第96話 「パンチングマシーン」
「さて。先手は僕がやってあげよう。圧倒的な力に心が折れないようにね」
僕を見下しながら、ナルシオは己の力を誇示する。
そして適当なフォームで拳を魔道具に当てた。
だがその速度は尋常ではない。
「この部分に攻撃してください。衝撃は吸収するので結構です」
「わかりましたミーニャ教官。このくらいかな」
パァンッッッッッッ!!!!!
無造作に拳を当てただけで、部屋中に鳴り響くような轟音が鳴り。
衝撃波がこちらまで飛んでくる。
勝ち誇ったような表情で、悠々と僕の横を通り過ぎるナルシオ。
勝利を確信しているようだ。
「手加減してあげた。僕はパンチングマシーン1000キロくらい平気で出すよ? もう体も衰え始めている、君如きでは無理だろう。まぁBランクとして少しはやるみたいだがね」
「その通りだ」
「どうせ仲間から、付与魔法なんかで強化されていたのだろうよ! 卑しい冒険者どもが話を盛るのは常にあった! どうせ馬脚を現すのだろうな」
僕のパーティの実力を決めつけ、小馬鹿にしてくる。
プライドが高い子だな。
冒険者を見下してくるとは、冒険者志望の子たちまでバカにしていることに気が付かないのだろうか?
露骨に嫌悪感や怒りをぶつけられても、わからない様子。
ならその冒険者の力を見せつけるべきかな。
「魔法クラスでこの威力は無理だろう! どうせ乏しいのだろう魔法をせこせこ磨いてくれたまえ! 僕には一生辿り着けないだろうがね!」
「だからこうしよう。アース」
「なんだその汚い土は!!! 気でも狂ったか!!! アハハハハハ!!!!!」
彼の言葉を最後まで聞かないうちに、自宅を建設する。
それを見ながら薄笑いを浮かべて小馬鹿にするナルシオ。
ミーニャは絶凍の視線を送っており、毛嫌いしていることが見て取れた。
こんなくだらないことは、さっさと終わらせるのが吉だ。
散々迷惑をかけられて、気も立っている。
灸を据えてやるため、僕は腕を振りかぶる。
そして豪速で拳が接触した瞬間、空気が爆裂した。
ゴォォォォォッッッッッ!!!!!
ズガァァァァァンッッッッッ!!!!!
「マノワールさん凄い! とってもカッコいいです!」
「まぁこんなものか。でも強度の目算は誤ったな……壊れたら弁償……?」
飛び跳ねながら僕を褒めてくれるオーエラさん。
僕の隣に寄ってきて、腕に抱き着いてきた。
そんなにナルシオのことが気に食わなかったのかな?
クラスメイト達も驚きを隠せないようだ。
その中には感動したように、こぶしを握り締めている者もいる。
あんぐりと口を開けているナルシオ。
間抜けな顔を晒している。
Aランク冒険者の平均ステータス値は、約1000。
僕は自宅に入れば自宅警備員という職業の効果で、防御力なら2000以上のステータスを誇る。
明らかに異常な数値だ。ほとんどの攻撃を無効化できると言っても過言ではない。
「凄いにゃ! 最後に出会った時よりも、さらにステータスが上がっているニャ!」
「……あっ!? すみませんミーニャ先生! 壊しちゃいました!」
「授業の一環ニャ。備品の請求はこちらで申請しておくニャ。ナルシオ関係だから心配いらないニャ!」
何でもないようにミーニャは笑う。
そして機嫌がよさそう。
金髪ナルシ男の鼻を明かしたことになるから、彼女も喜んでいるのだろう。
ってナルシオ関係だといいんだ。
いつもどれだけ問題を起こしているんだこの少年は?
「ななななななんだそれは!?!?!? 魔法職じゃなかったのか!?!?!?」
「そんなこと一言も言ってないにゃ。っていうかマノワールさんの実力は、今までの授業の中でこれだけ言っていたのに。詳しく知らないのは、お前が授業も聞かないし友達いないからニャ」
「グギギギギギギ!?」
「っていうか魔法職にタイマンしてマウントとるとか、マジで意味わからんニャ。お前レベルしかしない事にゃ。そんなんだからお前クラスどころか、社交界でも遠巻きにされていることを自覚すべきニャ」
うわ本当に嫌いなんだな。
快活な丁寧に接するミーニャさんが、ここまで辛辣にするとは。
でもこの子の授業を担当してきたのだから、ストレスが溜まっていたのだろう。
今みたいに授業の邪魔とかされたんだろうなぁ。
「うぉぉぉぉぉーーーーーん!?!?!?」
「って授業から勝手に逃げない……ホント何しに来たんだニャ。時間の無駄だったニャ。それじゃ邪魔された授業を再開するニャ。地道な努力が強くなる近道ニャ!」
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