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丁々発止

ミハイロフ艦長は面に貼り付けていた笑顔を引っ込めるとじっと俺を見据え、徐に口を開いた。


「確かに大尉が言ったように本艦は敵の大型空母を追尾しています。しかしそれはアムロイと地球連邦軍が交戦状態にある以上当然の事でしょう。本艦は非力ではありますが戦闘艦ですからね」


確かにそう言われてしまえば反論出来ない。


「艦長、それはこの半月ばかりの事だろう?それまではそうではなかった」


「それは特務隊を回収するためアムロイ艦隊との接触を避けていたからで、少佐もご存じでしょう」


村田技術少佐の指摘に剣呑な視線を向ける。


「それは勿論知っているさ。この一ヶ月間の艦長の苦労もね」


「ならば、」


「ならばこの後をどうする?ずっと敵の空母を追尾し続けるのかね?友軍の反攻があるまで」


それは暗に臆病者と言っているようなもので、決して軍人に言って良い言葉じゃない。


村田技術少佐の言葉に眦を上げるミハイロフ艦長。しかし村田技術少佐はミハイロフ艦長の怒気を孕んだ視線を物ともせず話を続ける。


「アムロイとの戦争が始まってからこっち、艦長は為すべき事を為してきた。私も共にこの艦に乗っていたんだ、それは良くわかっているさ。しかし、その間に火星駐留艦隊は全滅し、火星地上軍の戦力も壊滅した」


士官室の空気ぐピンと張り詰める。ミハイロフ艦長から発せられる殺気のためだ。


「村田技術少佐は私達を侮辱するつもりですか?」


艦長に代わり李中尉が村田技術少佐に抗議した。これは言い換えれば「この臆病者、お前が何もしないから味方がやられちまったじゃねえか」という事だ。艦長が怒りのあまり殺気を放つのも仕方が無い。李中尉は副長として艦長が村田技術少佐にとんでもない艦長にあるまじき発言をする前に抗議して気を削いだ。うむ、なかなかやるな。


「無論、そんなつもりは無いさ。私は試験艦キャスパリーグの艦長になったミハイロフ艦長のジレンマを理解していると言いたいのだ」


「…」

「!」

「?」


因みに最初がミハイロフ艦長で次が李中尉、三番目が俺。


どうも士官室にいる四人の中で何もわかっていないのは俺だけのようだ。俺は説明を求めて村田技術少佐に視線を向ける。まあ俺は特殊部隊の隊長な訳だけど、流石にこの雰囲気で艦長や李中尉にそれを求める程の勇気は無いのだ。


「艦長は魚雷艇の艇長上がりの駆逐艦艦長だったのだ。この艦の艦長になる前はね」


俺の教えて視線を受けた村田技術少佐が手短に教えてくれた。


なるほどね。その経歴だと戦闘にはかなり積極的なはずだ。いやいや、好戦的だなんて思っていませんよ?


魚雷艇の艇長にしろ駆逐艦の艦長にしろ、それこそ日清・日露戦争の昔から勇猛果敢さが求められる職だ。それは宇宙時代を迎えた現代だって変わらない。


ミハイロフ艦長にそんな経歴があるという事はそういう為人なのだろう。人は見かけによらないな。


であるならば、ミハイロフ艦長は開戦から味方がアムロイ軍に蹂躙され続けている火星にあってその様を見続け、殆ど武装が無い試験艦の艦長職である我が身をどれだけ歯痒く、どれだけ悔しく思った事だろうか。


「艦長、私もこの作戦を御剣大尉から持ち掛けられた時は何を馬鹿なと思いましたよ。敵の空母に乗り込んで中から破壊するとか正気じゃないってね」


馬鹿な?正気じゃない?酷いな、そんな風に思っていたなんて。


「しかし、と私は思ったんですよ。今までは確かに戦力不足で何も出来なかった。だが今は違う。不可視となるキャスパリーグに飛行可能で同じく不可視となる新型パワードスーツに小型核爆弾。戦意溢れる特殊部隊員に不撓不屈な元駆逐艦艦長。そして今赤道から北半球にかけての空を覆っている大型の低気圧。これだけの条件が現在揃っているのだ、やるなら今しか無いってね」


村田技術少佐はここで言葉を切るとミハイロフ艦長と向き合った。


「どうだろうか、艦長。我々は現状に行き詰まっているのだ。であるならば何かをしなければならないだろう。ここは我々も覚悟を決めて御剣大尉達に賭けてみないか?」


「それは、だからと言って御剣大尉達に犠牲強いて良いという事にはならないでしょう」


犠牲、だと?


「いや、待って下さい。何を失敗前提、戦死前提で話してるんですか?私は失敗するだなんてこれっぽっちも思っていませんよ?」


それまでの村田技術少佐からバトンタッチして再び俺のターンだ。




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