第97話 「セインセス王女との出会い」
あの後は数日平和に過ごせた。
号泣して教室を去ったナルシオは、姿を見せていない。
学生たちは彼がいなくなると、とても楽しそうにしていた。
僕のことを受け入れてくれるいい子たちだ。
彼らの話を聞くと、この学園のことを色々聞けた。
もちろんナルシオのことは、全員が罵詈雑言と愚痴だらけだった。
自分が恥をかいたり嫌なことがあると、自室に引き籠って泣いているようだ。
メンタル弱っ。
「はじめまして。マノワールさん」
「王女殿下。お初にお目にかかります。マノワールと申します」
そんな折に清涼な美声が声をかけられた。
振り返ると何者かわかった。
クラスメイトからも聞いた、この学園で敬意を払うべき人物。
この学園で唯一、学園長ですら政治的に口出しできない、最も高貴な一族の一員。
上品に結ばれたサイドテールが特徴的だが、その存在感は圧巻のもので。
身長は平均的だが、とても恵まれたスタイル。
これまで見た中でも、最高位の美人だ。
僕は廊下の隅の方で片膝をついて、彼女に敬意を表す。
どうやら僕のことを知っているようだが、何を言ってくるのだろうか?
「ああ。そのようなことは、どうかおやめください。ここは中立の学園で、そのようなことはなさらないで頂きたく思います」
「これは失礼をいたしました。王女殿下にお気を揉ませてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
「いえ。学外の立場の差がそうさせてしまったのですから、どうかお気になさらないでくださいませ。学生同士よろしくお願いいたします」
「ありがたき幸せでございます」
そうは言うが、初対面でこうしないわけにはいかない。
絶対にため口など利いてはならない存在だ。
貴族とはわけが違う。
王族に睨まれたら国に居られない。
近隣諸国ですら、指名手配されかねないだろう。
貴族に恨まれるくらいなら、他の領地にでも流れればいい話なのだから。
まぁ戸籍も無くなるから、普通はやらないが。
最悪は冒険者として身を立てられる僕には、あまり気にしなくてもいいことだ。
僕はある事情で戸籍もないわけだしね。
「少しお話をしたかっただけですの。転校生の方から、外の世界のお話を伺いたくて。先ほどの授業のことはお聞きしました。あのような実力をお持ちなのですから、素敵な人なのだと思いまして」
「恐悦至極にございます。王女殿下にお楽しみ頂けるような話はあるかわかりませんが、微力を尽くします」
「ありがとうございます。どうぞ私のことはセインセスと呼んでくださいませ」
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