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銀河連合日本 The Next Era  作者: 柗本保羽
本編
67/89

【第一一章・進化の礎】第六六話 『キャッスル・アンノウン』

 惑星イルナット改め、惑星エルミナスから約一三億キロメートルの距離にある名も知らぬガス惑星。

 一三億キロメートルというと、おおよそ地球―土星間ぐらいの距離になるが、そのガス惑星は特に何か突出した特徴があるわけでなく、太陽系で例えればそれこそ土星から輪っかを取り去ったような星であった。

 現在わかっている事として、ティ連エルミナス駐留軍が、この恒星系の方々へ放った偵察ドローン型無人ヴァズラーの送ってくる情報を総合すると、このエルミナスの恒星系では第五番惑星になるのがこのガス惑星のようである。なので、エルミナス駐留軍内では特に固有名称を設けず、類別番号呼称として、『惑星フィルタ・フィラ』。地球語読みに直すと『フィルタ・ファイブ』という意味で呼んでいる。ちなみにフィルタとは、イゼイラ語のアルファベットで、この恒星系をフィルタ恒星系と現状は呼称しているようである。つまり『フィルタ・フィラ』とは、『フィルタ恒星系第五惑星』という単純な意味だ。


『……ト、いうコトでですネ……このフィルタ恒星系というのは、惑星の配置構成から見ても色々と、このタイヨウケイと非常によく似ている恒星系でしテ……』


 さて、ここは惑星地球、日本国の市ヶ谷防衛省近隣にある、通称『ティ連防衛総省ビル』である。

 正式な名称は『ティエルクマスカ銀河星間共和連合防衛総省太陽系方面軍連絡協会本部ビル』というのだが、まあ早い話がティ連太陽系方面軍としての特危自衛隊の軍事活動とは別に、日本におけるティ連防衛総省の事務方、政治方の活動拠点となる建物である。

 ヤルバーンでのオフィスとは別に、柏木真人長官閣下の日本本土でのオフィスはここにある。で、フェルさんが公務と称して柏木が日本にいる間はしょっちゅう遊びに……ゲホゲホ……会談にきているわけで、本日も柏木が火星から地球に戻ってきたのをいいことに、このビルにお茶しに来ていた。


『……と、ソンナ感じですから、まー、なんといいますか、科学者としての私の知見ですと、ここまでタイヨウケイによく似た恒星系ですのデ、惑星エルミナスのハビタブルゾーンの位置関係も考えますと、このエルミナスにチキューとよく似た文明が栄えていたという事実も、まあまあ納得できる話ですヨ』


 と、そんな学者様としてのご意見を柏木に教示するフェルフェリア日本国外務大臣兼副総理。


「ご解説ありがとうございますマルマ様」

『イエイエでス』


 いかんせん柏木は、連合防衛総省長官閣下とはいえ、所詮は芸大卒のなりゆきでこの地位になったオッサンである。やはり学術解説は、科学者でもある愛妻フェルさんの担当だ。

 まったく優秀な外務大臣兼副総理閣下である。どこかの並行世界のインディーズホラーゲームに出てくる怨霊みたいな顔した外相とはえらい違いゲホゲホゴホンゴホン……

 

「なるほどねー。じゃあもうフェルも知ってるとなれば、あの惑星エルミナスの文化レベルの話とかも、日本政府各方面や野党に行き渡ってるんだ?」

『ハイですね。イノサキ総理にも、もう情報はいっているデスよ。そんでもっテ陛下エルバイラにも宮内庁を通して資料はお渡ししているでス。で、今度予算委員会の、“対ヂラール研究委員会”で、参考人として私が科学者の立場で出る事になってるデス』

「おー、すごいねフェル」

『エッヘンです』

 参考人質疑ではあるが、久々の科学者であり、有識者の立場での仕事ということで、張り切って胸を張るフェルさん。最近少し大きくなった気がしないでもない。


「でも、その月丘君の資料に書いてあった、タリア博士っていう方だけど、すごいね。その時空間遡上ナントカとかいうやつ」

『んー、マア、私達にはもう普通のことだったので、ナントイイマスカ、スゴイ技術とは私達も常日頃から思ってはいますけど、まさかマサトさん達にそこまで驚かれるとは思ってなかったですヨ』

「いやいやいやいやいや、あの一〇年前のファーストコンタクトの時の話だろ? あの家屋火災の案件、今でもはっきりと覚えてるよぅ……まあもう当時はまだよくわかんないハイクァーンのスゴイ技ということで納得してたけど、その技術の内訳が、時空間ナンチャラ技術だって、そりゃ驚くよ普通。まさかタイムマシン的な事だったなんてさぁ……って、この技術のこと、あれから一〇年経つけど、初めてだよね、その内訳が公開されるのって」

『ハイですね』

「で、ヤル研とか、日本の科学部門はしって『た』の? この話」

『ううン、多分初めてだと思うですヨ』


 あれから一〇年経って、日本もティ連科学の詳細な解析は進んではいたが、まさかタリア博士発のこんな技術が今になって出てくるとはと、恐らく各研究部署も驚いているだろうと思うわけである。いや、それとも一〇年経ったが故か、という考え方もあるが……

 こういうところ、ティ連人も普通に使ってるから改めて言わないのはわかるが、この技術だけを中心に動くエルミナスのような事件がクローズアップされれば大騒ぎになるのも致し方ないところではある。

 まぁよく似た話は地球社会でもあるわけであるからして……あの誰でも知っているモノが、実はこんなトンデモ高度なテクノロジーが使われていましたとか言われて「エーーーー!!」とか驚くシチュエーションな事なんてのは、わりと普通だったりするわけであるからして。


 と、二人がそんな仕事の話を中心に、雑談も交えた会話なんてやってると、一階カウンターの日本人お姉さんが、プーと音鳴らしてインターフォンの小さなVMCモニターを立ち上げてくる。


「はいはい、なんですか?」

『井ノ崎総理大臣閣下がお見えになられました』

「あ、そうですか。ではお迎えにあがるので、ロビーで少し……」

『井ノ崎総理の方から長官の方へお伺いするので、ということだそうで、もうそちらへお向かいになられました』

「あー、申し訳ないなぁ……」

 と、頭をポリポリかきつつそんな会話をしていると、エレベーターのポンという音が聞こえて、しばし後柏木の執務室にノックの音。

 柏木の秘書さんが井ノ崎を彼の執務室へ誘う。


「やあ柏木先生、お久しぶりです」

『どうもどうも、いやはやお久しぶりです、井ノ崎総理』

 

 井ノ崎は応接用ソファーのあるテーブルの方へ視線をやる。柏木とフェルがお茶してた様子を窺い見ると、


「フェルフェリア先生、もう事前説明の方は?」

『ハイです総理。大体のところはマサトサンにお話しましたですヨ』

 

 柏木は井ノ崎と側近の官僚らをソファーへ誘う。フェルは井ノ崎達用にコーヒーを淹れてたり。普通は秘書さんがやってくれる仕事なんだろうけど、そこは秘書もわかってるので、フェルに任せている。要するにコーヒーやお茶淹れるのも、フェルの趣味のうちなのだ。


「で総理、フェルから色々聞きましたけど、日本の政界、財界や国際連邦各国の反応はどんな感じですか?」


 柏木もこの連合防衛総省長官という地位になってからは、もうここ最近シビアらのゼスタールとの接触に始まって、グロウム帝国の一件に、ゼスタールの惑星奪還作戦の件と、軍事案件にどっぷり浸かってたので、彼の本来お得意とする政治交渉なんざ全然していないわけで、特に地球世界の政治には昨今とんと疎いところがあったりする。で、惑星イルナット改め、惑星エルミナスがらみの件も含めての話もあるが、現在国際連邦とティ連は情報共有を密にするという建前も含んだ紳士協定もあるので、惑星サルカス戦の一件以降の流れで公開が進んでいるこのエルミナスの案件も、当然ながら現在は機密扱いではなく、地球世界各国国民が知る情報となっている。

 そこでこのエルミナスの件で、日本社会や国際社会が話題にしている要点ともいうべきところは3つ。


 一つは、エルミナスの宇宙における環境や、そこで発生した文化文明水準が地球世界に酷似しているという点。

 一つは、それを解析した『時空間遡上再生技術』というティ連超科学。

 一つは、エルミナスの文明が、最終的には制御に失敗して滅んだとしても、ヂラールを一時でも制御下に置くことが何故できたのか……つまり、このエルミナス型の改造ヂラールをどうやって研究するに至ったのかの謎。


 この三点であった。

 今や国際連邦もヂラールのような絶対敵となる、一種の宇宙規模災害の範疇に入るような事象にも対応するため、こういったティ連が公開する事象情報には国際連邦加盟各国国民ともども関心が高いのである。

 もちろんそれは連合日本国民も同じで、現在では政党支持率の重要な要点にもなっていたりする。


「……なるほど、それは確かに国際連邦も宇宙時代に突入したわけですから、当然関心も高くなりますね。日本社会も先日の情報公開制限が、大きく緩和された影響もあってでしょうか、総理?」


 井ノ崎はフェルの淹れてくれたコーヒーをすすり、「お? うまいな」という顔をしながら、


「そうですね、それもあります。特に我が国の場合、国民みんながもう宇宙世界の事件や、ティ連規模の政治的な話題にも普通に関心を持つようになっていますから、今回のこの件も政府としては結構重要なところなんですよ」


 井ノ崎の話に「なるほどね」と頷く柏木。井ノ崎は続けて、


「ところで、総諜対から報告があったのですが、エルミナスでの謎の人工天体の情報は……」

「ええ、聞いていますよ総理。なんでも大きさがヤルバーンクラスの人工天体で、宇宙に浮かぶ“城”のような物体だとか。まだ映像資料は見ていませんが、ヤルバーン州軍の軍艦とともに既に動いていると聞いていますが」

「ですね……それがあのエルミナスのヂラールと何か関係があるのかという事ですが……」


 頷く柏木。そしてもし人工物体がヂラールと関係しているのなら、当然その背後にあるあの存在との関係も? という話になるわけなのだが……


    *    *


 さて所変わって恒星系『フィルタ』

 月丘達は人型機動戦艦コウズシマに、ゼスタール製の人型カルバレータ攻撃艦ヤシャと二艦ながら艦隊を組んで、件のガス惑星『フィルタ・フィラ』の宙域へと向かっていた。

 この恒星系が太陽系なら、地球~土星間の距離程度なら、スパっとディルフィルドジャンプで一瞬のうちに移動してしまうところなのだが、いかんせんここは別宇宙で未知の恒星系だ。そこは航路調査も含めた星図作成のためということもあって、恒星系内の通常航行で高速移動中である。目的地までは約八時間を予定している内の、既に三時間が経過していた。


 その間、月丘達合同調査チームは、それまで所謂 “ついで” でこの地まで送ってもらっていただけの、航行試験でこっちにやってきていたコウズシマも、正式に総諜対に協力するようゼルエから通達が来たという話で、彼らも合同調査チームの正式な仲間として活動する事になった。

 ということで、その代表として増えたお仲間二人、この艦の艦長であるパーミラ人デルンの『ログマ・ジェズ・ハダンズ』艦長に、先のフィルタ・フィラでの異常を知らせてくれたイゼイラ人副長の『ベリロス・ヤーマ・フォマーシュ』である。


『私のような典型的な突撃巡洋戦艦の艦長だったデルンが、まさかこんな妙ゲホゲホ……変わった最新鋭艦の艦長に抜擢されるとはなぁ。ヤルマルティアと接触していからというもの、時代も変わったよなぁ』


 ティ連人に「時代も変わった」と言われてはとも思うが……

 とそんな典型的な中型戦艦乗りのベテラン艦長であった地球人年齢で四〇代後半のログマ艦長。制帽を斜めにかぶり、いつも制服の袖を肩まで折り上げている気さくな艦長である。

 で、『ベリロス副長』の方はと言うと……


「ヤーマ!? ヤーマ姓は確か、ガイデル帝の家系の、旧皇族のお名前でしたよね? もしかしてフェルフェリア大臣とご親戚ですか?」


 と、月丘もそのぐらいの知識はあったので尋ねると、


『ああ。とはいっても私は所謂「旧皇終生議員資格」の範疇には入らない、遠縁も遠縁で、旧貴族でも下の方の階位の親戚だから、フリンゼの「皇帝の掟」もあって、かの方も全然知らないようなほぼ他人みたいな親戚だけどね、ハハハ』


 こちらの副長さんはそんな感じで、なんと階位は低かったそうだが、一応旧貴族

の出身で、みんなが少々驚いていたり。地球人年齢で見た目は月丘と同年代ぐらいか少し上。でもって物凄いイケメンさんなのだが、妻子持ちなのでタリアが残念がってたりする。


『でも、ナヨクァラグヤ陛下、あいや、今のナヨ閣下にはヤーマの名前を持つ者として拝謁させていただいたよ。いや~あの時は緊張したなぁ……自分の家系の親族がいたってえらい喜んでくれてさ』

「フェルフェリア大臣とは……あ、そうか、皇帝の掟ですか」


 そう、フェルは女帝として国民と接触する際に公平を期する神聖な立場であるということで、女帝の地位を退位するまで、つまり『姫ちゃん』が大人になって跡を継いでくれるまでは親戚縁者とは仕事の都合といった特別な理由がない限り接触できない立場にあったので、ベリロスとフェルは実のところ一度も顔を合わせたことがないのだという。


『まアもう今はそこまで厳しく言う人もイないんだけど、旧貴族にはこういった規則にうるさい連中も結構いてね。私としては、私がドうこうという事よりも、フリンゼの方が可哀想だと思うのだけれど……』


 自己紹介も兼ねての会話で、こんな愚痴もこぼしてたり。

 と、そんな会話もこの航行中にあってので、月丘の人当たりの良さもあってかみんなとも意気投合できたようで、フィルタ星系内の調査も順調に当該地点へと艦は進む。


 そんな中、ログマ艦長はブリッジで同行するヤシャ級人型攻撃艦を船外モニターを見ながらえらく気にしているようで、ブリッジで休めの姿勢で突っ立つシビア・ルーラ先生に、


『あれ……今は無人なんだよなケラー・シビア』

『肯定。現在は我々ゼスタールの操艦合議体が遠隔運行をしている。今のような艦隊航行程度の運用であれば、遠隔運行でもポテンシャルには何ら問題はない。我々も連合本部から通達されている恒星系航路調査に協力する必要があるので、この場で任務を遂行させてもらっている。問題はあるか?』

『あ、いやいやいや、別にかまわないよ。どうぞ好きにやってくれ……って、あの規模の機動艦艇を有人操艦並みに遠隔操作するって……噂には聞いてたけど、すごいな、アンタら』

『その言葉、評価と受け取る。感謝する』


 と、まあ言ってみりゃネメアとシビア二人で艦長やってるようなヤシャ級であって、そこはログマ艦長とも話が合ったりするわけで、ここでも奇妙な意気投合が見られたりする。

 

『艦長、目標のフィルタ・フィラが肉眼で確認できる距離になりました』


 ログマ艦長は、淡白なシビアとの会話を楽しんでいたが、観測兵のその言葉で話を中断し、仕事モードになる。


『センサー類の感度は問題ないか?』

『特に問題ありませんが、空間成分の関係でしょうか、空間振動波のエコーの返りが我々の空間より若干遅いみたいです。ただ、探知する分には問題ありません』

『わかった。で、例の無人アウルド型が発見した例の物体は……』


 どうなっている? と言おうとした刹那、シビアが、


『ログマ生体。そのアンノウンを合議体が感知した』


 ティ連のセンサーを凌ぐ速さに少々驚き表情のログマ。

 これはやはり艦と一体化しているシビア達合議体の強みだ。なんせ処理が早い。

 情報を共有すると、VMCモニターにその位置を点滅させる。


『ログマ生体、まだ距離があるようだ』

『そうだな……物体に何らかの反応はあるか?』

『いえ、熱源、電磁波、空間波動等、まったく反応がありません』

『即ち、ハルマ(地球)の“おかると”とかいうフィクションでいうところの「ユウレイセン」という奴か』

『その概念は、ゼスタールにも存在するので理解した。まさしくそれだろう』


 そんな話をしていると、高速で移動する両艦はあっという間にそのアンノウンをはっきりと視界に捉える。

 と同時に、月丘とプリル、ベリロス副長がブリッジに上がってきた。


「おつかれさまです、艦長」

『おう、ケラー・ツキオカにプリル中尉。副長も合同調査体制の手続きご苦労だったな』

『は、滞りなく……でこれが例の物体ですか艦長、かなり大きいですね。戦略艦レグザグード級ぐらいはありますか』


 ベリロスも軽くログマに敬礼すると、副長席に座って、VMCの、その物体を仰ぎ見る。


「戦略艦? なにそれプリちゃん」

 

 聞き慣れない艦種に解説をプリルに求める月丘。


『えっと、大型戦艦よりもさらに大きな戦闘艦で、主に戦略兵器をゴマンと満載している戦闘艦だよ。まー、この艦が戦場に出てきたら、もう殲滅戦するしかなくなるんで、最近はあまりみないお船だけど』


 ベリロスもプリルの話を聞いて補足説明で、


『大きさとしテは、大体ヤルバーンのような都市型探査艦が、嵩高になったような航宙艦だな。君たちの単位で言えば、高さも“きろめーとる”クラスの船だと思えばいい』

「なるほど……」


 月丘はもう十分近づいて、ズームでもはっきり見える、恐らく稼働状況にはないそのアンノウンをじっと見つめて、顎に手を当てている。


『なにか気になるところでもあるのか? ケラー』


 とログマが月丘に問うと、


「あいえ……みなさんはあの物体は何に見えます?」

『ん? んん……何かと問われても、まあああいう形の宇宙戦闘艦というぐらいだが……ケラーは何か思うところがあるのか?』

「私には、なんといいますか……三角形のヤルバーン母艦みたいな台座に乗った、ものすごく大きな地球の『城』に見えるんですよ」

『ほう、城な。ふむ、城塞か……地球の城塞のことはよくわからないが……』


 するとシビアが、


『ツキオカ生体の感覚を肯定する。確かに惑星チキュウに存在する、エウロパ地方にある城塞建築物の様式に似たところはある』


 シビアも総諜対の任務で、地球世界各地を飛び回っていた御仁だ。空いた時間にはちょっとした観光みたいなこともしていたそうだから、そんな名所旧跡も記憶にあったのだろう。するとベリロスが、


『なるほど、面白い感覚だな……艦長、こんなところで遠巻きに見てても始まりませんし、とっとと調査部隊送り込みましょうよ』

『それしかないか……どうするね、ケラー。階級は俺のほうが上だけど、この調査部隊の代表は政府のお役人でもあるケラーだ。乗り込むかい?』

「そうですね、どう見ても惑星エルミナスに関連する謎物体であるのはもう丸わかりのモノですし、乗り込みますか」

『そうこなくちゃな。ということで艦長、私も彼らの調査活動に同行します』

『なんだ副長、君が遊びに行きたいだけじゃないのか?』

『いえいえ、滅相もない。ケラー・ツキオカのチームに万が一のことがあったらいけませんからな。本艦の空間歩兵部隊の責任者は一応私なので』

『わかったわかった、行って来い』


『ハ』と敬礼し、ニっと月丘の方を見るベリロス。一応フェルさんの親戚。

 ということで、人型戦艦コウズシマの空間歩兵部隊も使えることになったので、これでガトラン上級曹長の精鋭小隊と合わせれば、結構な数の実力部隊構成となる。

 これだけの人員があれば、あのアンノウンの中に乗り込んでも十分対応できるだろう。

『では、あの物体の呼称はどうしようか』とログマ艦長が言うと、月丘が“城塞に見える”というところで、『キャッスル・アンノウン』と当面は呼称することになった。


    *    *


『現在キャッスル・アンノウンからベルク警戒距離に接近。熱源なし。対象からの反応はありません』

『完全にパワーは落ちてるのか?』

『いえ、接近してわかりましたが、微細ながら電磁波などの反応が散見できますので、確実なところはわかりません。この反応をどう見るかですが……』


 センサー観測員と、ログマ艦長のやりとり。どうやら観測データ的に全くの幽霊船というわけでもなさそうである。


『最接近したはいいが、途端に迎撃システムが復活しましタというのは御免被りたいからな。少々荒っぽいが、威力偵察も兼ねてみようか……右舷上部主砲発射用意。発動せよ』


 コウズシマの右部フレキシブルアーム上面に搭載された大型主砲がクンと動き、その中の一門の砲身のみが、キャッスル・アンノウンに照準を定める。


『てっ!』


 かつての大戦中に活躍した、旧帝国海軍戦艦大和に匹敵する大きさの三連装主砲。その砲身一門から重粒子砲弾特有の空間波紋を発して、目標に光弾が吸い込まれていく。

 刹那、光弾は目標の外装を貫通し、内部にめり込んで爆発した。

 炎と煙が一瞬上がり、外壁が大きく吹き飛ばされる。つまり内部には多少なりとも空気のような酸化成分を有した物質があるということだ。

 

『対象反応なし。迎撃行動のような兆候も見られません』

『着弾点はどうだ?』

『副次的な爆発反応効果で、上陸用トランスポーターが出入りできそうなほどの大穴が空きましたね』

『ふむ……他に出入り口は?』

『詳細な外周偵察を行っていませんので、不明な点は多々あります』

『なるほど。では、無人のヴァズラー・アウルドは接近させて引き続き詳細な“きゃっする”のデータをとらせろ……格納庫、ケラー・ツキオカ、状況は把握しているか?』


 格納庫の月丘。勿論今の砲撃もVMCモニターで確認済みだ。


『はい、把握していますログマ艦長』

『で、ソウチョウタイの調査チームとしてはどう行動判断するかね?』

『せっかく空けていただいた入口ですから、そこからお邪魔しましょう」

『了解だ。では準備にかかってくれ。接近する』


 コウズシマはヤシャ級と共にキャッスル・アンノウンへ接近する。

 コウズシマ後部の機動兵器発艦甲板では、上陸用のトラスポーターに各種人員に兵装が搭載されて待機していた。

 キャッスルに向かう人員は……

 調査隊の代表として、総諜対の月丘に、プリル。で、雇われ人員のクロードとイツツジ・ハンティングドック(IHD)のメンバーに……


「え? 麗子専務、じゃなかった、社長も行くんですかぁ?」

「アタリマエでございましょ月丘さん、社の代表として当然のことじゃありませんか」

「いや、当然って……普通社長が危険な現場に率先して行きますかね、って、あそうか……」

 そうかそうだった、んー……と悩む月丘。いかんせん麗子はただの大企業のお嬢様ではないし、年齢もまあ指摘すれば殺されるが三十路過ぎだ。で、これで実戦経験は、地球のガーグ組織壊滅に、白木と若いころ共同でやってた政情不安定な東南アジアでの活躍もある。で、先のシビアさんをとっ捕まえる経緯となった国連での機転の利く行動も流石である。


「わかりましたけど……クロード、しっかりお守りしてくださいよぉ?」


 わかったわかったと手をヒラヒラ振るクロード。麗子社長のこの手の行動は今に始まったことではないので、もう慣れたもんだ。


 その他のメンバーは……

 シビア、ネメアのスール・ゼスタールコンビ。この二人がいれば、何が出てきても一〇〇人力で、鬼に金棒である。

 タリア博士も現場にいきたいと仰るのでついて来ることに。

 護衛役のガトラン上級曹長と、特別編成小隊はデフォルトである。

 そして、ベリロス副長指揮下の空間歩兵部隊も、万が一への対応ということで、ガトラン達と共に、護衛任務も含めた実力行使部隊として参加してくれる。この歩兵部隊が実のところ結構な規模で、中型機動兵器、つまり特危用語で言うところの19式機甲騎兵、即ちコマンドトルーパーも擁している。

 プリルは、所有するコマンドトルーパーの『むせる型』兵器でプリルが改造した『コマンドカーニス』も、蒼星プリルカスタムと共に持ち込んでいるので、結構な中規模機動部隊の様相でこのキャッスル・アンノウンに乗り込む事ができる。


 コウズシマは、日本製の小さな索敵用ドローンを飛ばして、コウズシマの開けた砲撃跡の大穴からそれを侵入させる。

 ライトを照らして、周囲を見回すドローン。

 ドローンの送ってくるリアルタイムの映像は、即座に月丘達を驚かせるものであった。


「これは……宮殿? ですか?」


 月丘はこのアンノウンを城砦と表現したが、まず目に飛び込んできたのは、無機的な鉄臭い構造と同居する、見事な壁面彫刻に、パターン化されたデザイン模様であった。


『ふーむ、のっけからこんな映像を目にするとは。これは早く行った方がいいですナ、ケラー』


 と、チーフ・ガトラン。


『この場所のこのあたりに……トランスポーターを停められますねっ。行きましょうカズキサン!』


 プリルもノリノリである。


「わかりました。では全部隊各々発進してください!」


 月丘も久しぶりに装着するカラフルな丸窓キャノピーのメタリックスーツで、キックのパワーがやたら強い専用コマンドローダーを仮装造成して着込み、専用のサイドカー型トランスポーターに跨って出発する……本音を言うと、実際問題この格好は恥ずかしい事この上ないコスプレみたいなコマンドローダーなのだが、いかんせん強力なコマンドローダーで、使い勝手もいいわけで文句は言えない。ちなみに造ったのはヤル研。


 さて、サイドカー型トランスポーターは、全車輪部が水平状に変形し、斥力波を発してフワリと浮き、宇宙空間へ飛んでいく。なんか月丘一人だけ、妙に浮いている構図。彼だけ世界観が違うだろうと。

 プリルは『コマンドカーニス』のバックパックに斥力波を伴って出発する。

 その他のメンバーは、上陸用舟艇ならぬ、機動兵員輸送トランスポーターで乗り込み、空間歩兵部隊の19式コマンドトルーパーも数機護衛につく。

 M型にH型のコマンドローダー(パワードスーツ)はトランスポーターに積むには少々大柄なので、このタイプの機種も自力で宇宙を飛んで、目的地に向かう。

 時間にすれば数分後には、キャッスル・アンノウンに開けた大穴砲撃跡から内部に進入し、目的の開けた場所に全機駐機した。


「カズキ……やっぱそのローダーは何回見てもファンキーだな」

『う、うるさいですよっクロード! こっちだって好きでこれ使ってるわけじゃないんですからね』


 確かにカズキの装着する、あの銀ピカローダーから進化したメタリックカラーな円形バイザーのコレは、使い勝手はメチャクチャいいのだが、色々場違いである。以前、グロウム帝国で使用したときも、彼の国でも同じような子供向け番組があるらしく、子供達からサインをねだられた。


「まぁその姿に見合った活躍をしていただければよいのではございませんこと? オホホホ」


 と、麗子もなんか特注っぽいコマンドローダーL型を着込んで登場。全体にピンク色である。なんか肩にブランドもののマークが輝いてたり、薔薇の花が描かれてたり。

 流石お金持ちである……


『みんな揃ったみたいだ。空間歩兵はいつでも動けるぞ。これからどうするケラー』

『まずは内部構造の把握がセオリーですな、少佐殿』


 ベリロス副長や、ガトラン上級曹長も報告。この混成部隊の隊長は一応月丘である。


「あ、いや、まとりあえずここにベースキャンプを構築しましょう。相当広い構造物のようですのでね」


 かのグロウム帝国戦で、敵ヂラールコロニーをまるごと鹵獲した時の作戦が無難だろうと考える月丘。


『長期戦か、了解した……おーい!……』と部隊に拠点構築を命令するベリロスにガトラン。


『ヨッコラショっと……カズキサン、これからどうしよ?』


 プリルも、この大穴着弾跡の入り口周辺の宇宙空間を偵察して戻ってきたようだ。


「ああ、プリちゃん。えっとプリちゃんもコマンドカーニス使って、副長やチーフのベースキャンプ設営手伝ってくれるかな? クロードに社長もお願いします」


 了解ということで、諸氏ベースキャンプの設営に入る。


 すると何やら四足の猛獣の如き動物に似た物体が二匹、月丘の目前に姿を現す。


「うわっ!」と思わず、この構造物のトラップかと思う月丘。エマージェンシーコールをかけようかと思った刹那、その動物状の物体は即座にモーフィング変形して、シビアにネメア姐になる。

 アンタらは、コンピューターに囲まれた下僕かと思う月丘。ちょっと古いが、なぜかそんなネタを知ってる彼。


「あーもう……びっくりさせないでくださいよ!」

『ん? 我々シビアとネメアで内部周辺の索敵を行っていた。この形態であれば、効率的に作業をこなすことができる。なにか問題があるか?』

「あ、いや、まぁ……」


 せめて一言いってくれよと思う月丘。でもまぁこういうところは言われなくても即座にやってくれるのは流石と思う。


「まあいいや、で、どうでした?」

『この周囲二〇〇めーとるの構造範囲内では、敵対オブジェクトに類する、特に警戒を要するような事象はないようだ』


 とシビア。ネメアも横で頷いている。


「そうですか、分かりました……」


 そう言って彼女らの報告を聞くと、月丘は振り返って周囲を見回す……


「ここは一体どういうところなのかな?」


 とりあえずコウズシマの主砲で大穴ぶち開けてそこに突っ込んできたのはいいが、この場所、というか区画がどういうところが全くわからない状態。

 というか、主砲の威力が強すぎて、あたり一面の構造物を吹き飛ばしてしまったものだから、そりゃわからなくて当然である。


「うーんっと……ああ、あれだ……」


 先にドローンで確認した謎の構造物を見つけた月丘。バックパックの斥力システムを稼働させて浮遊する。ネメアとシビアも彼に続く。


「これですよね……どう思います、お二方」


 それは日本風に表現すれば、鋼材でできた大きな『はり』のような構造物に描かれた、彫刻のようなものであった。

 見たこともない動物のようなものがたくさん描かれ、植物や景色のようなものも描かれている。

 恐らくこの区画自体、吹き飛ばされる前は、重要な何かが設置されていたような区画ではなかったのだろう。特に危険な残留成分も検出されていないし、武器兵器のたぐいと思わしき残骸も発見されていない。ただ、この彫刻を置くには少々鋼鉄の匂いがする殺風景な場所ではあった。


『この空間に、このような芸術性のあるオブジェクトを配置する意味を見いだせない』とネメア。

『ただ、ネメアの言う芸術性というには、その質はあまり高くないと思うが』とシビア


 なるほどねと思う月丘。確かにこの彫刻は、言ってみればどこかの廃工場跡の鉄骨に彫られたようなものと同類の感じだからだ。

 すると、ベースキャンプを設営している方向から、『あーーー~~!!』という声が聞こえてくる。プリルの声だ。

 というか、全員コマンドローダーや、宇宙服着てるのに、なぜにそんな声が伝わるのは、ティ連の同時無線システムが、周囲に大気があるようにエミュレーションして、全員に双方向送受信させているからである。


「どうしたんです? プリちゃん」

『カズキサン! コッチ来て来て!』

「はぁ……わかりました」


 月丘にシビア、ネメアはスィーっと空中を移動してプリルに近づくと、

 どうやらプリルもその彫刻を近くで見ていたようだ。決してベースキャンプ設営をサボっていたわけではない。


『これみてこれ!』

「はぁ、どれどれ……」と、怪訝な顔をしてプリルの側へ行き、彼女が人差し指を尖らせて指摘する場所を見る。すると、「……って! コレはっ!」


 一目瞭然というか、そのものズバリというか、この『キャッスル・アンノウン』が元々どこのどなた様の所有物かという事がはっきりわかるものだった。

 プリルが指差す箇所には、なんと、腕が六本生えた人間型の生物が、何やら光が差す物体の方向に祈りを捧げているような、そんなものが鋼鉄製の梁のような物体に彫り込まれていた。


「ペルロード人……か?」

『ですよね、これって……』


 とフォトに収める月丘。


「ふーむ、となるとこの建物のこの彫刻のようなものを片っ端から映像記録で収めて、マルセア議長にお見せする必要がありますね」


 と月丘が腕を組みながら、ゆっくりと地面へ着地すると、


『ツキオカ生体、その意見に賛同するが、問題なのはその本人もトーラルシステムとしての能力を幾分制限されているところがある』


 とシビア先生。ネメアもシビアの意見に同意して、


『シビアに肯定する。この施設に類するデータをマルセア・カルバレータのメモリーバンクから出力できれば良いが』

「まあそこはとりあえずここのデータを送ってみて、どういう反応が返ってくるか次第でしょう。それはそれとして考えましょう。今はとにかくこのでっかい施設を探索して、ヂラールのデータを集めることが優先です」


 ということで、現状の任務から手の空いたものがこの区画に存在する金属の梁のようなものや柱に壁といった箇所に彫り込まれている彫刻状のものの写真資料を集めるように指示した。


 するとクロードに麗子がやってくる。


「地球との連絡設備の設置は完了しましたわよ、月丘さん」

「ご苦労様です麗子社長」

「でカズキ、なんか面白そうなもの見つけたんだって?」

「ええ、実はプリちゃんのお手柄なんですけど……」


 と、先のペルロード人の姿を模ったような彫り物の話を麗子とクロードにする月丘。


「お、すごいな! なるほどな。んじゃもうほぼ確定じゃないか」

「ですわね、そんな六本もお手手を持った種族さんなんて、そうそうこの世にはいらっしゃらないでしょう。それにヂラール関連のお話でございましょ?」

「そうだろうと私も思うのですけど、一応確認は取っておかないと、というヤツでしてね。でもなぜにこんな物騒な鉄の塊の、恐らく軍事兵器か何かではないのかと思いますが、このキャッスルにここまでの彫刻が彫られまくっているのか……」


 と月丘が疑問を呈すると、そこは立派に学識もある麗子が、


「ペルロード人さんがどうな方々なのかはわかりませんが、マルセアさんという方のお話を参考にすると、ペルロードのお国は宗教国家なのでございましょ? とすれば恐らく宗教的な教義文化様式か、もしくは共産主義のようなプロパガンダか、そんなところじゃございませんこと?」


 その麗子の言葉で月丘も「ああそうか」と手を叩く。プリ子も同じくで、


『流石はケラーですね。そっか、確かファーダ・マルセアは、ペルロードの国って、厳格なシュウキョー国家って言ってましたっけ』

「ですわね、プリ子さん」とプリルの意見を肯定すると、クロードも、


「厳格な宗教国家、まあ地球世界じゃイスラム諸国が良い見本になるが、イデオロギーと宗教が一緒くたになってるところがほとんどだからな。教義とプロパガンダという話で言えば、そのどちらも、という意味もあるかもよ」

『クロード生体の意見を肯定する。我々ゼスタールのかつての社会も、地方によっては我々が信仰していた宗教を母体とする自治国家もあった。理解できる話である』


 とシビア。ネメアも頷いている。


 と、そんな話をしていると、ベリロス副長とガトラン上級曹長もやってきて、


『話は聞かせてもらってたよ。となると惑星エルミナスとの関係もさることながら、ペルロードさんがなぜにこんなところくんだりまでやってきて、こんな不気味な幽霊船を残していったのかとか、早速全方位で調査せにゃならんよな、ケラー・ツキオカ』

「ですね副長」

『ふむ、話に聞くペルロードとヂラールの関連性を考えると、不用意に廃船となっているこの構造物の様相とはいえ、武器装備も完全にして調査せねばならんでしょうな』

「やはり危険を感じますか? チーフ」

『は、ここまで大きな未知の構造物を相手にするわけですから、こういう状況では何が出てきても不思議ではないと考えないといけません』

「ま、確かにそうですね」


 と、ガトランに言われるまでもなく、彼もかつてはプロのPMCである。クロードもニヤついて頷いている。ま確かにそうだろうと思うが、こういうシチュエーションは地球の娯楽映画作品でも結構あったわけだが、それらを参考に考えると、大抵ロクなものがないという話で、少々不安になったりもするわけである。

 しかもそんな状況で、月丘だけ、この間テレビで暇つぶしに見た仮面のバイク乗りみたいなコマンドローダー着込んで任務するってんだから、自分に一体何をさせたいんだと、少々憂鬱になったりもする月丘であった。


    *    *


 作戦開始。

 ベリロス副長の連れてきた空間歩兵数小隊と、ガトラン上級曹長達特務編成小隊、そして月丘、プリル、クロード、麗子、シビア、ネメア、タリア達の、所謂『総諜対小隊』が手分けしてこの巨大なキャッスルを、可能な限りくまなく調査する作戦である。

 ベースキャンプで各部隊の連携とステータスのモニターは、ベリロス副長と空間歩兵のモニター部隊が担当する。なんだかんだで結構大規模な作戦となった。

 装備としては……まあ空間歩兵や、チーフ・ガトランのところはティ連や特危でも使っている標準装備のデルゲードタイプのパワードスーツや、コマンドローダーL・M・H型で、直協の大型装備として機甲騎兵、即ちコマンドトルーパーが随伴している。つまりこのキャッスルは、コマンドトルーパーが随伴できるほど広い場所や、通路が多いということなのである。


 で、月丘達の総諜対チームが……まぁこれイロモノの集団というか、ナンデモアリというか、コス○レというか……まともな格好してるのはクロード達IHDの特危標準装備のL型コマンドローダーぐらいなもので、月丘は、あの例の妙にスタイリッシュなL型スーツに、H型へ機種変合体できるサイドカーに乗っている。

 麗子もスタイリッシュにスマートさで決めるかと思いきや、麗子特注のブランド物L型ローダーから変更して、イツツジグループの重工業部門が試作した、これまた麗子専用コマンドローダー『M型』をガッチリ着込んでご登場。真っ赤な薔薇のマークがあしらわれたワインレッドボディに最新鋭装備が施されているお金持ちローダーであった……多分、あのりんくうヤクザ事件並のトンデモ装備が施されているのは間違いない……まぁこれも理由があっての話で、麗子もそれなりに鍛えてはいるけど、この中ではなんだかんだで民間人なので、このM型で後方支援という意図があるのだそうな。

 プリ子は、毎度のコマンドカーニス号。通称『むせる型』のコマンドトルーパーに乗っている。タリアはイゼイラ軍の標準装備である、日本人にももうお馴染みのデルゲート型パワードスーツ。コマンドローダーの規格で言えば、これもL型にM型相当のタイプがあるが、タリアの装着しているものはL型に相当する。

 最後に、シビアにネメアは……流石スール・ゼスタールといったところで、何もそういった機動装備を装着していない。シビアにいたっては、いつもの白いゼスタールスーツで、ネメアは色っぽいハイレグのビキニアーマーな戦闘服だ。

  まぁ彼女らはこれが普通で、この状態から獣のような姿に変化したり、ゼル端子発射しまくったり、兵器と同化したりと一〇〇人力の技を見せてくれるワケなので、一番頼もしかったりする。


 ……ということで、月丘達は外から見て目星をつけていた、キャッスルの城塞部中央の塔へ向かって進んでいく。

 その間、気になった場所は調査しつつ進んでいくわけだが、コマンドトルーパーが利用できる大きな通路が普通に縦横無尽に、まるで都市の区画のように絡み合った複雑な地形に、必ず先のベースキャンプの場所にもあったような、恐らく宗教彫刻であろうオブジェクトが、壁や柱に施されているような、ここがそんな建築様式が普通の構造物だとわかってきた。


 タリアは月丘のサイドカーの側車部に乗り、麗子は浮遊推進で半飛行移動、クロードと、シビアにネメアは、プリルのコマンドカーニスの腕や頭部に跨乗して、戦闘態勢で移動中。

 IHDの他のチームも浮遊モードで移動中である。


「よし、ここが弱い電磁波反応のあった場所の一つですね、少し調査していきましょう」


 月丘が停車を命じると、


「クロードとシビアさんにネメアさんは私と共に先行します。麗子社長と、タリア博士、は少し離れてついてきてください。プリちゃんとIHDチームはこの場で警戒態勢」


 皆が了解と月丘の指示で動く。

 プリルが三〇ミリチェーンガンをマニュピレータで抱えて、周囲を警戒してその場を守る。IHDチームは少しバラけて周囲を警戒。

 月丘達は機動小銃を構えて先頭を進む。

 手合図で左や右を指すと、シビアにネメアがドアを開けて、掌のブラスターを発射する体勢をとるが、特に何もない。ガランとしたものだ。恐らく倉庫か物置か、そんなところだろう。

 クロードが先行して左右に分かれる通路を警戒する…………特に何もないようなので、皆に前進を促す。クロードも現役のPMCだ。久々に月丘と組んでのミッションが楽しかったりする。


「……さて、第一の調査対象はこのあたりですね」と月丘。

「絵で描いたみたいな怪しい大扉ってか」とクロード。

「まあ大体順当無難なところですわね」と麗子。


 しばし予定のコースを進行していると、区画を仕切る大扉のようなものにぶち当たる。

 周囲を調べるが、扉を制御する装置のような物は見当たらない。まさかここまでのものを作る連中のこういった装備が、『ギィ〜〜』とかいう音あげて開くような扉でもないだろうとは思うが、とにかく仕掛を探さないことには前に進めない。


『お前たち、後ろに下がっていろ』


 と前に出たのはシビアにネメア。何かしてくれるみたいだが、不意なトラップなどが出てきたりしたらまずいので、下がっていろと。つまりスールな彼女達なら死ぬような罠が出てきても問題ないと気遣ってくれてるという次第。

 二人は大扉周囲を観察すると、何かを察したようで、互いに頷くと……ゼル端子を放つ。

 小さな虫のようなそれは、扉の隙間に入っていく。

 目を閉じて何かを感じ取っている二人。

 しばし待つと、ゴウンと音がして大扉が左右にスライドし、開き始めた。


「お! すごいですねお二人さん。どうやったのですか?」


 思わず手をポンと叩く月丘。最悪プリルのコマンドカーニスのミサイルでぶち開けなければとも思ってたところだった。


『この扉は、何かに反応して自動開閉する仕組みだ。扉自体にセンサーが組み込まれている。それをゼル端子で乗っ取った』


 と、淡々と話すシビア。全くこういうところは相変わらずすごいなと思う。


 かなり大きな扉でもあるので、開き切るまでしばしの時間を要したが、間も無く入れるほどに空いたので中に進入する一行。すると……


「これはまた……」


 と、口をあんぐり開ける月丘。他の皆さんも同様である。おすまし顔はゼスさんの二人だけ。

 月丘達の前に見えたのは、かなり大きな都市型の空間であった。しかも相当に様式美化された空間である。

 だが、その光景は美しいものとは言い難かった。つまり、壊滅的ではないが、破壊の痕跡が各所に見られるからである。

 月丘は外部カメラをズームにしてこの風景を眺める。


(……うーん、経年劣化による崩壊か、長年放置された事故による破壊か、なんらかの戦闘による破壊か……今のところはなんともいえないな……)


 とそんなことを考えながら周囲を観察していると、クロードが、


「建物のデザインなんかはぜんぜん違うが、なんとなくヨーロッパ的だよな」


 と話す。これには麗子も同意のようで、


「そうですわね、恐らくここは居住空間だったのでしょうけど、建物の佇まいなどは、ヨーロッパ的な理路整然とした趣を感じますわ」


 と話す。確かに言われてみればそんな感じで、地球以外の文明で言えば、月丘が長年滞在していたディスカールもこんな感じであり、こういった景観の感覚は、知的生命体のある種の文化的共通点があれば、似てくるものなのかとも思う。


『ツキオカ生体』

「あはい、なんでしょ、ネメアさん」

『これだけの空間なら、機甲騎兵の運用も可能だ。プリ子生体達の警備態勢を解除して、彼女と他の要員を呼び寄せても問題ないのではないか?』

「確かにそうですね……プリちゃん?」

『はいはい、聞いてましたよ。了解ですっ、移動しますねっ』


 しばし後、プリルのコマンドカーニス号にIHDスタッフと合流。この空間は麗子の言う通り、恐らく居住空間なのだろうと思うので、車両系の通行も考慮していたのだろうか、通路もかなり大きく取られており、機甲騎兵の運用も容易に可能であった。


「……にしてはアレだなカズキ、幽霊船の話じゃないが、生命体のいた痕跡がねーな」


 とクロード。ちょっと危機感が薄れてきたのか、機動小銃を肩に担いでいる。


「そうですね……まあ考えられるのは、この船の種族、あの彫刻の意味を考えるなら、恐らくペルロード人なのでしょうが、彼らは何らかのトラブルでこの艦を放棄した……と考えるのがまず基本なのでしょうが……プリちゃんはどう思います?」

『うーん、ちょっとサーチしましたけど、時空間年代測定では、この船は三〇〇年前ぐらいにはここにいたみたいですね。で、この状況を見る限り、この船に事故か何かあって、このお船を放棄して乗り組んでた人が全員いなくなってるっていうのも、まあ不思議ではないですよ。そこで死んだ遺体なんかも私達ティ連の科学基準で言えば、転送回収もできますしね』


 そんな話をしながら目星をつけた家屋建物を調査しながら目的地の中央にある塔のような建物を目指して進んでいく。

 その間、道中の建物の中を拝見すると、生活感のある家屋ももあれば、商店のような家屋もある。

 使い方のよくわからない機械機器にベンダーマシンのようなもの。

 ティ連と同じトーラル機器を使う文明ゆえか、ハイクァーンマシンのようなものも、各建物内に配置されていた。

 

 しばしそんな調子で、何処かの廃墟街と化した温泉街ではないが、そんな雰囲気の市街区画を調査する。

 プリルに至っては、もうめんどくさいのか、コマンドカーニスの全高ぐらいの高さの建築物なら、屋根をぶっ壊して上から覗いてる始末。まあ文化財というわけでもないのでかまわないのだが、


『どーせこのままこのお船をほったらかしてても、あのフィルタ・フィラの引力圏に囚われて、いつかは惑星に落ちて崩壊するだけですし、このぐらいかまいやしませんよっ』


 まぁこんなものを曳航して持って帰るわけにもいかないので確かにプリ子の言うとおりかもしれないと、遠慮しがちの調査方法も、プリルの一言で、少々大胆になっていく諸氏であった。


 で、特に大きな発見もないまま、中央塔への入り口と見られる大型エレベーターの前にやってくる。

 当然パワーも入っていない縦に貫く空間であるからして、


「ここは飛行モードで上に登るしかないですね」


 と、エレベーター塔内に入ろうと準備をしてたところ、月丘のPVMCGに通信が入る。


『ケラー・ツキオカ、ガトランです』


    *    *


 キャッスル・アンノウンの別地区を調査探索中のガッソー・ガトラン上級曹長率いる特務小隊。彼らが何かを発見したという。


「どうしました? チーフ」


 ガトランのPVMCGに映るは月丘の仮面ヒーロー顔。

 

『は、今、自分達は何かのプラントのような場所に来たようなのでありますが……』


 とガトランは周囲の風景をカメラで見回すように映すと、そのまま何らかの物体のようなもの映像を焦点を合わせる。


『……これを見てください』と、その物体にズームをかけると、


「これは……え?」

『はい、端的な言い方をすれば、“遺骸”ですな』


 と、かなり白骨化、というよりもミイラ化してさらに劣化が進んだような遺骸の映像を月丘に見せる。


「おお、チーフ、早速の大発見じゃないですか! 人のいた痕跡ですね!」


 そのVMC映像を覗き込むシビアにネメア、クロードとタリア。するとタリアが、


『ふーム、ぱっと見た感じでは、その遺骸ですけどペルロード某ではないみたいね、曹長?』

『は、自分もそう考えます。博士からいただいた資料と併せますと、後頭部の形状と空間活動服の技術水準からみて、恐らくエルミナス人かと考えますな』


 確かに、その遺骸の着用する空間活動服。所謂我々の感覚で言う宇宙服の類の技術水準が、ヤルバーンが飛来する以前の地球技術よりも遥かに上だが、現在のティ連技術を使用する宇宙服にくらべると、かなりゴツ目の服装である。喩えるなら、某白チート機動兵器作品の『標準スーツ』というヤツに似ているか……ティ連の宇宙服は、パーソナルシールドと併用して着用し、可動繊維でできているので、もうそれこそ普通の作業着に近いぐらい軽快である。


『ただ……』

『どうしました? チーフ』

『は、これなんですが……』と、その遺骸が片足のない遺骸である点を説明すると、こんなのがもう六~七体、実はあるという話で、『……周りの状況をと併せて考察しますに、なにかから逃げていた、もしくは戦っていたか、そんな感じに見受けられますな』


 と話す。

 すると、『上級曹長殿! こちらへきてください!』と慌てたような声でガトランの部下が、彼を呼ぶ。


    *    *


 月丘達は、ガトランの外部モニターカメラが、彼の視界で部下の呼ぶ方向へ、FPSゲームのように一人称で追いかける映像を見ていた。ほどなく彼の部下のイゼイラ人の顔がVMCモニターの枠内に入ると、『あれを!』と指差す。

 カメラがその指差す方向へパンをすると、


『これは!』


 ガトランの驚く様がわかる映像のブレ。少し引いている感じがみえた。

 そして月丘達も『えっ!?』と思わずもらすガトランカメラの映像、


 

 それは、ヂラール『リバイタ型』の大きな大きな遺骸の映像であった…







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― 新着の感想 ―
[一言]  こちらの副長さんはそんな感じで、なんと階位は低かったそうだが、一応旧貴族 の出身で、みんなが少々驚いていたり。 改行でおかしな事になってます
[一言] 環境フィールドが当たり前なので、気密が破れて大変なことになるという意識がないのですね。最初にヤルバーンが来た時もそうでしたね。
[一言] エイリアンかプロメテウスな事なったりしない心配?
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