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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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20.アズーラ中尉と



 報告書に仕立てること自体はアズーラ中尉がしてくれると言うので、キアラは口頭で簡単に報告をした。

 部下に報告、というのもおかしな話だが。


 執務室のキアラにとっては大きすぎるデスクで、向かいに立った部下が口述筆記をしてくれるのが、なんだか居心地悪い感じがする。


 しかも、言えることと言えないことがあるのでいちいち気を使って話すのも疲れるが、仕方がない。


「では、以上の内容で報告書を回しておきます。

 ……余計なお世話かもしれませんが、座学その他、授業面でのサポートは必要ですか?」


「えっ、してくれるんですか!?」


 今一番大きな困り事だけに、キアラは全力で食いついた。

 錬金塔に帰ってから、師匠の本棚を漁ろうかと思っていたのだが、本を読むだけでは理解出来ないこともある。

 実習も含めて教えてくれるというのなら、本当にありがたい。


「はい。レンツァー師は非常にお強いですが、座学はまた別ですから」


「……ぃゃ、ぁの……実習も、教えて欲しいです」


 長々と報告案件を話したので、アズーラ中尉に向かって話すことに少しだけ慣れたキアラは、勇気を出して自分からお願いしてみた。


「実習、ですか? よろしいですが、自分が教えられるような事があるでしょうか」


 自信なさげなアズーラ中尉だが、


「……詠唱、ってどうやるんでしょうか?」


「……はぃいっ?」


 初歩の初歩すぎるキアラの純粋な質問に、思わず顔を顰めてしまうのだった。



「……なるほど。レンツァー師は天才すぎますから、そんなことになっていたとは……」


 キアラが魔境任務に行く時には、魔法を使う自分の周りに人が居るのが怖いので、ひとりきりで行くようにしていた。

 なので、キアラの魔法がおかしいことに誰も気づかないまま、ここまで来てしまったのだ。


「しかし、学園への潜入となると詠唱は必須ですし、王国内での魔法行使に慣れる必要もあるでしょう。

 それをせずに学園へ行かせた上へ文句のひとつも言いたいくらいですが、とにかく練習をしましょうか」


「……す、すみません……」


 アズーラ中尉の手を煩わせて申し訳ないと思うが、キアラにとってひとりではどうしようも無い問題なので教えてくれるのなら頼りたかった。



 しかも、アズーラ中尉は穏やかな性格でしかも有能なので、個人レッスンの先生としてはこれ以上ない相手だ。


 詠唱の意味や理論を基礎から教えてくれて、実際にやって見せてくれる。


「……わぁっ」


 キアラがその通りにやってみると、威力はとんでもなく大きくなったので驚いた。


「……授業でやってみなくて、よかったぁ」


「そうですね、この威力では大騒ぎどころではなかったと思いますよ」


 最初、アズーラ中尉はキアラを魔法兵団の上官として扱っていたが、キアラがあまりに居心地悪そうなので砕けた雰囲気に変えていた。

 こうしてその場に応じた適切な関係を築けるのもアズーラ中尉がキアラの副官に選ばれた理由だ。


「これなら、師匠の言う『魔境より3倍大きい魔法』になるんですね」


 魔境でしか魔法を使った事のないキアラも、自分の魔法の大きさに感動している。

 しかも、キアラの方が上官のはずなのに、気分は生徒なので敬語だ。


「詠唱って、すごいですね。魔境と違って、学園で魔法を使うとぼわっとしててうまくいかないんですけど、詠唱するとちゃんと綺麗になってくれます。

 魔力の動きとか、吸われる感覚が魔境と同じ感じになるから上手に動かせるんですね」


 詠唱の効果に感動し、納得しているキアラの横で、同意する振りをしているアズーラ中尉は心底驚いていた。


 普通、王国内だろうが魔境だろうが、魔法を行使するには詠唱が必要だ。

 一番最初、やってみてくださいと言った時に「えいっ」の一言で魔法行使された時の衝撃は、一生忘れないだろう。


 上手に動かせる、なんてものではない。

 詠唱が無ければ行使出来ない、それは常識だ。

 例え短縮は出来ても、完全な破棄は出来ない。

 詠唱破棄は、他の何かにトリガーを埋め込んだり、魔法陣の複合使用をしたりして実現するものであって、本当にゼロにすることは理論上不可能なはず。


 なのに、キアラはそれすらやってのけた。

 それに感服しきるほか無かった。



 そもそも、アズーラ中尉はキアラ・レンツァー魔導師付きの副官になったことを、ほんの少し『ツイていない』と思っていた。

 内部政治にも興味がないので出世しなさそうだし、何より会うことすらほとんど無い。


 魔導六師付きになれた時は心底嬉しかったのだが、どうせなら違う相手が良かった、と思いながら日々誰もいない執務室で過ごしていたのだ。


 だが、これだけの素晴らしい才能を見せつけられて、心奪われない人がいるだろうか。


 キアラはアズーラ中尉に教えて貰っているつもりだが、アズーラ中尉はキアラに心酔しきっていた。


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