第78話 「コックロの夢」
サンシータに搾取されていた哀れなる土木作業員たち。
ある二人の人物を作業現場にて見つけたからか、歓迎の声を上げる。
ここまで言われるのは恥ずかしいな。
コックロが成し遂げたことなんだから。
「コックロ様! マノワールさん! あなたたちのおかげで私たちは、正当な給金を全額頂けることになりました!」
「アンタたちは俺たちの救い主だぜ!」
「アハハ……僕は大したことをしてませんよ」
「騎士として領民を護っただけだ。気にするな」
「マノワールさんとコックロさん、大人気ですね!」
騎士らしく真面目に答えるコックロ。
しかしその耳は真っ赤に染まっている。
いつもわかりやすい子だな。
子どもの頃に面倒を見てきた僕には、彼女の内心がすぐにわかる。
「ありがとうお兄ちゃん。本当に感謝している」
「どうしたんだい君まで改まって?」
「私は騎士として人々を救いたかったのかもしれない。強くなりたかったのは、きっとそうなんだ」
持ち場について、仲間たちだけになると僕に感謝を述べてきた。
隣にいたオーエラさんは何故か、そっと無言で離れていった。
「私は……大好きなお兄ちゃんがアイツらに虐められているのを止めたくて、強くて優しい騎士になりたかったんだ。大切な人を護れなくて、止めようとした私まで意地悪をされて、悔しかった。本当に情けなかったんだ」
「コックロ……ごめんな……」
突然明かされた、彼女の内心。
僕も自分が情けなかった。
僕が弱いせいで、彼女を思い詰めさせてしまったのかもしれない。
そう思うと胸が張り裂けそうになった。
「お兄ちゃんが謝る事じゃない! もちろん剣が得意だったのもあって、騎士にもなりたかった。カッコいいからな。でもみんなにはバカにされたよ。女じゃ男には勝てないって」
女性は男性より体力に劣るという、普遍的事実。
騎士という過酷の極致たる肉体労働で、ついていける女性はごく少数だ。
それでもこの子はめげなかった。
この不平等な世界で、自らを信じて進み続けて夢を手にしたのだ。
僕とは対照的に。
「でもお兄ちゃんはバカにしなかった。お兄ちゃんは自宅警備員って職業なのに、いろんなことを努力していて。それを見て私は勇気を貰ったんだ」
「……」
僕も同じだ。
生まれつきのハンデを背負い、それでも歯を食いしばって耐えていた。
20になる頃には折れてしまっていたけれど。
職業のクラスチェンジを夢見て、あのことは誰よりも頑張っていたんだ。
いつか報われることを信じて。
「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんと―――――――」
「―――――――魔物です! マノワールさん!」
「北方向から魔物だ! お前たち! 今すぐに逃げるんだ!」
ニンメイちゃんの伝令が、突然訪れる。
そしてエルマージの避難誘導が、作業員たちを的確に安全地帯へと誘う。
一気に意識が現実に引き戻される。
要塞線の向こう側を見ると、無数の黒い影がこちらへと向かっていた。
魔物が接近していたのだ。
「なにっ!? なんだあの数は!?」
「「「「「グォォォォォオオオオオッッッッッ!!!!!」」」」」
凄まじい咆哮をあげて襲来してきたその中より、一際大きな影が差し迫る。
物凄い速さで、僕達の目の前まで現れた。
その正体は告知される。
「――――――魔王軍幹部として人間どもをこの地から掃討する。貴様らは一つの例外なく、すべて死ね」
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