義を見てせざるは勇無き也ってね
結局、村田技術少佐はすっかり作戦立案にはまった。そして更に彼の部下である国防技術研究所陸戦兵器開発チームも巻き込み、俺の案を叩き台とした特務隊と陸戦兵器開発チームによる敵大型空母撃沈作戦が立案された。
その作戦とはこんな感じだ。
目的は火星上空に滞空して地球連邦軍火星地上軍を制圧しつつあるアムロイ軍の大型空母の撃沈、若しくは無力化する事にある。それによって地球連邦軍による火星奪還まで火星地上軍が全滅しないよう時間を稼ぐ訳だね。
滞空する敵大型空母の更に上空に位置した試験艦キャスパリーグから新型パワードスーツを着装した俺達特務隊が反重力飛行ユニットを使って降下する。
ここで使用するのが火星開発公社で接収した大規模土木工事用小型核爆弾。
敵空母の飛行甲板に着地したら艦内(航空機の格納庫が望ましい)に侵入する。そして小型核爆弾を艦内に設置し、時限装置を起動させて反重力飛行ユニットを使って敵空母から離脱。地上に降りたところをキャスパリーグに回収してもらって作戦終了となる。
その頃には時限装置により仕掛けた小型核爆弾が艦内で起爆して敵の大型空母は轟沈している事だろう。
要するに、飛び降りる、着地して爆弾設置、飛び降りる、と作戦内容としてはこれだけなのだ。
トロイカ体制の一角である村田技術少佐が味方に付いた今、次に攻め落とすのはキャスパリーグのサーシャ・ミハイロフ艦長だ。
トロイカ体制とは言っても、それは飽くまで例えであって、軍艦の最高指揮官は艦長である。俺と村田技術少佐が作戦を進言しても艦長がNoと言えば作戦発動は不可能となる。
「艦長がNoって言ったら艦を乗っ取っちまいますか?」
村田技術少佐の元から俺達特務隊の屯所に戻る途中、美濃部が軽い口調で何気に恐ろしい事を口にした。
「馬鹿言え。光子帆船スターライトじゃあるまいし」
「何百年前のアニメですか、古いっすね。じゃあどうします?」
どうします?と訊かれて考える事暫し。
「…枕、とか?」
「うわ、最低だよ、この人」
今は上官とその副官という関係にはなっていても、元々俺と美濃部は学生時代からの友達だ。それだけにこの男もプライベートでは俺に遠慮が無い。今も俺の答えに態とらしく大袈裟にドン引きしている振りだ。ったく、冗談だっていうのによ。
まぁ確かにこの作戦、必ずやらなくてはならない作戦ではない。このままでは火星地上軍司令部は友軍の火星奪還を前に降伏するか全滅するかになるだろう。しかし、試験艦であるキャスパリーグにも、実験部隊として偶々火星に来ていた俺達特務隊にも火星地上軍の指揮下にある訳じゃないから戦う義務は無いと言える。まぁ広義にはキャスパリーグも特務隊も地球連邦軍の部隊だからアムロイと戦わなければならないと言われたらそうだろうけど。
しかし、まぁ、火星駐留艦隊は民間人を守って全滅し、火星地上軍も懸命に侵略者と戦って全滅しようとしているんだ。尤もらしい理由を付けてもそこで反撃出来る能力があるというのに何もしないというのは俺の流儀に反するって事なんだよね。
義を見てせざるは勇無き也って言うだろ?
日本人には共感出来るこの思いだけど、ロシア人の艦長に果たして通じるかな。




