第77話 「その後のサンシータと謎の人物の密談」
車椅子に乗っている人物が、ヒステリックに叫んでいる。
彼はサンシータ。
緊急治療により一命をとりとめた、ヴェンリノーブル侯爵家騎士だ。
「あいつら絶対に許さない!」
体を震わせながら、恨みを募らせている。
この騎士の男は悔しそうに叫んだ。
周囲には貴族と思われる身形のいい者たちが、大勢屯していた。
この貴族屋敷の一室と思われる場所には、同情や愉悦の視線が飛び交っている。
「俺はインポになってしまったんだぞ!?!?!?」
男としての象徴の、悲しき爆散。
彼のプライドは、股間と共に粉砕されてしまったのだ。
「ただでさえ少子化で悩んでいるのに! それどころか俺の家門は断絶してしまうかもしれないんだぞ! 俺の夢も希望も、女性との楽しみもここで終わりかもしれないんだ! 貴族としての楽しみと役目が果たせないなんて、こんな生き地獄あるかぁぁぁ!? 人道に対する罪だぞ!?」
「お困りのようだねサンシータ卿」
「そうだ! インポ治療に加え、賄賂までなくなって散々だ!」
彼の賄賂ルートは潰されてしまったようだ。
定期的に同僚であるコックロが見回りをしている。
もはや領民の支持も完全に取られてしまった。
これでは出世にも響くことであろう。
「それは困ったね。君の好きなピザも毎日食べられないじゃないか。このままでは例の計画も予定通りに運べそうにはない」
「ハンバーガーだ!!! クソっ! 忌々しい!」
「……」
怒りを露わにするサンシータに、黙り込んだ謎の顔まで覆い隠れたローブ姿の男。
さすがにハンバーガーを食べられないのは、可哀そうだと思っているのかもしれない。
しかし例の計画という気になるワードが出てきた。
彼らは、このローブの男は何を企んでいるのだろうか?
「しかしあのコックロと、マノワールとかいう冒険者たち。気づかれては邪魔になりましたな」
「あの脳筋女騎士だけなら、どうとでもなったものを。あの者たちのせいで、我らの計画は台無しだ」
計画という事を口にした汚職貴族。
彼らはこの領地で、さらに不穏なる何かを企んでいるのかもしれない。
そこに更に声をかける者たちが現れる。
その出で立ちは高貴なるもので、この領地でも高位のものとわかる。
「――――――まずい!? ヴェンリノーブル侯爵に気づかれたようだ!?」
「何でも魔物に襲撃されていたところを、マノワールとか言う冒険者に救われたらしい! そこからザマーバッカーのギルドでの汚職を知って、ヴェンリノーブル侯爵はこの領でも調査を始めたとか!?」
そこに焦った体で、駆け込んできた高貴な見た目の男女2人。
監査の手が入ったことを、深く懸念している様子である。
「ダンジョンを踏破したという奴らか、話は聞いている。向こうはそのおかげで大変みたいだからな」
「下々の民の出のくせに生意気だ。俺たちの崇高な権利を暴こうだなんて、万死に値する!!!」
サンシータと彼と話していた謎の男も、首肯して同意する。
崇高な権利とは言うが、実態はただの薄汚い汚職だ。
それを暴露しようとするマノワールたちに、敵意が集まっていく。
このままでは彼らは何かしらの行動を起こしかねない。
「あのコックロ。少々目立ち過ぎだ。ヴェンリノーブル様はあれを重用しているから悪いのだ」
「外様の分際で、我々代々仕える真の貴族たちを邪魔しようなど。彼女には退場してもらわないとなりません」
マノワールのはとこの出世を妬む領主の部下も、これに加担するようだ。
汚職貴族が隠蔽していたという事らしい。
「あの要塞線は未完成。そこに魔物たちを引き寄せて、コックロたちを殺させればよろしい。そうすれば汚職はバレないし、ギルドの調査に乗り出す余裕もなくなるでしょう」
「調査する人間を始末し、要塞線の修復にかかずらわせるということですな。ですが肝心の魔物はどうするので?」
作戦自体は巧妙な計画。
しかしそれを成し遂げる存在、魔物をどうやって都合よく使うのか。
それを可能とする男がいた。
不気味な髑髏の装飾が施された指輪をつけていた、サンシータを唆した謎の男。
彼は指に嵌めたそれを掲げ、その場にいる者たちに告げた。
「ご安心ください。ある方法があるのですよ。この私が相応しき舞台を用意してみせましょう」
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