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太陽の姫と黄金の魔女  作者: 桶屋惣八
第5章 同盟
81/354

工作員D その1

飛び飛びに「その2」「その3」が入るので、「1」ではなく「その1」としました。

工作員は過酷なお仕事です。

 その頃、陸軍をクビになりイゾルテに拾い上げられたダングヴァルトは、プレセンティナから遠く離れたバネィティアの地で危険で過酷なスパイ活動に勤しんでした。

「あらダンさん、お見限りじゃない」

「やあ、ちーちゃん、ごめんごめん、兄貴の使いで急に国に戻されてサ、一昨日帰ってきたばかりなんだヨー」

彼はバネィティアを本拠としならもアプルン王国やディオニソス王国にも足を伸ばしては情報源(おんな)接触(◆◆)しなくてはならないため、表向き実家の商会を手伝っているということにしていた。今回も本当はディオニソス王国の情報源(おんな)の所へ行っていたのである。

「ふーん、で、昨日は他の女の所に行ってたんだ?」

「昨日は陸揚げした商品を配達してたヨー、残念ながら男ばっかりだったナ―」

もちろんこれも嘘であった。スパイに嘘はつきものなのだ。

「で、今日は女の所に配達に行く日だったのね?」

「すぐ来なくて悪かったって。でも、確かに今日は女の所に配達する日だったかな」

「へー、素直に認めるんだ?」

「はい、お土産」

「えっ、私に? これ『黄昏姉妹』の初版本じゃない!! こっちは……『ペスト・キッド』に『メタメロン』? ありがとうダンさん、愛してるわ!」

ダングヴァルトは女に締めあげられ(抱きつかれ)、息を止められた(キスされた)。彼の任務は斯くの如く危険であった。ちなみにお土産は商会の人間に買って来て貰った物だった。


 バネィティアの売春婦というのは恐ろしくピンキリであった。有象無象の水夫相手にベッドの相手をするだけの者から周辺諸国から王や貴族が忍んで来るような者まで、客と金額に合わせて様々なレベルの女たちがいるのだ。軍人だったころのダングヴァルトなら健康管理がされてればいいやと言って5段階評価で「3」くらいの女の所に行っていたところだが、今は仕事の都合で仕方なく「5」の女を利用していた。ここまで行くと見た目が美しいだけではなく、その振る舞いまで貴族顔負けなまでに洗練されていて、その上教養まであった。読み書きはもちろん不自由しないし、政治談義どころか哲学論争にまで参加する女までいた。社交界にも顔が利き、誘われて舞踏会に同伴するのはもちろん、自分で主催して貴族や大商人や各国の大使を自宅に集める者まで居るほどだ。というか、都市貴族の令夫人が(旦那が死んだ後に)娼婦になるケースがあるのだ。金に困ってのことではなくて、暇つぶしにサロンを開放して人を集めている内に、気に入った若い男たちをパクパクとつまみ食いし、じゃあいっそ商売にしちゃおうかしら、というノリで娼婦になるのだ。だから当然女が客を選ぶ。客の方は紹介がなければ客にもなれないし、買ったからといってベットを共に出来るとは限らない。客は女を買うのではなく、女を口説く機会(チャンス)を買うだけ、それがトップレベルの娼婦なのだ。

 そのおかげで馬鹿な男は自分を大きく見せようと、言ってはならないことをついつい喋ってしまいがちだ。だからトップランクの女達はみな情報通である。だがその情報が持つ意味を理解できるだけの知性も持っているのでおいそれとは喋ってくれない。だからダングヴァルトは女たちの元に日参しては貢いでいるのだ。ホント、仕方なくやっているのである。


 この女――チェチーリアも「5」クラスの娼婦なのだが、彼女は叩き上げだった。16歳でこの世界に入った時にはたいして教養もなく世情にも疎かったが、その美貌目当てに常連客が付くと彼等にねだって文字を学び、本を貰い、世の習いを教えてもらった。寝物語で的確なアドバイスが出来るようになると、娼婦としてのランクは一段上がる。それまで主に番頭や船舶士官(甲板長とか掌帆長とか)レベルの客を取っていた彼女は、船持ち商人や船長の相手をするようになった。そしてますます教養の度合いを高め、今では複数の船をやり繰りする大商人でなければおいそれと彼女を買うことは出来ないほどになった。ただやはりその経歴上客はもっぱら商人達で、政界方面の人脈は広くなかった。それはダングヴァルトの目的とは合致しないのだが、10年でトップランクまで駆け上がった彼女は娼婦仲間での評価が高く、彼女たちを通して薄く広く情報が集まってくるのだ。もっともダングヴァルトが彼女の元に通い始めたのはそれが理由という訳ではなく、彼女の人脈の特殊性を知ったのも10回ほど通いつめて彼女を抱いた後のことだったのだが。

 一方チェチーリアの方も、最初はこのいけ好かない外国人を小馬鹿にしていた。外国人の中にはこの街のトップ娼婦がどういうものか分かっていない者が多いのだ。金を払ったのだからと無理やり身体の関係を迫るような無粋な客は、隣室で聞き耳を立てている用心棒が丁重にお引取り願うことになっていた。その時の醜態については口を噤んでおいてあげるのも娼婦たちの暗黙のルールだった。彼女は「男にカチンときてもバラしてはダメよ。だって脅しにならないもの」とも先達から教えられていた。だから最初にダングヴァルトに会った時……

「チェチーリアか、いい名前だね。ちーちゃんって呼ぶことにするよ」

「ち、ちーちゃん!?」

「俺はダンさんでいいから」

「…………」

彼女は10秒で足らずのやりとりでこの男も同類だろうと決めつけ、用心棒に「要注意」の合図を出してしまった。

  しかし彼は彼女に指一本触れようとせず、高い金を払いながらも話だけをして帰っていった。次も、その次も、さらにその次も。さすがにそこまでされると女のプライドが疼きだし、彼女は逆に彼を落とそうと手を変え品を変えて挑発してみた。口調も彼に合わせ昔のように蓮葉(はすっぱ)にした。だが彼は馴れ馴れしいばかりで一向に彼女を求めようとせず、ついには彼女の方から帰ろうとする彼の袖を引いたのだ。すると彼はこれまでのつれない態度が嘘のように、彼女を執拗に求めた。底なしの男というものは稀にいるものだが、それは最後の最後まで愉しめる男だ。だがダングヴァルトは精も根も尽き果てたという有り様になっても、渇きを癒やすように、だが精一杯彼女を悦ばせようと奉仕を続けたのだ。そんな逢瀬を繰り返すうち、彼女は次第に金銭を越えた愛情を彼に感じ始めていた。

 ……だというのに、いきなり姿を消して一月半も音沙汰がなかったのである。ひょっこり訪ねてきた彼に内心では憤懣やるかたなかったのに、彼は少しも悪びれずいつもの様に馴れ馴れしく彼女に接するのだ。何だか怒っていることが馬鹿馬鹿しくなり、彼女は素直に再開を喜ぶことにした。


「俺が居ない間に何か変わったことはあったかい?」

「そうねぇ、アプルンのお客が増えたらしいわ」

「へぇ、アプルンねぇ。向こうから小麦を売りに来た、って事はないんだろ?」

小麦に限らず穀物の売買は、普通買い入れる側が買い取りに赴くものだ。この時代、穀物相場の買い手と売り手では明確な情報格差があり、各地の作付情報を収集している買い手側が圧倒的に有利だった。もちろん、仲買人を立てればその限りではないのだが、仲買人にしてもわざわざ外国まで足を運んで売り込みに来ることもない。ただし、特需があるという情報を得た場合は別だったが。

「商人じゃないわ、騎士様よ。爵位を持った方も来られてるそうよ。私のところには来てないけど」

「騎士ねぇ。俺もちょっと前まで将軍だったんだぜ? 家臣は一人も居なかったけどさ」

「ふふふ、ほんとかしら」

「ホントだって、諸国の使節が見てる前でドルクと戦ったんだ」

「でも負けちゃったんでしょ?」

「ああ、それでこの有り様だ」

ダングヴァルトは肩を竦めた。彼はプレセンティナ陸軍をクビになった元将軍という、ほとんど現実の彼そのものを装っていた。ただし、彼を追放した軍と現政権――特にイゾルテを強く恨んでいるという設定だった。

「姫さんにはこてんぱんに罵られたよ。そしてクビだぜ? ヒデェよなぁ、命がけで戦ったのに。16の小娘に何が分かるんだっつーの」

「姫様ってイゾルテ皇女でしょ? 嫌ってる割には『黄昏姉妹』とか好きじゃない。あれってイゾルテ姫がモデルなんでしょ?」

「だろうね。絶対本人を知ってる奴が書いてるよ、アレ。本人は絶対あの本に腹を立ててるからね、それを想像するのが楽しいんだよ」

「うわぁ、捻くれてるわねぇ。本当は姫様にいやらしい事をしたいのに出来ないから、私で我慢してるんじゃないの? ふんっ」

「そりゃ姫さんも見た目だけはなかなかのモノだけどさ、ちーちゃんには叶わないよ」

「本当かしら? この前来たムルス騎士たちが褒めてたわよ、大層綺麗な方だって」

「ムルス騎士? あんな貧乏人がお前を買ったのか? ……というか、あんな筋肉ダルマを相手にして、お前の体は大丈夫だったのか!?」

本気で心配そうな顔をしたダングヴァルトに、彼女は楽しそうに笑い転げた。

「私は大丈夫よ。ムルス騎士ってたまに来るのよ。ムルス騎士団を退団して仕官先のアプルンやディオニソスに向かう途中に、契約金で女を買っていくの。接待の場合もあるわね。でも何年も女を抱くのを我慢してた人ばかりだから、あっという間に終わっちゃうのよ。主導権さえ握っていれば、あなたの相手よりずっと楽よ」


 他の男の話をされて、ダングヴァルトは微妙な気持ちになった。チェチーリアは彼にとって大勢の情報源(おんな)の一人に過ぎなかったが、特別な一人でもあったのだ。他の情報源(おんな)は仕事優先で選んだのに対して、彼女だけは見た目で選び、そしてその見た目故に彼女には手を出せなかったのだ。……結局抱いちゃったけど。そんな彼女が一見の客に過ぎないムルス騎士を断りもせずに相手にしたと聞かされると、微妙に嫉妬心が疼くのだった。だが遊び人としての見栄から、彼は強がって見せた。

「ふむ、それって名にし負うムルス騎士より、俺のほうが強いってことだよね?」

「ぜんぜん違うわ、ムルス騎士の方が大したこと無いのよ」

「ちぇっ。それで、その大したことのないムルス騎士はどこに仕官したって? アプルン? ディオニソス?」

「今回はみんなアプルンらしいわよ」

その答えに彼は激しい衝撃を受けた。

「なん……だと? 『みんな』と言うことは……3人以上か? 3人以上で寄ってたかってお前を抱いたのか!?」」

色んな意味で興奮したダングヴァルトが立ち上がると、チェチーリアも立ち上がって怒鳴り返した。

「違うわよ! 別々に決まってるでしょ! 私がそんなことする訳……! いえ、一度くらい試してみても……?」

「おいっ!?」

「冗談よ。第一、ムルス騎士相手は絶対無理ね。体力だけは底抜けだから、主導権を手放したら殺されかねないもの。しかも今回は5人もいたし」

「…………」


安心していいのか嫉妬の炎を燃やせばいいのか、彼の心は複雑だった

――一見の客なんか断れよ! しかも5人って……

彼は内心不満に思ったが、彼女が彼等を受け入れたのは彼が姿を消して少しやけになっていたからでもあった。それにムルス騎士たちは彼女を下にも置かない丁重な態度だったので、彼女としても彼等を相手にするのは気分が良かったのだ。第一印象はダングヴァルトとは雲泥の差であった。

「……まあ、いい。とにかく今夜は俺が5人分頑張るから、それで我慢しとけよ」

「何よそれ、私が飢えてるみたいじゃない。あなたこそ船旅で女に飢えてるんでしょう? ムルス騎士もそうだけど、体だけが目的ならもっと安い女が幾らでもいるでしょうに。なんで私の所に来るのかしら?」

チェチーリアは呆れたように呟いたが、それは暗にある言葉の催促だった。ダングヴァルトは勿論彼女の期待通りの言葉を口にした。

「それは勿論、ちーちゃんが綺麗だからだよ」

それは事実ではあったが、彼にとっては最も胸の痛む嘘でもあった。

――それはお前が、小柄で色白で金髪だからだよ。

それが彼が彼女を見初めた理由であり、手が出せなかった理由でもあり、恐らくはムルス騎士たちが通ってくる理由でもあった。頭を振って脳裏に浮かんだ別の女の顔を追い払うと、彼は彼女を抱え上げて寝室へと足を向けた。



 ひとまず二人分くらいの頑張りをみせたダングヴァルトは、荒い息を整えながらベットから立ち上がった。

「水は要るかい?」

「ええ、お願い」

彼は水差しからコップに水を汲むと、一口だけ飲んで残りをチェチーリアに渡した。

「ありがとう」

そして彼は彼女の肌に浮かぶ玉の汗をタオルで丁寧に拭ってやった。チェチーリアはくすぐったそうに笑いながら身を捩った。

「ねえ、いつもより優しくなーい?」

「不本意だなぁ。俺はいつも優しいだろ?」

「さっきはいつもより激しかったわ」

「まあ、一月半ぶりだからなぁ」

嘘であった。本当はたったの2日ぶりであった。

「嘘ばっかり、半月ぶりでしょ。プレセンティナでも遊んで来たんだから」

「あっちの色街は知り合いが多すぎるんだよ。今の俺は顔が出せねーの」

嘘であった。彼は今でも平気で出入りしていた。

「結構不自由なのね」

「まあ、お前を抱けるだけ幸せだと思うしかないよ。囲うほどの金はどうにもならないけどね……」

いつになく寂しげな彼の口調に、彼女は違和感を感じた。

「ひょっとして、妬いてるの? 私がムルス騎士の話をしたから?」

「……分からん。俺はずっと遊び人だったからね。女に浮気されたこともあったけど、そんな時も未練もなくあっさりと別れたもんだよ。でもそれは、金も地位もあったからかもしれないんだ。その気になればいつだってお前みたいな良い女を妻に出来ると思ってたんだ。でも今の俺はさ、遊び人としてじゃなきゃ、お前に指一本触れられないんだよ……」

それは演技ではあったが、彼の心情そのものでもあった。将来が見通せない現在の彼の身分と、故国を遠く離れた地で本心を誰にも打ち明けることの出来ない仕事、そして道具にすぎないはずの情報源(おんな)に嫉妬を感じたことが彼を動揺させていた。二人の間に妙にしんみりした空気が流れた。

「ダンさん……」

「ムルス騎士って奴らは確かに強いよ。でも馬鹿だ。自分一人で戦うことしか考えちゃいないんだよ。兵の差し引きなら絶対に俺の方が役に立つんだ。なのにアプルンは、この時期に無理してムルス騎士なんかをかき集めてやがる。ただでさえ騎士が半減して騎士団がボロボロになってるこの時期にだ。騎士団内部からもそうとう反発もあったはずだぜ? それでもドルクに勇戦したムルス騎士を一人でも多く集めたいって、そりゃ今すぐ戦争始めますって宣言してるようなもんじゃないか!

 ちーちゃん、金に余裕が有ったら穀物の先物か購入権(オプション)を(注1)買っておくといいよ。5倍にはなると思う」


 チェチーリアは目を見張った。寝物語で秘密を囁く男は多いし、自分の見識を誇示しようと予言めいたことを言い出す者もいる。特に彼女の客は商人が多いから、来年はアレが値上がりするとかソレを持っているのなら今のうちに売っておけとか、求めてもいないアドバイスを受けることも多かった。だがダングヴァルトの言葉は商人の勘だとかジンクスだとかいった聞く人によって異なるあやふやな物ではなく、専門家でもない彼女の目から見ても納得できる合理的な推理だった。しかもその根拠となる情報は先ほど彼女が与えたばかりなのだ。

「……自信満々ね。でも、見習い商人を信じていいのかしら?」

「ごめん、ホント言うと5倍ってのは適当。でも戦争が起こるのは、というかアプルンがその気なのは信じても損はないよ」

彼の正直な言葉を聞いて、彼女は少しだけ彼を信じてみようという気になった。

「分かった、買うわ。あなたも買うんでしょ?」

「いや、俺は買えないよ。おれはこの戦に内側から関わりたいんだ。だから信義の問題で先物は買えない。不安なら金を預けるよ。万一損をしたら俺が保証する」

「見習い商人のくせに真面目ねぇ。でも、それなら私に教えて良かったの?」

「俺だって偶には良いところを見せたいのさ。それにムルス騎士のことを教えてくれたのはちーちゃんだからね、その報酬代わりだよ。

 それとついでと言ってはなんだけど、アプルンの騎士連中につなぎを取れないかな?」

「無理ではないけれど、それはそれで今度は私の信義に関わるのよ? あなただって、全然知らない人を私が連れて来られたら嫌でしょう?」

「……まあね。だったら、俺の話を聞かせるだけでいいよ。プレセンティナの将軍が免職(くび)になって流れてきて、毎日グダグダと愚痴ってるってさ」

「それくらいならいいわよ、騎士様の贔屓の娘に頼んであげる。それって全然嘘じゃないし」

「……まあね」

「で、そっちの方の報酬は何をくれるの?」

「……報酬としてもう一人分頑張るよ」

そう言ってダングヴァルトがチェチーリアの肌に手を伸ばすと、彼女はピシャリとその手をはたいた。

「もう、それって報酬になるのかしら?」

「報酬になるよう、精一杯頑張るからさぁ」

「分かったわよ。でも5人分頑張るのは報酬とは別でしょ? ふふふ、あと4人分頑張ってもらうわよ」

「喜んで努めさせていただきますとも、姫様」

まさしく底なしの彼女に呆れながらも、彼は嬉しそうにチェチーリアに覆いかぶさった。

注1 穀物は端から流通先が決まってたりして、大半が穀物市場を通さずに流通している可能性はありますが、相場は間違いなくあったことでしょう。とはいえ現在の感覚でいうところの先物市場があったとは思えませんが、「XX号が運んでくる小麦1tを、100ドゥカートで買い取る権利」というオプションの売り買いは全然ありです。オプション取引は発祥はむちゃむちゃ古くて、古代ギリシャのころからあるそうですから。これは権利を売る側にしてみると、ある種の金融や保険として機能します。

 そして、実際にXX号が到着した時の相場が1t=125ドゥカートだったとすると、権利を使って小麦を買って即座に転売することで25ドゥカート儲けることができます。もともとの権利を5ドゥカートで買っていたとすると、見事に5倍になる訳です。逆に1t=100ドゥカート以下だったら権利を使う意味はありませんから5ドゥカートはドブに捨てたことになります。



名前だけ出た新刊は、こんな感じの内容です。ちなみにペストは流行っていません。


『ペスト・キッド』

 黒死病(ペスト)にかかりながらも奇跡的に助かった少年(キッド)は、失われた人と人のつながりを求めて旅に出る。

 各地で迫害されながらも、彼はついに理解し合える人々と巡り合う。

 だが、そんな幸せも束の間、その人々も次々に黒死病に倒れ、死んでしまう。

 「ああ、なんという不幸だ! 神よ! 何故僕を苦しめる!?」

 彼はまた、人とのつながりを求めて旅に出るのだった。


イゾルテ「いや、神がどうとかじゃなくて、お前が感染(うつ)してるんじゃないのか……?」



『メタメロン』

 ペストの猛威に晒される都市から疎開してきた一人の少女。

 親族も友達もみんな死んじゃって、彼女はショックで引きこもった。

 彼女の部屋からは独り言が聞こえてくるばかり……。


イゾルテ「なぜメタ(1)なんだ。デカ(10)メロンとは言わんけど、せめてエタ()メロンにならなかったのか?」

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