第百十二話
おとうとがびょうきでしんでしまったんです。
くろのまほうつかいがかなしいかおでいいます。
むらびともざんねんそうなかおをします。
それからすぐにみんなかれからはなれていきました。
くろのまほうつかいはあわててみんなをひきとめます。
あいしてほしかったからです。
どうしたの。
もうぼくしかいないんだよ。
どうしてぼくをたよらないの?
むらびとたちはつめたいかおをします。
くろのまほうつかいなんかいらないよ。
そうよ。そうよ。
ひはじぶんでたけるし。
さかなはくさるまえにたべればいいわ。
そうむらびとたちはくちぐちにいいます。
ひとりのむらびとがいいます。
わたしたちがしろのまほうつかいをすきだったりゆうをおしえてあげる。
たよれたからじゃないわ。
こころがあったから。
やさしさがあったから。
こまったひとといっしょになやめるこころがあったから。
そうむらびとたちがとりみたいにくちをそろえます。
せめられたくろのまほうつかいはきもちがばくはつしていくのをかんじました。
うそつき。
しろのまほうつかいのほうがやくにたったから。
だいすきだったくせに。
いのちのちからをもってた。
だからおとうとはあいされたんだ。
だってみんなじぶんのからだをまもってくれるひとがすきだから。
みんなじぶんのことしかかんがえてないんだ。
くろのまほうつかいはそうおもいました。
するとなんということでしょう。
ゆびからくろいはねがいっぽん!
かれはそれをとりました。
するとまたいっぽん!
どんどんはねがふえていきます。
もうとりきれないぐらいはねがふえます。
うわわわわ。
くろいはねにかれのからだはつつまれていきます。
きづいたらかれはもうりっぱなくろいとりになっていました。
それをみてむらびとたちはおおわらいします。
くろのまほうつかいもはずかしくてなきそうになりました。
でもとりだからもうなけないのです。
かれのいえからもくろいとりがとんでいくのがみえました。
かれのかぞくです。
かれはじぶんのこころのみにくさがはずかしくなりました。
だれにもみられたくなくてひがしのくにへとんでいきます。
もうおわかりですね。
どうしていまのこされたまほうつかいたちがくろのろーぶをきているのか。
それはこのときのなごりなのです。
くろいとりになってしまったときのことをおぼえているから。
かれらはくろいろがすきなのです。
そしてもうひとつかしこいこどものみなさんはわかりましたよね。
じぶんのことしかかんがえられないにんげんはけっして!
しあわせになれないということを。
私はその皮肉気な締めを読んでそっと本を閉じた。




