第86話 「冷酷な貴族たちによる襲撃」
その言葉は唐突だった。
それを発したのは、壮年の貴族。
僕達を冷たく見据えている。
「なっ!? 病み上がりの恩人に向かって、それもあのような魔物を討伐した英雄に向かって、何を言うか貴様!!!」
「いえ。承知いたしました貴族様」
「マノワール!?」
抗議の大声を出すエルマージ。
傷口は痛むが、気合で起き上がる。
ステータスを見れば、もう死に体だとわかると半ば現実逃避する。
そういえばレベルアップしていたんだな。
レベル70近くともなればAランク上位で、世界でも最高峰だろう。
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【マノワール・オッサツイホ】
職業:自宅警備員
Lv :69
HP :67/845
MP :103/737
攻撃力:208(×0.4) 実数値521
防御力:628(×0.9) 実数値698
魔法力:229(×0.4) 実数値572
素早さ:199(×0.4) 実数値497
スキル
数学lv34
科学lv37
社会学lv24
礼法lv26
芸術lv17
舞踏lv15
製作lv42
建築lv55
土魔法lv61
投擲lx51
剣術lv39
体術lv34
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「無茶だお兄ちゃん!? 生きているのが奇跡だったんだぞ!」
「そうですよ! 歩いたら死んじゃう!? そんなのダメですからね!」
「ベットに戻ってください!? ご自分を大事にしてください!!!」
「黙れよ平民ども。チッ……これだから卑しい下民は嫌なんだ。猿が」
罵倒をする貴族。
ここで神経を逆撫でするのは得策ではない。
歯向かうのは無謀だ。
みんなを護るためにも、土下座してでも従わないといけない。
治るまでは忍従に甘んじるべきだ。
「今すぐに来い。話はすぐに終わる。その恰好でいい」
「過分なお気遣いを賜り、ありがたき幸せにございます」
「…………」
黙って背中を向けられる。
僕は起き上がるがまともに立てない。
女性たちに支えられながら、歩いていく。
目的地に到着すれば、つまらなそうに屯す貴族たち。
僕たちを見ると不機嫌そうに表情を歪めた。
どうやら歓迎されていないようだな。
「それで? 魔物、それも魔王幹部の襲撃があっただと? どこにそんな証拠がある? 言ってみろ」
「これだけの証拠を見て、まだいうか!!!」
エルマージがアイテムボックスから、あの魔王幹部を名乗る魔物の死骸を取り出す、
凄まじい魔力が立ち込める。
あの時倒せたのが奇跡と思えるほどだ。
「……ほう? 強そうな魔物だ。どこからか調達したのだな。盗みでもしたのか?」
「なっ!? ふざけるなよ!!!」
あまりの放言に、仲間全員が固まった。
エルマージが怒気を露わにして、貴族たちに凄む。
続いてオーエラさんが論理的に諭そうと、ヴェンリノーブル侯爵の名前を引き合いに出す。
だがこの場にいない彼の言葉は、彼らには何ら響かなかったようだ。
「私の判断に逆らうことは許さん。高位貴族の言う事は絶対だ」
「なっ!? 私たちはヴェンリノーブル侯爵様に命じられ、任務を果たしたのですよ!!!」
「黙れっ!!! 平民風情が! それも女風情が、目上の人間に歯向かうなっっっ!!!」
封建社会において、身分秩序は絶対。
どんな変な噂を流されても、下位の者は従うしかないのだ。
汚職貴族だとしても追放されることは防げないだろう。
自分たちが無位無官の平民に過ぎないからだ。
ずっと黙って聞いていたコックロは、騎士として従うしかなかった。
俯いて、唇を噛みしめている。
彼女は長年こんな思いをしてきたのだろう。
深紅の長髪を持った女性の形のいい口元からは、赤が滴り落ちた。
「お前たちは虚偽の報告をし、要塞線を破壊した罪で捕える! ヴェンリノーブル侯爵も目を覚まして下さるだろう」
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