第98話 「姫との会話」
「わかりました。セインセス様。このような感じでよろしかったでしょうか?」
「ええ。とても嬉しいです」
花が咲いたように微笑む姫。
思わず見惚れてしまった。
王女様とある程度砕けて話すのは難しいな。
とりあえず知り合いの貴族に対する態度くらいで行こう。
距離感を詰めてと言われるのは困る。
でも彼女も話し相手には飢えているのかもしれない。
学生じゃ難しいのだろう。
なら身軽な僕が、相手をすべきだろうな。
種類は違っても、孤独なのは彼女も同じなのだろうから。
「もう先ほどの話は広まっているとは、セインセス様の御耳にも入っているだなんて、気恥ずかしい限りです」
「学生は噂話に敏感ですの。例にもれず私も楽しんでおりますわ」
「オジサンは敏感になれるかはわかりませんが。しかし噂は提供できたのでしたら、光栄でございます」
「うふふ。面白い方ですのねマノワールさんは」
口元を抑えて、上品に笑う。
ちょっとした仕草も魅力的だ。
本当の上流階級という事だろう。
「恐縮でございます。学生の頃を思い出します」
「まぁ! 元学園生でしたの? っと言いづらいことをお聞きしてしまいましたか?」
「いえ自分で言ったことですから。昔を思い出します。セインセス様のようにお美しく聡明な方は、目新しいですが」
「まぁ。お上手ですのね」
楚々とした仕草で驚きを表現する姫。
どんな行動も光輝くばかりで、王族としてのオーラが確かにある。
可憐に謙遜するが、それも手慣れている様子。
多くの人にその要旨を褒められているのだろう。
僕のこれも本心だし、お世辞ではないけれど。
「いえいえ。冴えないオッサンです。先ほどは外の世界の話を私に尋ねたいとのことでしたが、今の若い子たちに楽しんで頂けるような話はとても」
「私のような箱入り娘は新鮮ですのよ。冒険者としてのお話などは」
「セインセス様は外遊に赴かれる才媛であると、私のような卑賤の身にも届きますが、そうですね。セインセス様のような王族のお方に楽しんで頂けるかはわかりませんが、少しは話せるつもりです」
「優秀な部下たちが支えてくれてのことです。ええ是非。と予鈴が鳴ってしまいましたね。またお時間のある時にお話しできれば嬉しいです」
清楚にドレスを摘まんで、優雅に礼をするセインセス様。
様になっており、一枚の絵画のような美しさだ。
彼女は非常に優秀なことで有名だ。
国民ならば誰でも知っているくらいの美貌。
彼女を見たことがある平民は王都に住んでいるものくらいだが、口を揃えてその美を称えている。
「そのようにおっしゃって下さり光栄です。こちらこそ是非よろしくお願いいたします。それでは失礼いたします」
「はいマノワール様。ごきげんよう」
授業があるので、クラスの違う僕たちは別れなければならない。
そして俺の後ろ姿に視線を感じながらも、早歩きで退散した。
王女は呟く。
表情を消して、無感動かつ機械的に。
「元学園生で平民とは思えぬ礼儀作法。マノワールという名前と、アクレイ侯爵と似ている容姿。まさかね―――――――」
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