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俺も何か言った方がいいのだろうか?

試験艦キャスパリーグの格納庫ではナカザーニヤ作戦の出撃準備が進められていた。作戦のブリーフィングは既に終わっている。後は俺を含めた隊員が新型パワードスーツを起動させて着装し、キャスパリーグの大型ハッチを開いて降下するだけだ。


格納庫に姿を現した俺に美濃部が自ら基準となって特務隊を整列させる。


「気ぃを〜付けえ!御剣特務隊隊長にぃ、(かしら)ぁ中!」


俺は隊員達から頭中(かしらなか)の敬礼を受けて挙手の敬礼を返す。


「第869特殊任務群特務隊火星派遣分隊、御剣隊長以下20名、事故無し、総員20名!」


美濃部が列から離れて俺の前に立ち、敬礼して報告する。俺が答礼して美濃部は列に戻った。


「せいれ〜つ、休め!」


作戦開始前、或いは戦闘を前にして部隊長が何かしら将兵に言葉を発する。これは古来より続く伝統だ。


かのマケドニア王国のアレキサンダー大王もガウガメラの戦いを前に麾下のギリシャ人将兵へ何かテンションの上がるような言葉を言ったであろうし、カルタゴの名将ハンニバルもカンネーの会戦を前にカルタゴ兵や傭兵達にローマなんか目じゃねえぜ!くらいの事は言ったであろう。


俺も何か言った方がいいのだろうか?そんな柄じゃないんだけど、隊員達の期待に満ちた双眸を見るに何か言わなければならない空気だ。


「これから始めるちっぽけな戦いは誰に命じられたものでもなく、飽くまで俺達が勝手におっ(ぱじ)める私闘のようなものだ。作戦が失敗して俺達が死んでもこの未曾有の星間戦争で誰が省みる事は無く、成功したとしても誰が評価してくれる訳でも無い。そんな戦いだ」


隊員達は固唾を飲んで俺の言葉に集中、当然咳き一つ聞こえない。


「だが侵略者どもをこのままのさばらせておく訳にはいかない。俺達の祖父母が父母が汗水流し、時には血を流して開拓したこの星を土足で踏み躙り、度厚かましくも居座っているアム公共の尻に俺達のキツい一発をぶちかましてやろう。奴等の尻に俺達の名を恐怖と共に刻み込んでやれ、いいか!」


兵どもに下ネタは鉄板だ。隊員達はぶはははと笑うと、「おう‼︎」と一斉に声を合わせて応じる。これで良い。士気は高いな。


「俺からは以上だ。各員の一層奮励に期待する事大である。解散後、直ちにかかれ」


隊員達が一斉に動き出し、実働する分隊のメンバーは新型パワードスーツを着装。


俺も着装を開始。音も無くスーツは全身にフィットする。そしてヘルメットを被ると頸部と接合し顔面も覆われる。一瞬視界が遮られた後にモニター越しに視界が開けた。


両掌を開いて握る。それからラックに掛けてある武器を持って構える。俺が持つのは徹甲弾と小型ミサイルが撃てる多機能ライフル銃だ。


モニターにはスーツAIによるセルフチェックデータが次々と表示されていく。


(異常無し、と)


これから降下する二個分隊は分隊毎に一発ずつの小型核爆弾を携帯し、隊員達はそれぞれに武器を持つ。


「艦長、これより降下します」


俺がミハイロフ艦長に出撃を報告すると、艦長は「ご武運を祈ります」と言ってロシア正教徒らしく右手の3本指で十字を切った。村田技術少佐は合掌して何か口ずさんでいる。あの唇の動きはおそらく「南無八幡大菩薩」だな。


この艦は試験艦だからジャンプマスターはいない。なのでキャスパリーグに残る特務隊員が降下の指示を出す。


キャスパリーグ艦底の大型ハッチが徐々に開き、格納庫内に低気圧の強風が吹き込んだ。


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