗だったな。

そのせいで、カオリにも余計な心配をさせてしまう事になったし、局長にこうやって問いただされる事態に陥ってしまった。


 こう見えて局長は以外にも優秀だし、誤魔化すのは無理そうだ。俺の“知っていること全て”を話そう。

俺を転生させた神と、カオリを転移させた悪魔を含めて……。





「ってことで、この世界は、俺達が居た世界のゲームを元に創られてて、その創ったのが悪魔だか神だからしいんだよ」


「全く、こんな大事な事を隠してるなんて、どうかしてるんだぜ!」


「いやさー、こんな話、普通信じないだろ?」


「確かに……。信じろというのが無理な話なんだぜ。だけど今はそうじゃないんだぜ。

 似た境遇の人が二人も居るし、別の証人もこちらは掴んでるんだぜ」


「別の証人? 俺達以外にも同じ転生者が居るのか?」


「まぁ……、似たような人物ってだけなんだぜ。

 今日は、その人と会わせるために呼んだんだぜ」



 そう言うと、局長は扉へぽよぽよと跳ねてゆき、扉の外に待たせていた人物を招き入れた。

『局長は引継ぎ書だけじゃなくマジで監視してたんやね』


変態盗聴局長。


『若干早口言葉っぽい辛口コメントあざっす』


さて、次回重要人物が登場するようです。問題は次回更新がいつかって話ですけど。


『次回は明日6月9日(日)に更新しますよ!』


今週は2回更新する気になったのか。


『7月中に終わらないフラグが立ちそうだったので……』


いつもながらメタい。

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