第75話 「女騎士、宣戦す」
罪なき人々から不当に金銭を徴収する者を、コックロは糾弾する。
めんどくさそうに首だけこちらに向けたサンシータは、気だるげに彼女を小馬鹿にした。
「なんだまたお前か。そういえば珍しいな。こんなところまで来ているとは? この場は俺が担当している。女は家に籠って、剣じゃなくて包丁でも使っていろ。それを侯爵も望んでおられるから、お前は護衛騎士として屋敷詰めなのだ」
「怖気づいたかミソジニスト弱者騎士男性!!! 出世争いで私に負けそうだからと、小遣い稼ぎばかりしてるから評価されないんだよ! まじめに仕事をするのが出世への近道だぞ! だから給料低いんだよお前は!!!」
火力高い煽りをする、深紅のポニーテールを揺らす女性。
僕のはとこは相当に、このイケメン騎士が嫌いなようだ。
額に青筋を立てるサンシータ。
そして嘲笑しながら女性蔑視発言を次々と口にする。
「チギュドーみてぇなカス陰キャと、俺様を一緒にしてんじゃねぇよ!!! 王国最高の剣の天才と謳われてきた俺と、お前は忌々しいが互角。それをこの雑魚領民どもを守りながら、戦えるとでも思ってるのか? これだから女はバカなんだよ!」
「貴様っ! 女性差別は公爵は厳しいと知ってのことか! 田舎では女性が働かないと、やっていけないんだぞ! これ以上女性がバカにされて、この田舎から出ていけばどうなる! 嫁不足がさらに悪化するぞ! お前の領だって、少子化問題で悩んでいると酒の席で騒いでいただろう!!!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ小賢しいマメ知識で、いつも俺にマウントを取りやがって!? そういうところが気に食わないんだよ!!!」
「豆知識……?」
可哀そうに。態度はでかいが、学がないんだな。
人口動態や雇用統計という概念すら知らなそうだ。
僕は無教養に憐憫を覚えながら、話を聞く。
というか出世のことについては、サンシータはまったく言い返さないという事は……
その時点で周囲の視線に気づけないただのパワハラ野郎だと、自ら吹聴しているようなものだ。
「アース! コックロ! 僕がみんなを護る! その間に!」
「お兄ちゃん! ありがとう!」
僕は土魔法でドームのように二人を囲う。
都合がいいとばかりにサンシータは鼻で笑った。
「はっ! 一騎打ちか。いいだろう。護衛みてぇな禄に戦いもしない給料泥棒と、強者男性との差を思い知らせてやるよ。女の楽な仕事なんぞで、腕が鈍っていなければの話だがなぁっ!!!」
「護衛が戦うような事態があってたまるか! お前そもそも護衛になって出世コースに乗りたいと言っていただろうが!!! その腐った性根、この私が叩き直してくれる! そして私は汚職無能差別主義者男性政治家に出世争いで勝ち、女性活躍を推進してみせる!!!」
二人の間に戦雲が垂れこめる。
激しい闘気が空間を満たし、破裂した。
「はぁっ!!!!!」
「おぉぉぉっっっ!!!」
鉄塊を振りまわしているとは思えない、常人では反応さえできないだろう剣捌き。
それが連撃となり、金属の協奏が幾重にも乱舞する。
一太刀振る度に、砂塵が吹き荒れる。
自宅に入っていなくともBランク下位の実力はあるだろう僕すら、目で追うのがやっと。
現場作業員の方たちは、風圧に耐えるだけで精一杯だ。
「(この二人―――――――強い!)」
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