お世話係
ナカザーニヤ作戦は大成功。試験艦キャスパリーグと新型パワードスーツに使われた不可視化技術とステルス技術の有効性は疑うべくも無く、ナカザーニヤ作戦で使われた戦術も今後特殊部隊の戦術に取り入れられる事だろう。合わせてこの分野の研究予算も上がるかもな。
しかし、この作戦とそれを遂行した俺達を地球連邦軍の偉い人達がどう評価するかは別物だ。何せ誰の許可も得ず、ミハイロフ艦長の許可は得たけど、試験用の艦と実験用の試作機で、これまた民間から勝手に徴発した小型核爆弾まで使ってしまっている。特に小型核爆弾については戦時法により穏便な解釈がなされるとは思うけど、ある意味犯罪行為だ。
けしからん!となるか、でかした!となるか。連邦軍の偉い人達からしたら前者だろう。だけど俺達は特殊部隊だ。特殊部隊とは特殊な戦いをする特殊な戦闘力を身に付けた特殊な戦闘員による部隊の事であり、正規部隊とは戦い方が根本的に異なる。
特殊部隊は指揮命令系統から外れた状況で自分達が持つ戦力だけで戦い、目的を達成しなければならない。独自に判断して独自に行動する、そのように考えるよう訓練され、そのように戦えるよう訓練される。それが特殊部隊というものだ。
だから俺達的には指揮命令系統が失われ、正規軍はおろか原隊からも孤立した状況で独自に判断して独自に行動したまでの事。それの一体何が悪いのさ?ってところだ。
まぁ何か偉い人達からいちゃもんを付けられる事はあるかもしれない。だけどそこは特殊部隊の親分、青木大佐が何とかするでしょう。いっつも面倒事を俺に押し付けてくるのだから、たまには俺から面倒事を押し付けたって罰は当たらないよな。それが上司の役割だし、寧ろあの人の事だから戦果を上進して何らかの評価を捥ぎ取るくらいはしそうだけど。
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作戦は大成功だっかけど、世の中兎角イレギュラーは付き物だ。
ナカザーニヤ作戦はアムロイ軍の大型空母に新型パワードスーツを着装した特務隊が上空から侵入して小型核爆弾で轟沈させ、脱出してキャスパリーグに回収される。までは作戦通り、しかもこちらは人員も装備も失われずで完全試合だった訳だけど、空母から爆発寸前に脱出したアムロイ有力氏族の美少女王女と美人侍女という想定外のおまけが付いてきてしまったのだ。
艦内ではこの高貴な捕虜をどう扱うか悩みどころとなった。
23世紀になってさえ同じ地球人類でだって人種や民族が違えば文化やら宗教やら習慣やら民度やらで面倒事が増える。第3次世界大戦の影響で今は昔ほど人権人権と煩い事は言われなくなってはいるけど、だからと言って無視して良い事は無い。
それが異人種、異民族どころか異星人と来たものだ。しかもお姫さま。
幸いな事にアムロイ人と地球人類はその人体構造がほぼ同じであり、摂取する栄養素も同じである事はわかっている。まぁ同じ地球人類でも人種や民族によって消化出来ない食材があったり、アレルギーがあったりするから細か違いはあるだろうけど。
こちらから提供する食事は問題無いだろうという事だった。実際問題は無かった。
『アキ、この料理は美味しいな。何というの?』
夕食時、試験艦キャスパリーグの食堂で捕虜でありアムロイはヤグモ氏族のエリスティ・サフール・ヤグゥモ王女と彼女の侍女であるアスティ・ミラモールさんが夕食を召し上がっている。そして何故かお相伴に預かっている俺。因みに今夜のメニューはハヤシライスである。本当は金曜日だからカレーの予定なところを異星人に香辛料はどうなのか?となってハヤシライスになっている。
『姫さま、食事しながら尋ねるなんてはしたないですよ?』
『良いではないか、ここは王宮ではないのだから。ねぇ、アキ?』
と、唐突に俺に振ってくるエリスティ王女。
『そちらの作法は知らないけど、ここは軍隊だからね。こちらでは問題無いよ』
本当は彼女は王女で俺は将校だから作法に則った食事の仕方が求められるのだろうけど、お互い異星人だし、ここは火星だし。
『ほら、アキもそう言っている』
『アキラ様、姫さまを甘やかさないで下さい』
ドヤ顔で言うエリスティ王女。そして何故か俺に文句を言うアスティ女史。俺に言われても困るんだけどなぁ。どうしてこうなったかなぁ。
どうしてか、俺はこの二人のお世話係になっていた。




