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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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18.生徒会室へ

 


「アシェ〜、どうしよう〜」


 パーティーが終わるまでに美味しいご飯も食べられてウキウキだったキアラだが、自室に帰ると頭を抱えていた。


「ん? どしたの?」


「だって、ルーレスト殿下の暗殺未遂だもん」


「よかったね、しななくて」


 アシェはお気楽だが、キアラは死ななくて良かった、だけでは済まない立場だ。


「でも、こういう事がありましたよ、って報告しなきゃいけないのよ。

 私は毒の関知なんて出来ないし、そういう魔法があるのかどうかも知らない。

 アシェが居るってことは、誰にも言うつもりはないのに、どうやって報告すればいいのよ〜」


「ニンゲン、むずかしいね」


 綺麗な水色の髪をなびかせて、部屋の中で踊るアシェは楽しそうだが、キアラはそれどころではない。


「……もういいや。怒られるかもしれないけど、元帥閣下への報告はまた今度にしよう。

 めっちゃ怒られるのと、アシェを連れて行かれるのだったら、怒られる方がマシ」


「いなくならないよ? きあらがいないと、かたちをつくれないもん」


 上級精霊が新たに産まれることはない、と言っていたが、アシェは例外だ。

 キアラの魔力に吸い寄せられて発生した精霊だから、キアラがいないと姿を維持できない。


「でもね、そんなこと考えずに連れて行っちゃうのが軍っていう組織だよ」


 国を魔獣から守るために、有用な物は何でも使う人達なのだ。

 当時10歳にしかならない少女だったキアラも、利用されたうちのひとり。


「報告はいつかでいいけど、ルーレスト殿下には言っときたいんだよねぇ。機会があるかな」


 命を狙われているのはストレスだろうが、自覚を持ってもらわないことには守ることも難しい。


 学内のパーティーで毒入りの飲み物が存在したということは、犯人は学園関係者に間違いないのだ。

 またいずれ仕掛けてくるとみて間違いない。


 そもそも、どこからどう来るのか、分からないまま守るのはキアラにとって初めてのことだ。


「見えない敵って、こんなに難しいのかぁ。魔境の敵の方がずっと簡単だよ」


 ふぅ、とため息をひとつついたキアラを、アシェが心配そうに見つめていた。




 次の日も休日だが、ルーレストに誘われたので、部活棟の1階1番奥にある生徒会室へと向かう。


 扉が開いていたので恐る恐る中を覗くと、エルデも既に来ていてキアラ以外はもう揃っていた。


「うん、全員揃ったね」


 部屋に入ろうかオロオロしているキアラを目ざとく見つけたルーレスト殿下に言われてしまうと、さすがのキアラも中に入らざるをえない。


「まずは自己紹介からしようか。僕は生徒会長のルーレスト・フォン・ガレス。これでも第三王子だから、エルデ君は見た事があるかもね。

 キアラ君は平民だけれど、気にせずに接して欲しいな。

 今年も新入生を迎えられたこと、嬉しく思うよ。

 これから1年間、よろしくね」


 王族に相応しい、穏やかな自己紹介だけれど、キアラは腹黒王子の内面を知ってしまった。

 しかも、向こうは気づいていないが、公式行事で何度か顔も合わせたこともある。

 今更だが、自分が他の人と話さない性格で良かったな、と思う。そうでなかったら、出会った瞬間にバレて護衛どころではなかっただろう。


「私は、三年で副会長のイヴ・アズーラ。得意属性は風で、将来は魔法兵団を目指しているので、決闘部にも入っている。これからよろしくな」


 そう話すのは背の高い女性で、軍を目指すという言葉通り、かなり鍛えているのが分かる。

 紺色の長髪を高い位置でポニーテールにし、アメシストのような紫の瞳が印象的だ。


「昨日も会ったが、俺は三年で会計のルーク・ウェブ。二人共、火属性が得意なんだろう? ぜひ、バトルクラブに入ってバトルしようぜ!」


 分厚い胸板が見えるほど制服のボタンを開けているのは良いんだろうか。というか非常に暑苦しいタイプだ。


 キアラは人に向かって魔法を放つのは怖いので、したいとは思わない。

 決闘部もバトルクラブも遠慮しようと心に決めた。


「最後に、わたくしはルチア・レステーゼ。二年で会計ですわ。気軽にルチアって呼んでくださいね。

 お二人のように強くはありませんが、その分算術が得意なので会計をしておりますの。

 手芸部にも入っていますから、ご興味があればぜひお越しくださいね」


 ゆるいカーブを描く若葉色の髪のイメージ通り、ゆるゆるした雰囲気の人で、そばかすが目立つ顔をしている。

 ふわり、と笑いかけられて、隣のエルデが一瞬目を奪われたのが分かった。

 キアラは他人の恋愛になんて全く興味がないので気にしないけれど。


 ルチアの一撃で固まってしまったエルデだが、自分に注目が集まっていることに気づいて慌てて話し始める。


「はい、俺はコンラート・エルデです。得意属性は火魔法、将来は魔法兵団で名を上げて魔導六師になるのが目標です」


 キアラは魔導六師、と聞いただけで反射的に反応してしまいそうになるが、潜入中だと思い出してぐっと堪えた。


 だが、アメシストの瞳を輝かせたイヴが被せてくる。


「エルデ君、気が合うね! 私も、魔法兵団に入りたいんだ。

 特に私はレンツァー魔導師に憧れていてね。だって、私よりも二つも若いのに、もう既に歴代魔獣討伐数で堂々の一位だよ!?

 私の兄がレンツァー師付きなのだが、本当に羨ましい!

 いつか、私もああなりたい、と思って日々修行しているんだ」


 キアラ・レンツァー、もちろんキアラの本当の名前だ。

 でも、レンツァー師、と言われるのにはいつまで経っても慣れない。

 キアラというのはよくある名前だから2人を繋げて考える人は居ないだろうが、魔導六師の話題になるとビクビクしてしまうのは仕方がないと思う。


「俺もいつかはなりたいと目指しています。魔境での魔獣討伐は王国の民を守るための任務ですから、それを俺と同い年で遂行することは、本当に憧れです」


 エルデも負けじと語るものだから、キアラはもうここから脱兎のごとく逃げ出したい気分だった。


「まあまあ、二人共その辺にしておいてくれるかい。まだ自己紹介も出来ていないのに、すっかり縮こまっちゃっているよ」


 見かねたルーレストが2人を止めてくれるが、キアラは2人の圧に負けて縮こまっているわけではないので、心を立て直すまでに時間がかかってしまう。


「……ぁの、キアラ、です……お願いします……」


 まともに前も見れず、長い黒髪の毛先を弄りながら何とか言葉を捻り出した。


「あらあら、キアラちゃんは大人しい子なのね。そんな貴方には、手芸部がぴったりよ。

 みんなゆったりしているし、したければお話も練習できるわ。

 それにね、展示作品さえ提出してくれれば、活動自体には来れない時があっても全然大丈夫よ。

 予算は部員数によって振り分けられるから、ぜひ入って欲しいの。どうかしら?」


 勧誘理由が予算が欲しいから、というのは現実的すぎる気もするが、だから会計を担っているのだろう。

 キアラにとって話の練習ができる、というのは多少魅力があるが、参加出来るだろうか。


「……はぃ……」


「今決めなくてもいいわ。気が向いたら来てくださいね」


 あまり押しが強くないのも、ルチアの良いところだろう。

 キアラは、少し顔を出してみてもいいかな、と思った。


 ひとしきり自己紹介が終わった所で、会長のルーレストがまとめにかかる。


「では、今日はこのくらいにしておこうか。

 各部の新入生の勧誘は2.3年で出来るから、当面1年生の2人は学園に慣れることを優先してくれていいよ。もちろん、何かあれば相談にも乗るからいつでも言ってね。

 次の生徒会イベントは武闘大会だから、中間テストが終わってから本格的に動く予定だよ」


 すぐに活動が始まるわけではない、というのは環境に慣れるのが遅いキアラにとってありがたい。

 だが、最初のテストが意外と近くに迫っていることを言われた気がして、一気に気分が落ち込むのだった。


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