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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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15.腹黒王子

 


 だって、第三王子が精霊持ちだということは、元帥閣下には教えられていない。

 閣下も知らない情報か、キアラに教えるべきではないと判断された情報なのかは分からないが、自分が知らない方がいいことをうっかり知ってしまった。

 それで良いことは特にないだろうから、とっとと逃げようと思ったのだ。


 キアラはいつだって、怖いことや嫌なことからは目を背けて逃げ出すことにしているから。

 村から出た時も、魔法兵団での人間関係も、そうやって逃げてきた。


「やぁ、キアラ嬢。もう授業は終わりだけれど、そんなに急いでどこに行くんだい?」


 なのに、その王子様はキアラより前に廊下に出て、さっと道を塞いでしまった。


「……ぃぃい、ぃぇ」


「そう。じゃあちょっと話に付き合ってくれるかな」


(もうやだー! アシェ、なんであのタイミングで出てきちゃったのよー!)


 心の中でアシェに当たり散らしても問題は一向に解決しない。


「別に何かさせようとは思ってないから安心していいよ。単に、僕は怖がりだから、自分の秘密を知られた相手には目の届く所にいて欲しいだけなんだ」


 にこにこと笑みを浮かべる顔は、さすが王族だと思うべきかもしれない。

 けれど、キアラは魔境で魔獣を相手取る時よりもずっと強い緊張感で、背中に汗をかいていた。


「これを機に王子に取り入ろうとすると思ってたのに、それをしないなんて変わった子だな、と思って。

 それどころか全力で逃げ出そうとしてるもんね。本当に逃げたいなら、あんなに堂々と授業中に片付け始めない方がいいよ。

 今から逃げますよ、って宣言してるようなものだ」


 饒舌にアドバイスをくれるが、絶対キアラを思っての台詞じゃないだろ、と言い返したくなるほどの圧力を感じる。


「でも僕は、君のことを逃がすつもりはないんだ。

 ねぇ、自分の精霊を、国に申請されたくないだろう? そんなさ、『ルールなんだったら申請してもいいかも』なんて顔してても駄目だって。

 平民についた新規の上級精霊なんて、軍に接収されて終わりだよ。

 あの精霊と離れたくないだろう?」


(この人、王子様のくせにめちゃくちゃ脅して来るんだけど。なんなのよ!)


 キアラは魔導六師なんて肩書きを持っている割に政治から縁遠い。

 なので、王子様といえば絵本の中に出てくるキラキラした清廉潔白な人だとと思っているのだ。

 だが、王位継承権を持つ本物の王子はドロドロの王宮で育っているだけあって、キラキラとは縁遠い存在だった。


 キアラの理想の王子様像が崩れるような腹黒い笑みで、なおも話し続ける。


「だからさ、キアラ嬢。生徒会に入らないかい?」


「…………はぃぃっ?」


「そんなに快諾してくれて嬉しいよ。早速今日から来てくれるかい」


 全く快諾なんてしていないどころか、全力でお断りしたいのに、キアラの咄嗟の聞き返しを快諾だと言い切るその神経はどうなってるんだ。


(いやいやいやいや、勘弁してよ)


 せめてもの抵抗に、ぷるぷると首を振る。


「悪い話じゃないと思うけどな。毎年新入生が入るし、学年2位を取れるなら条件面でも十分満たしている。

 生徒会入りは皆が目指す所だよ?

 就職にも有力だし、僕との個人的なコネもできる。平民の君からしたら、これ以上ないチャンスだから、断る理由なんてないよね」


 まるでキアラのことを考えてくれているかのような言い草だが、絶対にそれだけじゃない。

 キアラが想像する王子様のようなキラキラの笑顔のはずなのに、その裏に腹黒い顔が隠れているのが見えるかのようだ。


「……ぁあぁの、わたし、むり、です。他の人に……」


 あいにくキアラは就職にもコネにも困っていない。

 どころか、下手な人脈を作ると仕事が増えるだけなので全力で遠慮したい。


「ふぅん。アシェ、だったっけ?あの精霊は要らない、と。申請を出せばすぐにでも軍部が接収しにくるだろうなぁ」


(くそっ、コイツ、腹黒すぎるぅっ!!)


 王子相手でも、心の中で毒づくくらいは許されるだろう。

 軍部が接収に来るのも、アシェと自分がどういう扱いを受けるかも、大体予想がつくだけに、その事態は回避したい。

 じゃなかったら、軍の錬金塔であんなに頑張ってアシェを隠した意味がなくなるじゃないか。


「まぁ、今日は生徒会も忙しからね。明日の新入生歓迎パーティーで声をかけるから、そのつもりでいるように」


 最後だけ爽やか王子様スマイルで、言いたいことだけ言って去って行った第三王子を何も言い返せずに見送る。


(はああぁぁ、めんどくさいことになった!)


 というか、裏表が激しすぎる。王族ってあんな奴ばっかりなのか。

 あの優しそうなツラしてるくせに言うことはえげつないの、元帥閣下にそっくりだったし。

 あー、嫌になるな。


 なーんてキアラは考えても仕方の無いことをグチャグチャと考える。


(でも、まあ。

 私の気分的な話はともかく、生徒会に入ること自体は悪くないのかもしれないな)


 キアラは内気で引っ込み思案だが、意外とポジティブ思考でもある。


(放課後は教師の管理が薄くなる分、殿下に危害を加えやすくもなる。

 その時間帯に護衛をするなら、近い所に堂々と居られる方がいいよね。うん、そうだ。

 そうなんだけど……


 でも、イヤだーー!!)


 普通の生徒なら飛びつくような、第三王子直々の生徒会への勧誘。


 でもキアラにとっては腹黒い人に話しかけられた、それ以外の何ものでも無かった。



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