葬送
5章の最終回です。
ある意味超展開です。
イゾルテは扉の前に立っていた。彼女のこれまでの人生の中で、これほど恐ろしい事はなかった。ルキウスに母の不義の疑惑を告白した時でさえ、これほどには恐ろしくなかった。目の前の扉を開ければ、彼女は動かし得ない過酷な現実と向き合うことになるのだ。だが逃げ出したい思いに駆られながらも、彼女はその扉を開けた。それはどこまでも義務感によるものだった。この結果を招いたのは間違いなく彼女の責任だったのだ。
部屋の中は嗅ぎなれない薬品の匂いで満たされており、あちこちに高価な氷が惜しげもなく並べられて室温が低く抑えられていた。だからだろう、大きな棺の中には1月近く経っても腐ることなく、生前のままの姿が保たれたコルネリオの姿があった。死体を見慣れたイゾルテには、その不自然さがそれを現実とは思わせなかった。……そこに喪服を着たテオドーラが居なければ。
「あ……ね……うえ」
それはイゾルテが今最も会いたくない人物だった。そしても最も会わなければならない人物だった。コルネリオ亡き今、帝位を継ぐのはテオドーラしかあり得なかった。再びテオドーラを擁立して皇太女として立ってもらう必要があったのだ。だから説得の言葉も考えてきた。練習もした。船の中で何度も何度も何度も何度も練習をしたのだ。アントニオに止められても、ただそれだけを繰り返したのだ。……彼に手を上げたのはそれが初めてだった。
「…………」
しかし今、彼女の口からはどんな言葉も出てこなかった。テオドーラを前にして喉までせり上がってくるのは、全て懺悔の言葉だった。だがそれだけは言えなかった。彼女は謝罪はしないと誓っていたのだ。自分のせいで犠牲になった者に対して、決して許しを請わないと誓っていたのだ。全ての罪を背負い続けると誓っていたのだ! ……でも、彼女は罪の重さに耐え切れなかった。
「私のせいです! バネィティアの、アプルンの、ドルクの思惑を読みきったつもりでした! 知っていて罠にかけたのです!」
彼女は声を振り絞った。叫ばなければ立っている事すら覚束なかったのだ。
「危険を犯さずに事前に陰謀を潰しておけばこんな事にはならなかったんです! タイトンの統一を急ぐあまり欲に駆られたんです!」
彼女は叫び続けた。そうしなければテオドーラの言葉を聞かなくてはならない。そんな恐ろしいことに挑む勇気は彼女にはなかった。
「だから事前に戒厳令も出さず、直前になって一気に迎撃体制を整えるようにお願いしたんです。それが暗殺者に付け入る隙を与えたんです……!」
だから彼女は総てを吐露しそうになった。
「全て私のせいです! 私が残っていれば、暗殺者の刃は魔女の私に向いたはずなのに! 私ならきっと――!」
ぱしーん
静まり返った室内に気の抜けた音が響いた。生まれてはじめてテオドーラに頬を打たれ、イゾルテは呆然とした。「――死ななかった」という続きの言葉は衝撃の前に霧散していた。
「見なさい、イゾルテ。彼は笑っているわ」
見る影もなくかすれたテオドーラの声が、静かにイゾルテの耳を打った。
「毒で苦しみながらも、彼は良かったと言っていたの。……死ぬのがあなたでなくて、良かったと」
嗚咽とともにイゾルテの瞳から涙が溢れた。
「彼はあなたを愛していたのよ。義妹としてだけでなく、皇女として、太陽の姫としてだけでもなく、一人の女としても」
その言葉にイゾルテは愕然として大きく目を見開いた。その内容だけでなく、それを妻であるテオドーラから聞かされたことにも衝撃を受けたのだ。彼女は夫が妹を愛していると言っているのだから。そしてその夫は妹が連れて来て無理やり結婚させられた相手なのである。
「そ、んな……でも、私は……」
言葉に詰まるイゾルテに、テオドーラは静かに言葉をかぶせた。
「言ったでしょう、私はあなたを愛していると。だからこそ、彼の気持ちを聞いて仲良くなれたのよ。私達は等しくあなたを愛する者として、同志として夫婦になったの。でもいつの間にか、本当の夫婦になっていたのね……」
そう言ってコルネリオの顔を見たテオドーラの瞳にも、涙が滲んだ。
イゾルテはこれまでコルネリオに男性としての魅力を感じたことはなかった。だが今テオドーラから彼の気持ちを伝えられ、イゾルテは嬉しかった。彼は碌に顔も覚えていないフルウィウスとは訳が違うのだ。コルネリオは彼女自身が人柄と実力を見込んだ人物であり、誰よりも大切なテオドーラとパレオロゴスの血筋を預けた男だった。その彼が自分を慕っていたと聞いて、嬉しくない訳がなかったのだ。
――今思えば、ベルケルに向って一人で突撃したのも、私が殺されたと思った怒りからだったのか? 私は義兄上にそこまで愛されていたのか……!
今になってそれに気づき、イゾルテの胸は一杯になった。彼の気持ちを生前に聞かされていれば、あるいは恋にまで発展したかも知れなかった。
「イゾルテ、お願いがあるの。彼にキスしてあげて」
イゾルテはコクリとうなずくと、人生で初めて、男性にキスをした。その唇は固く、冷たく、しょっぱかった。そしてテオドーラも、イゾルテの涙の上に自らのそれを重ねた。
「あなた、良かったわね。ようやく願いがかなったわ」
それは悲しい、3人きりの結婚式だった。
イゾルテは涙を拭うと二人を残して部屋を辞した。彼女にはまだ会わなければならない人達が残っていたのだ。だが意を決してリーヴィアの許を訪れたものの、イゾルテは再び声を失っていた。彼女を前にして懺悔するのは二度目であった。しかも今度は叔父の時とは訳が違った。今回彼女には明らかに過失があり、それを未然に防ぐ道もあったのだ。だが彼女は危険を犯し、彼女の身代わりとして今度はリーヴィアの弟が死んでしまったのだ。
「申し訳ありません! 全て私の責任です! 義兄上は私の身代わりに死んだのです!」
イゾルテは涙を溢れさせると、膝をついてリーヴィアの胸に抱きついた。
「叔母上、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
その子どもじみた仕草にいつぞやの演技じみた遣り取りを思い出しながら、リーヴィアは静かに嘆息した。
――やっぱり、この子にとって私はまだ叔母のままなのね……
それでも胸の中に抱きついてくるだけ、昔よりは遥かに親しくなっていた。顔を強ばらせてドアの前から動こうとしなかったあの時とは、その罪科も、お互いの立場も、国を取り巻く状況も、そして何より愛情の深さも、何もかもが異なっていた。だから彼女も、あの時のようにイゾルテを許したりはしなかった。
「許さないわ、イゾルテ」
リーヴィアはそう言いながらもイゾルテを強く抱きしめた。
「仮にあなたの言う通りだとしても、兄が妹を守るのは当然のことよ。勤めを果たした私の息子を馬鹿にするのはおよしなさい。あなたはこう言えばいいの、ありがとうって」
「叔母上……」
「もう、本当に許さないわよ、イゾルテ。もうあなたの叔母はもういないわ。私はあなたの何かしら?」
「……お母さま、です」
「そう、だから私もあなたを守るわ。それは当然のことだもの、あなたが重荷に感じることはないわ。でも、ありがとうって言ってくれると嬉しいわね」
その言葉に再び涙を溢れさせると、イゾルテは嗚咽の隙間から感謝の言葉を絞り出した。
「お母、さま、ありが……とう。お、義兄さま、あり……とう」
それは、演技ではなく本心から、イゾルテがリーヴィアを母と認めた瞬間だった。
最後に会わねばならなかったのはルキウスだった。先の二人に比べればイゾルテは幾分気楽ではあった。彼女とルキウスの二人だけは、コルネリオと夫婦でもなければ血もつながらないからだ。親しくしていたのもこの2~3年のことに過ぎない。そして彼らの話題も、深刻ではあっても感情を無視した政略の話にならざるを得なかった。
「葬儀に合わせて、姉上を皇太女にする旨を布告せねばなりません。父上の身辺警護は万全を期しているでしょうが、皇帝が暗殺者の刃に倒れた例は数知れません。義兄上が暗殺された以上、父上のお命を不安に思う者もいるでしょう。それにアルクシウスとやらの例もありますから、早々に皇位継承の順序を明らかにしておくべきです」
イゾルテはあいさつもそこそこに畳み掛けたが、彼女の提案を予見していたルキウスは即座に首を横に振った。
「お前が帝位に就け、イゾルテ」
「は……? 何を言っているのです!? 私は皇位継承権を放棄しましたよ!」
「そう、コルネリオに忠誠を誓うと宣言してな。故にコルネリオの死によってお前の継承権は復活している」
「…………!」
それは晴天の霹靂だった。身内の死についてあまりにも無警戒であり過ぎたことを彼女は痛感していた。
「し、しかし、私が帝位に就けない理由はご存知のはずです!」
「もはや、お前でなくては誰も納得しない。元よりテオドーラも納得している」
「ですが、私は嫌です! パレオロゴスの血筋を乗っ取るようなこと、決してしたくはありません!」
「血筋にかかわらず皇位を継承できることを示したのはお前だぞ、イゾルテ! お前が元老院を纏め上げてコルネリオを皇太子に擁立したのだ! その死の責任を感じているのなら、元老院に対しても責任を取るべきだ!」
「し、しかし……。そう、元老院総会を招集しましょう! 姉上を皇太女として認めさせてみせます!」
彼女は一縷の希望に縋ってルキウスに提案した。だが、その返事は思いもよらないものだった。
「既に元老院総会は招集した。3日後、つまり葬儀の前日の予定だ。議題も伝えてある」
その用意周到さにイゾルテは悪い予感しかしなかった。
「まさか……」
「そうだ、お前の即位の承認だ」
ルキウスの言葉は、最悪の想像を更に越えていた。
「待って下さい、困ります! それに即位とはどういうことですか! まさか帝位を退かれるおつもりなのですか!?」
「違う、共同皇帝だ(注1)」
「……!」
「引退したいのはやまやまだが、それではお前が納得するまい。それにこれからもお前には国外を飛び回ってもらわねばならないだろう。お前はお前で好きなようにすればいい。私はここでお前の留守を守ってやる。まあ、お前は今でも十分に好き勝手やっているような気もするが」
「…………」
ルキウスの信頼にイゾルテは胸を打たれた。だがそれでも、彼女が帝位に就くわけにはいかないのだ。
「なあに、玉座が二つ並ぶのはプレセンティナにもへメタルにも珍しいことではないぞ?」
外堀が埋められていく感覚に、イゾルテは虚勢を張って皮肉を返した。
「……義母上のとペルセパネの玉座もありますから、4つですけどね」(注2)
「同盟の拡大を願って、ついでにヘメタルの玉座も用意させよう。ははは、これで5つだぞ」
軽口を叩くルキウスに、イゾルテは再び皮肉を言った。
「私が結婚すれば6つになりますね!」
「いや、それは許さない。お前は独身でいろ」
「え、何故です? いや、もちろん私は結婚する気もなければ、そんな余裕もありませんけど」
「議題の2つ目は立太子だ。マヌエルを皇太子に据える」
「……!」
ルキウスの思惑にイゾルテは納得せざるを得なかった。イゾルテが案じているのは自分の血筋が皇統を穢すことだ。予め皇太子としてテオドーラの子を立て、イゾルテの結婚を禁じることで、彼女の不安が現実とならないように手を打ったのだ。つまり、普通にイゾルテを皇太女に指定したのでは次の次の皇帝を予め定めることが出来ないので、一足飛びにイゾルテを皇帝にしようというのである。
「共同皇帝はドルクにもハサールにも、そして他のタイトン国家にも例のないものだ。仮に真似をしようとしても、それを受け入れられるのはへメタル直系の我がプレセンティナ帝国の国民だけだろう。そもそも、権力を巡って争い合う国々には真似をする余地すら無いしな。我ら親子の絆の強さを世界中に見せ付けてやろう」
――親子の絆……
その言葉に、遂にイゾルテの目から涙が溢れた。
「引退したい父親と、即位したくない娘。確かにいいコンビですね」
泣き笑いしながらも口の減らない娘の姿に、ルキウスは優しく苦笑した。
「でも、なぜ葬儀の前日なのですか? ホールイ3国の議員たちは北方を警戒して身動きが取れないでしょう。他の国々は遠すぎて間に合わないでしょうし、総会と葬儀を重ねても出席率は上がりませんよ?」
「お前の即位はコルネリオの遺言だからだ」
「えっ?」
「共同皇帝の案はもともとコルネリオが持ちかけてきたものだ。お前は私とではなく、コルネリオと共に皇帝にしてはどうかと」
寝耳に水のことに、イゾルテは眉を潜めた。
「……そんなこと、私は一言も聞いていませんよ?」
「私がうんと言わなかったからな。お前が帝位に就きたくない理由を言えないから、なかなか苦しかったんだぞ?」
「……すみません」
「だが、コルネリオは最期まで諦めなかった。遺言書にはお前を後継者とするように明記されていた。我が子マヌエルが帝位を望むのであれば、元老院の総意を得ること、とまであった」
「義兄上らしい……」
それは最期までイゾルテのことを殿下と呼びつづけたコルネリオらしい遺言だった。我が子に重い枷を付けたのは、そう言い遺せば息子が奮起すると思ったのだろうか? それともイゾルテへのメッセージだろうか? 帝位に見合う男に育てて欲しい、後見として元老院をまとめて欲しいという、余りにも重い仕事を押し付けたのだろうか?
――子供の育て方など私に分かるものか。私自身がまだまだ子供だというのに……。
「どうだ、イゾルテ。これでもまだ断るか?」
「一つ条件があります」
「何だ?」
「マヌエルを私の養子にして欲しいのです」
「な、に? しかしお前は未婚の上にまだ若い。とても赤子を育てることなど……」
イゾルテはいっぱいいっぱいで、ルキウスが残念そうに彼女の胸を見つめていることには気付かなかった。
「ああ、いえ、姉上から取り上げるつもりは毛頭ありません。今は名目上で結構です。後宮も父上がご自由にお使い下さい。東宮もマヌエルが皇太子ならそのままで良いでしょう。使っていない内廷(本来皇帝が住んでるはずのエリア)だけ頂きますよ」
ルキウスは、「あれ、条件が2つに増えていないか?」と思いつつも黙っていた。そんなことよりも、あの頑固なイゾルテが遂に折れたのだ、そちらの方が遥かに重要だった。彼ら親子にとっても、プレセンティナ帝国にとっても、そしてタイトン全体にとっても。
「それは、了承するということか? そういうことでいいんだな?」
「はい、元老院の総意に従います」
「……そう言いながら、否決するように議員に働きかけたりしないよな?」
「しませんって」
「決議させた後で、『やっぱり今のナシ法案を緊急動議します!』とか言わないよな?」
「しませんってば! どんだけ疑うんですか!? 共同皇帝がいきなり決裂しそうですよ!」
「だが……お前は前回それをやったではないか」
ムルクスがイゾルテを擁立しようとした時に、イゾルテがコルネリオを担ぎあげて総会決議をもぎ取ったのである。
「うっ、確かにそうですけど……」
「まあいい、それより養子縁組の手続きを取っておこう。テオドーラには私から言っておく」
ルキウスに打診されたテオドーラは、もちろん即座に快諾した。それも再び涙を流して喜んだ。我が子が皇太子となることよりも、イゾルテがその母となることをこそコルネリオは喜ぶだろう。それがテオドーラには分かっていたのだ。
元老院総会には常にないほど多くの議員が出席した。急なことであったが、アプルンに、バネィティアに、そして何よりドルクに対して怒りに燃える彼らは、今やプレセンティナの守護神とも言うべきイゾルテの即位を熱狂的に支持していたのだ。だからイゾルテは盛大な拍手と歓声を以って演壇に迎え上げられた。だが彼女の演説は彼らの期待を裏切るものだった。
「議員諸君。私はこの1年間、ヘメタル同盟の拡大とハサール・ドルク同盟の侵略へ対抗するために東タイトン全域とクレミア半島を訪れていた。私はそこで様々なものを見た。
私は見た、旧アルテムス王国領に暮らす人々の苦しみを。
私は見た、長年圧政に耐えてきたスラム人の憎しみを。
私は見た、蛮族と蔑まれるハサール人達の温かく和やかな暮らしぶりを。
私は見た、この手で殺した敵の家族が泣き崩れるところを。
ドルクとハサールはタイトンにとっての重大な脅威である。私はその脅威に対して自ら脅威となることで対抗し、多くの敵を殺してきた。
多くのドルク人を殺した。そして多くのハサール人も殺した。故に彼らは私を黄金の魔女と呼ぶ。
私はこれまで、相手に被害を与えることで相対的な優位性を確保しようとしてきたのだ。だがそれだけではダメなのだ。
だから今回は旧アルテムス領を空にして彼らのあてにしていた食料を奪い、一方で手薄となったクレミア半島を独立させた。
タイトンに攻め込んでも得にならないと教えることで、手を引かせようとしているのだ。
だが未だにドルク軍は旧アルテムス領内に居座り、ホールイ3国とディオニソス辺境諸侯はハサール軍と対峙したままだ。難民たちは国を追われ、我らは食料の不足に悩まされている。
だが賢明な諸君なら知っているはずだ。一流の商人なら取引相手に損はさせないことを。自分と取引することで利益があるのだと教える事こそが商売の要諦だと。
だから私は伝えたい。プレセンティナと共にあることがタイトンのためだと。タイトンと共存することがハサールの、そしてドルクのためでもあると。
私が帝位に就くにあたって諸君に約束することは、勝利ではない。だがもちろん敗北でもない。私が約束するのは平和であり、世界秩序だ。
パックス=プレセンティナーナ(プレセンティナによる平和)
パックス=へメタリカ(ヘメタルによる平和)
かつてヘメタルがその軍事力によって世界秩序を構築したように、私はヘメタル同盟の名の元に交易と相互理解による新しい世界秩序を構築する。(注3)
そのために私は、敵に恐れられる黄金の魔女としてではなく、諸君に愛される太陽の姫として国を導きたい。この国だけでなく全ての国に恵みをもたらす太陽のように。
ハサールとスラムに、失われたアルテムス王国に、覇権を争うディオニソスとアプルンに、そして我らと心を一つにしたホールイ3国、ディオニソス辺境諸侯、ムルス騎士団、バネィティア共和国に。そして、長年の宿敵であるドルクにも。
やがて私の後を継ぐマヌエルには、そんな平和な世界を譲り渡すことを、私はここで亡き義兄コルネリオに誓う。
義兄の愛したプレセンティナとこの世界に栄光があらんことを」
イゾルテの演説は咳き一つ無い沈黙の中で終わった。復讐を誓い国民を鼓舞する力強い演説を期待していた議員たちは、平和共存を唱えるイゾルテの言葉に戸惑っていた。だがそんな彼らも、彼女が暗殺に怯えて弱腰になったのだとは誰も思わなかった。北に南に陸海軍を率いて奔走する彼女は、これまでに何度も死線に身を置いてきたのだ。だから今更怖気づくとは思えなかったし、何より彼女の声にも瞳にも溢れんばかりの力が漲っていたのだ。
十人委員会の委員として最前列にいたアエミリウスは、彼女の瞳を見て震えていた。いつぞやのように感情の消えた瞳からは、神像を超える荘厳な威厳が溢れ出していたのだ。
――殿下はつくづく我らの期待を裏切られる……
ヘメタル同盟の構想を打ち明けられた1年前のあの時と同じく、いや、それを超える歴史的な転機が訪れたことを彼は感じ取っていた。
――そして、やはりこれが私の役回りなのだな……!
彼はニヤリと笑ってみせることで無理やり震えを抑えると、決然と立ち上がって2年前と同じように大きく声を張り上げた。
「わた……」
「私は、イゾルテ・ペトルス・カエサル・パレオロゴスに忠誠を誓う!」
先を越されて愕然としたアエミリウスが振り返ると、元老院恐怖症になったはずのムルクスが、一番後ろで一人立ち上がって胸を張っていた。顔は蒼白だったけど。
――くぅ、先を越されたか! だが、ムルクス提督ならば仕方がない……!
彼は再び正面を向いて、イゾルテに向かって声を張り上げた。
「わたし……」
「「私は、イゾルテ・ペトルス・カエサル・パレオロゴスに忠誠を誓う!」」
再び後ろを振り返った彼が見たのは、ローダス島への援軍に向かった提督たちと、新神殿建立委員会の委員を務める将軍たちだった。彼らはもともとイゾルテ贔屓だったが、委員たちはコルネリオとも親しかったはずだ。彼らが復讐心を忘れたとは思えないが、それでもイゾルテならば新しい道を示してくれると期待したのだろう。それとも敬愛する義兄を失った彼女が悲しみに耐えているのに、自分たちだけが憎しみに身を焦がすことは許されないと思ったのかもしれない。
――くそぅ、軍人たちには声量で負ける!
彼は再び正面を向いて、今度こそイゾルテに向かって声を張り上げた。
「わたしは……」
「「「私は、イゾルテ・ペトルス・カエサル・パレオロゴスに忠誠を誓う!」」」
再び後ろを振り返ると、今度は他の軍人達に加えて民間人も大勢立ち上がっていた。
――ああ、もう全然目立てない!
彼は再び正面を向いて、やけくそ気味にイゾルテに向かって声を張り上げた。
「「「「「私は、イゾルテ・ペトルス・カエサル・パレオロゴスに忠誠を誓う!」」」」」
気付けば彼の周りも含めて全員が立ち上がっていた。
――ああ、立ち上がったのは最初だったのに……
盛り上がる議場の中でただ一人彼だけが肩を落としていたが、ふと演壇を見上げればイゾルテが彼を見つめていた。そして目が合うと、彼女は軽く頷いてみせたのだ。
――それでも殿下は見ていて下さる……! うむ、当然だな。殿下の平和共存路線には政治工作と和平工作を行う我々政治家が主戦力となるだろうからな!
うんうんと頷くアエミリウスが見ていない間にも、イゾルテはムルクスに、提督たちに、委員たちに、離宮の職人や学者たちにも目を向けて頷いていた。雲を掴むような話に心から納得した者は誰一人としていないだろう。それでも立ち上がった彼らのおかげで、議員たちの賛同を得られたのだ。彼らは理屈ではなく、ただ彼女を信じて、その希望を託したのだ。
この演説は彼女にとって賭けだった。勇ましい事を言えば議員たちの支持を得られることは分かっていた。だが彼女は敢えて理想を語ったのだ。ルキウスに言ったように即位を逃れようとした訳ではない。皇帝になりたくないという気持ちもまだ少しあったが、大望を叶えるためには皇帝になる必要があると既に納得していたのだ。それに――
――義兄上には悪いけど、やはり私が暗殺の的になる必要がある。私なら……毒を受けても死なないかもしれないのだから。
イゾルテは、結局それだけはテオドーラに告白することは出来なかった。例え騙すことになるのだとしても、彼女にはいつまでも自分の姉でいて欲しかったのだ。だが、だからこそテオドーラとマヌエルを守るために、イゾルテがその身を危険に晒すと決めたのだ。
――義兄上が私を守りたかったように、私も姉上達を守りたいのですよ
そうして臨んだ元老院総会だったが、彼女は敢えて平和共存の理想を語った。もちろん言葉は選んだし飾りもした。それは理屈である。だがその根底にあったのは理想であり、心だった。彼女はこれまで、考え通りに事が運ぶと楽しかった。相手の思惑を見透かし、誘導し、罠にはめ、望む通りの結果を手にする事が無性に楽しかったのだ。だが、今は違った。自分の理想が、心が議員たちに受け入れられたと感じられ、彼女は嬉しかったのだ。そしてその大きな喜びは、イゾルテの小さな胸から溢れ出しそうだった。
だが一方で、彼女は理屈を捨てることも武力を自ら封じるつもりも毛頭なかった。それどころか、海上交易を独占し得る立場も利用するつもりだった。例えば、戦いを続けるアプルンとディオニソスを屈服させるには、直接手を出さずに経済的に締めあげるのが一番効果的だろう。それこそが彼女の唱える平和であり、世界秩序の正体でもあったのだ。
だが何より大きな問題は、ドルクやハサールとの講和であった。
――ハサール人とスラム人の間には拒絶と憎しみしかなかった。そしてハサール人が混血を嫌う以上、タイトン人とゲルム人のように他者と同化することは出来ないだろう。それに、もし仮に混血を許してしまえば、人口が少ないハサール人はあっという間に飲み込まれてしまうはずだ。
実際、タイトン人と同化したゲルム人は独自文化の多くを失ってしまっていた。もっとも、ゲルム人自身が狩猟生活を捨てて農耕民族であるタイトンに攻め込んだのだから、自主的に捨てて来たようなものではある。そして彼らが捨ててきた故郷にちゃっかり居座ったスラム人までタイトン化しているのだから、タイトン文化は疫病のように強い感染力があるのかもしれない。スラム人達がイロルテの名に反応した所をみると、タイトン文学も浸透しているようだ。そう考えると同じようにハサール人とスラム人、あるいはタイトン人との同化を試みれば、ハサールの文化と生活はあっさりと消え失せるかもしれなかった。だがハサール人の暮らしぶりを見て来たイゾルテには、それを安易に否定する事は出来なかった。
――とはいえ、異質であるからといって共存できない訳ではない。父上も、姉上も、義母上も、そしてプレセンティナの人々も、誰よりも異質な私を受け入れてくれているではないか! そしてもちろん、義兄上も……
それに彼らは曲がりなりにも同じ土地で100年近く共存してきたのだ。だから彼女には、妥協点さえ見いだせれば農耕民族と遊牧民族が同じ土地に暮らすことは可能だと思えた。その間を取り持つのは、言葉であり、力であり、金であり、人だろう。そしてプレセンティナにはその全てがあった。更にへメタルには、全てを受け入れる理念もあった。
『各人に各人のものを』(注4)
農民には農地を、遊牧民には草原を、ついでに商人には金を。ルールを守る限り誰もが幸せになれる世界、それも彼女の言う世界秩序であった。
その日、元老院総会では3つの議題が全て可決された。
イゾルテの皇帝としての初仕事はコルネリオの葬儀であった。遺体を1月近くも保存してまで葬儀を遅らせたのは、彼女がクレミアから帰ってくるのを待っていたからであり、葬儀の前に元老院を招集したのは彼に皇帝となったイゾルテを見せようという配慮であった。
コルネリオの遺体は周囲に丸太を積み上げられて火を着けられた。イゾルテが嗅ぎ慣れた人の肉が焼ける匂いが漂い始めても、テオドーラもリーヴィアも怯むことはなかった。ただ籠付きの台車{乳母車}に乗せられた二人の赤子達は炎の轟音と熱に怯えて泣き始めた。(乳母車はイゾルテが後宮に忘れていった後、彼女からの出産祝いだと解釈されて勝手に利用されていた)
すると、そこにベルトランが大樽を担いで進み出て、樽の中身を炎に浴びせかけ始めた。誰も制止しないことを訝しく思ったイゾルテがルキウスの顔を伺うと、彼は肩を竦めて皮肉げな笑みを返した。イゾルテが首を傾げていると、そこに別の香りが漂ってきた。神酒と呼ばれるようになり珍重されるようになったイゾルテ印の樽酒{ブランデー}の香りだった。飲み仲間でもあった彼からの、せめてもの手向けだったのだ。
彼は樽酒{ブランデー}を炎に浴びせる傍ら、時折自らもそれを飲み、最後には樽を逆さにしてざばぁっと頭からかぶった。それが彼らの最後の酒盛りだった。何故最後に酒をかぶったのかは、歩き去る彼の真っ赤な目が物語っていた。さぞや塩っぱい神酒だったことだろう。だが、彼の顔はどこか晴れ晴れとしていた。
ベルトランは暗殺騒ぎがあった時コルネリオの傍らに居た。外国人である彼には今回の陰謀(というか陰謀返し)は秘密になっていたのだが、突然巻き起こった騒ぎを聞きつけて野次馬がてら港湾部に押しかけていたのだ。そこでバリケード構築の指揮を執っていたコルネリオを見つけて話し込んでいたところ、市民に紛れ込んでいた暗殺者たちが襲撃をかけてきた。襲いかかってきた12人の暗殺者の内、8人を彼一人で叩き斬り、コルネリオに向かって投げられたナイフまで次々とはたき落とした。その間に残りの4人もコルネリオの護衛の手で無力化され、彼らはほうっと一息つくことができた。だがその際に関係のない市民も巻き込まれ、暗殺者の手で数人が犠牲になっていたのだ。その内の一人の女性に縋り付いて泣いていた少女が、近づいてきたコルネリオに突然飛びかかった時、ベルトランの剣は鈍った。それでも少女は胴を真っ二つに叩き切られたのだが、その前に彼女のナイフはコルネリオの頬をわずかに切りつけていた。コルネリオは「大丈夫だ、助かった」と引きつった笑みを返したが、僅か数分後に体調の異常を訴え、皇宮に担ぎ込まれた時には立ち上がる事すらできなかった。
そしてその後5日間、コルネリオは苦しみながら生死の境を彷徨った。その間、昏睡から覚める度に「殿下は戦場で戦っておられるのだ、決して私のことは伝えるな」と言ってイゾルテに伝えることを禁じたのである。それはイゾルテが意気揚々とニルファルに講和案を伝えていた頃のことである。バネィティアとアプルンの陰謀を防いだ(というかこちらの陰謀がカウンターで成功した)報告だけが先に届き、彼の訃報が遅れて届いたのは、その間彼が苦しみつつもイゾルテの足手纏いになるまいと必死に生き続けたからだったのだ。
浮かれていたその時の自分を思い出すと、イゾルテは遣り切れない思いでいっぱいだった。だが一方で、その時間をコルネリオが稼いでくれたからこそ、講和案を提示できたのだとも考えられた。彼はイゾルテを自由に行動させるため、苦しみながらも「知らせるな」と言い続けたのだ。ならばあの講和案は遺言と同じだけの重みを持つのではないだろうか?
葬儀に先立ってベルトランがイゾルテを訪ねて謝罪したが、当然イゾルテには彼を非難することはできなかった。
「あなたが居なければ義兄上はその場で斬り殺されていただろう。私にはあなたの剣技が劣っていたのだとも思えない。それにもしあなたが何の感傷もなく少女を斬ることが出来たとしたら、義兄上はあなたを友にはしなかっただろう。あなたには、義兄上の友であったあなたのままでいて欲しい」
「しかし、私はあの時のことを後悔せずにはいられません……」
悄然とうなだれるベルトランを、イゾルテは冷たく突き放した。
「剣技を磨くのは自由にされよ。だが、罪を負うべきはあなたではない。私でもない。私も後悔して止まないが……自分に罪があると思うことは、義兄上の意思を軽んずることになる」
ベルトランははっと顔を上げた。
「恐らくは、罪を問うべきはその少女でもないのだ。彼女を暗殺者に仕立てた者であり、暗殺を命じた者だ。
プレセンティナ市民を殺した者がどうなるか、彼等にはその身を以て知って貰おう。それが……私の作る世界秩序だ」
「世界秩序……」
「そうだ、ド・ヴィルパン卿。あなたにも力を貸して欲しい」
「……もちろんです。我らムルス騎士団はヘメタル同盟の剣。まして、戦友の仇を討つのはムルス騎士の本懐です」
そう言って神妙に頭を下げたベルトランだったが、顔を上げるとニヤリと笑った。
「それに、今では俺もプレセンティナ市民ですしね。殺されたら仇を取ってくれるんでしょう?」
ベルトランがそう言ったのは、ムルス騎士団も同盟を結んだことで騎士全員にもプレセンティナの市民権が与えられていたからだった。それどころか重職に就いている(けどその割に暇な)彼は元老院議員でもあり、前日の総会にも出席していたのだ。勢いでうっかりイゾルテに忠誠を誓っちゃった事は本人にも内緒である。
イゾルテは思わぬ反撃に片眉を上げたが、すぐにニヤニヤと笑って嘯いた。
「うーん、ド・ヴィルパン卿を殺せるような者を処罰するのは大変そうだなぁ。やっぱりムルス騎士に市民権をあげたのは間違いだったかな?」
「うわっ、今更それは酷いですよ!」
「じゃあ、決して殺されたりしないでくれ。……面倒だから」
「それも酷いですよっ!?」
二人はどちらからともなく笑い合った。それはコルネリオの死に責任を感じる二人の、密かな葬送の儀式だった。責任を感じるからこそ、責任を感じていない振りをしてみせることが、彼女たちの責任だったのだ。
コルネリオの墓所は歴代皇帝の御陵の並ぶ皇宮の一角に用意されていた。せっかく1月かけて用意した墓石は破棄して、急遽用意された墓石にはただコルネリオの名と共にプレセンティナ帝国第33代皇帝(注4)と記されていた。イゾルテは事前に提起されていた2つの議題に加えて、生前にさかのぼってコルネリオに帝位を与えるように元老院に要請し、可決させたのである。
ルキウス在位中の共同皇帝にも関わらず墓石にはルキウスの次の第33代と記させ、イゾルテ自身も既に第34代と自称していた。それは慣例を破るゴリ押しである。後にイゾルテの後を継いだマヌエルは彼女の養子としてパレオロゴスの家名を名乗ったため、コルネリオの墓は幻のスキピア王朝の唯一の墓となった。たったの一代限り、しかも共同皇帝で在位期間は1秒にも満たない、まさに幻の王朝である。そしてその幻の栄華と引き換えに、ヘメタル共和制時代から脈々と続いてきた名門スキピア家は、彼を最後に途絶えることになった。
墓石の前に遺灰を埋めながら、イゾルテはその髪を一房切り落とした。
――義兄上は血を残して家名を残さず、私は家名を残して血を残さない。私もいずれあなたの隣に葬られることでしょう。……まるであなたの妻のように。
イゾルテはその髪に小さく口付けをすると、そっと遺灰の脇に添えた。
それから10ヶ月間、イゾルテは喪服を纏い、軍服には必ず喪章を付けた。それは本来義妹のすべきことではなく、妻のなすべき慣習であった。
ヘメタル歴1524年7月、遂にイゾルテ・ペトルス・カエサル・パレオロゴスがプレセンティナの帝位に就いた。彼女の名と彼女の唱える世界秩序はメダストラ世界全域に遍く知れ渡り、ある者は冷笑し、あるものは期待とともにその名を呟いた。
太陽の姫、黄金の魔女の異名はそのままに、彼女はこれ以降「処女帝」とも称されることになる。
注1 共同皇帝とは同時に2人以上の皇帝が立つ制度です。もともと共和制ローマでは執政官が二人でしたし、戦争中は戦争担当と内政担当に役割分担することが良くありました。帝政に移行しても意外と共同皇帝って上手く行ってたみたいなんです。他の国では絶対ありえない話ですけどね! 自分が健在な内に跡継ぎを共同皇帝にして経験を積ませたり、息子二人を共同皇帝にしたりと色んなパターンがありました。そして同じような事がへメタルとプレセンティナにもあったんです。
注2 ローマ帝国には女神ローマ用の玉座があったそうです。また国によっては王様の他に王妃様の玉座もありますよね。
注3 「パックス・ほにゃらら」というのは、パックス・ロマーナやパックス・アメリカーナのように1つの超大国の力によって周辺地域の秩序を形成することを意味します。といってもプレセンティナはそんなに国力も陸軍力もないので、パックス・ブリタニカの方が近いですね。大英帝国がブイブイいわしてた頃のことです。
ちなみに「プレセンティナ」と「ヘメタル」語尾変化がブリタニカみたいに「-ica」 なのかアメリカーナみたいに「-na」なのかよく分からなかったのですが、「パックス・プレセンティナーナ」と「パックス・へメタリカ」ということにしました。
注4 「各人に各人のものを」というのは、ナチスドイツの強制収容所のスローガン……にもなりましたが、元々はローマ法の正義の理念を表す言葉です。時代によって微妙に解釈が違うみたいですけど「お前らは分相応のもので我慢しとけ」ではなく、基本的には自由と財産権を保証する考えです。……たぶん。
「ルールを守る限り、能力と望みに応じて自分の選ぶことをしてよい」と考えて下さい。
注5 ローマ皇帝って、共同皇帝制度とか記録抹消刑があるおかげで誰が何代目だとか良くわからないんですよね。そもそも「何代目」とかいう考えがないのかもしれませんが……。
よく分からないので、ヘメタルとプレセンティナでは共同皇帝の場合同じ代を名乗ることにしました。だから本来ならイゾルテも32代な訳です。ルキウス引退後に、イゾルテとマヌエルが共同皇帝になったら……やっぱり32代? うーん、よく分かりません。その時はその時で考えます。
もともとの構想では、コルネリオは戦場で死ぬはずでした。「ドルクが攻めてきたー、たすけてぇー」って言われて、のこのこ援軍に行って死ぬはずだったのです。(野戦論云々は、援軍を出すか出さないかという形で議論されるはずでした)
で、代わりにイゾルテが担ぎ出されて皇太女になり、皇帝になる、という展開でした。
でもいざ書こうとしたら、旧アルテムス領を制圧された段階でもうイゾルテに逆転の余地はなさそうでした。籠城戦は出来ますけど。
なのでちゃんとまじめに考えた所、焦土戦術+内乱の扇動になりました。それで地図を見てみたら、クリミア半島って実に面白い形をしているではないですか。
こ、これは、罠をしかけるしかないではないではないではないかっ!
すると、サクサク勝っちゃいました。 → コルネリオが死にませんでした。 → イゾルテが皇帝になりませんでした。
あ、あれっ? 第一話で「処女帝」って言っちゃってるのに? それではイカンだろーってことで、もう一回話を練り直しました。
結果的に行き着いたのが、だいたい勝ってるんだけど、やっぱり計算違いがあって(今度こそ)痛い目を見る、という流れでした。
これにて堂々の完結……と言っても誰も納得しないですよね。ちゃんと6章に続きます。……たぶん。
というか、本当はもうちょっと5章が続くつもりで既に書いちゃってるのですが、きりが悪いのでここで終わらせました。
なので次は即位直後の時間からのスタートとなります。
次章は衝撃の超展開(最近コレばっかり)、皇帝になったイゾルテが今度は神(!)になります。
こ、これで贈り物のネット注文が……できませんよ、もちろん。
あ、ちなみに、アテヌイ神裸像とも関係ありません。まあ、似たようなオチですが。




