第94話 「英雄ナルシオ」
「ナルシオ君。この方は学園長がお連れし、入学試験を突破した学生です」
高笑いしながら後方の席でふんぞり返る金髪の少年。
非常に整った顔立ちで、いかにも貴族子女といった風貌だ。
この子が貴族の代表格のようだ。
しかし……いきなり心無い言葉で、ケンカを売られるとは。
「田舎者の平民ども! それもこんなオッサン! 君のような者には魔法学園は相応しくないと知ったほうがいいね!」
特権意識の塊である貴族の子のようだ。
ここには平民の子もいるだろうに、よくやるよ。
「こんな冴えないオッサンごときが、転入に足る実力を備えているはずがない。つまり不正だろうね」
「困った子だナルシオ君。不正試験を学園が行い、またはマノワール殿の不正に気付かず突破させた、という風に受け取れるが?」
こんな態度をとっているのに、このナルシオという男に余り怒らない。
教師すらこの子には強く出れないと見える。
そんなに権力があるのか?
家が相当の爵位だとか、政治的事情があると直感する。
「なんだね教師風情が! 僕はこの国の英雄だぞ! 僕が正しいと言ったことは正しいんだ!」
「ナルシオ君! 君は学園と本格的に対立したいのかね!?」
「英雄、ね」
小さな声で呟き思考する。
このナルシオという少年は、武功を立てたという事か。
英雄ナルシオとは、僕も最近聞いたことがある。
魔物相手に腕試しする貴族も当然いる。
確か彼は強力な魔物を討伐したと、噂になっていたな。
その中で彼は頭抜けた才覚を有し、国家から認められるほどの実力を持っているという事か。
それは学園も持て余すな。
というかそれで魔法クラスに入っている時点で、自己顕示欲と承認欲求も高そうだ。
って僕には関係ないが。
僕は普通の平民とは事情が違うし、身を立てようという目論見もない。
敵対するのは目に見えているし、別に何をされてもひどい目に慣れた僕は痛くも痒くもない。
「まぁまぁ。そんな子は無視して、授業を進めましょう。他の学生が迷惑がっているのも気づけない、自分が話に付き合ってもらっていることにも気づけない子ですから。」
「マノワールさん!」
「どうせ僕たちはこの学園にずっといるわけじゃないんだ。だったら学園に恩返しするのも大事だよ。学園長もこの子には困っているだろうしね。魔法クラスはここしかないというのは、恐らくあの子のせいで逃げた子が多いのだろう」
オーエラさんに心配されるが、構わない。
極論誰とも友達に成らなくてもいいのだから。
僕たちは保護と勉強のためにここにいるのであって、クラスに馴染んで楽しく暮らすことが目的ではない。
いつの時代もこういう子はいるんだな。
大人としての責任か。
「ふぎぎぎぎぎ!?!?!? 何だこの失礼なオッサンは!? あらゆる要素で僕に負けている冴えないオッサンが、なんて口をきいているんだ!!!」
「人として一番大事な資質に欠けている君に言われてもね。そんなことを言わない他の子よりも、自分が劣っていることを自覚すべきだよ」
このくらいの言葉で、そんなに怒るとは相当に甘やかされてきたのだろう。
戦場でも揉まれていないらしい。
それは実力が高いということを意味するが、別に学生間では関係はな―――――――
「―――――――どうやら僕の力を思い知らせてあげないと、いけないみたいだね。次の授業で勝負だ!!!!!」
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