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太陽の姫と黄金の魔女  作者: 桶屋惣八
第5章 同盟
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開拓村

短いので3連投します。3連投その2

 年を明けた頃から、プレセンティナにも続々と旧アルテムス領からの難民達が流れ込むようになっていた。エウノメアーとの国境にほど近いタラの村の住民たちも12月の初旬に住み慣れた村を離れ、エウノメアー王国との国境の山脈で少し雪に降られたものの、それ以降は雪を見ることもなく1月初めにはプレセンティナとの国境まで辿り着くことが出来た。

 それまでの道のりで、エウノメアー王国領内の農村がいかにも無防備なことと王都エウポリアがマイラに比べて遥かにボロいこと、そしてペルセポリスの第一城壁が崩れたままな事に驚き呆れていた彼等は、ペルセポリスの第二城壁の威容を見て言葉もなかった。街道脇で建設中の支城(と彼等は思ったが、本当はムルス神殿)ですらマイラよりも城壁が高く、巨人の襲来にでも備えているのかと思った程だった。

 だが彼等はそのまま城内に入ることもなく、役人(と彼等は思ったが、農業公社の人なので半分不正解)に郊外の草原に連れて行かれ、コの字型をした真新しい建物に案内された。

「ここがあなた方の村に割り振られた開拓地と建物です。中央は大部屋になっています。かまどや風呂もここにありますので、集会所や食堂にされるといいでしょう。左右は狭いですが20ずつの小部屋になっています。要求があれば木材は用意しますので増築して頂いても結構です。ですがそれまでは、溢れた人は中庭に天幕を張って寝泊まりして下さい」

 ハサールから身を守る必要のあった旧アルテムス領の農村は概して大所帯だった。最低でも200人、大きい村なら1000人を超える村もあり、平均して500から600人といったところだ。タラの村も45世帯591人と村も各世帯も標準的な大所帯だったが、大部屋も使って雑魚寝をすればとりあえず雨露は凌げそうだった。

 村人の中から長老が進み出ると、その役人に恐る恐る問いかけた。

「これは……わざわざ建てて下さったんじゃろうか……?」

「安普請で申し訳ないですが、なにせ数が多すぎて手が足りないんです。ひとまず1200棟作れと言われてるんですけど、まだ400しかできていないんですよ。皆さんには早速お手伝いをお願いしたいのですが、如何でしょう?」

「他の村の連中のためですじゃ、協力するに(やぶさ)かではないのですじゃが……素人じゃよ? 板をまっすぐに切ることも難しいくらいですじゃ」

 彼等とて長らく自給自足の生活を送ってきたのだ。隙間風の吹き込むボロ小屋でいいなら作れなくもないのだが、自分たちだけ綺麗な家を貰っておいて他の村の連中をボロ小屋を住まわせるのも気が引けた。

「ああ、大丈夫です。すでに切ってありますから」

「は?」

「製材所でまとめて規格通りに切り揃えてありますから、土台を固めたら設計図通り組み立てて釘を打つだけです」

農民たちは言葉を失った。その役人の言う建て方は想像を遥かに越えていたのだ。なんせ、鋸が要らないというのだから!

「……プレセンティナではそうやって家を建てるもんなんじゃろか?」

「いえいえ、まさか! イゾルテ殿下が言い出されたらしいですよ。製材所も、この建築方法も」

 それは、贈り物にあった奇妙な形の甲冑の模型{ガンプラ}をヒントにした建設方法だった。その模型は、明らかに鋳造(といっても金属じゃないけど)されたと思われる部品を、設計図通りに繋ぎ合わせるだけで素人でも簡単に組み立てることが出来るのだ。同様に、大量生産された木材を設計図に従って組み立てるだけでいいこの建設方法のお陰で、農業公社の労働者でも長屋を作ることが出来ていた。とはいえ不慣れなために能率も悪く、まだ予定数の半分にも満たないのだ。

「姫さんが……。分かりました、幾らでも協力を惜しまないですじゃ!」


 労働者の数が増え、次第に作業に慣れたこともあって、3月末には1381ヶ村の建物の建設が終了し、およそ1214ヶ村65万人あまりの受け入れが完了していた。予定数よりかなり少ないのは、ホールイ3国がすでに60万あまりを受け入れていたことと、雪が溶け始めてから村を出た者達が未だに移動中だったからだ。そして、彼等を追うように遂にドルク・ハサール同盟軍が動き出していた。

次回からようやく戦争です。驚くべきことに、ドルク軍が活躍します。

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