第72話 「オーエラの仕事」
そんなこんなでオーエラさんにも、今僕たちが直面している事情を説明する。
結構危険も伴う事だが、快諾してくれた。
「事情は分かりました! 並行してサンシータの情報を集めます! 証拠があれば、芋づる式に発覚するはずです! こういうことには慣れております!」
「頼もしいな」
「はい! ギルドの汚職の証拠も、私は全部掴んでセインセス王女殿下に引き渡しましたので! ギルドの汚職職員はあの時になって必死に隠しておりましたが、それらは既に全部私が仕込んだダミー書類でした! いざという時のために、数年かけて準備してました!」
「す、すごいなオーエラ」
黒い。
意外と黒いよオーエラさん。
こんなに可愛らしくクリクリとした、まん丸の純粋な目をしているのに。
見た目は可憐で清楚な女性なのに、さっき語った事がまるで信じられないよ。
エルマージも微妙に引いている。
褒め言葉と受け取ったのか、照れてモジモジしている銀髪の元ギルド受付嬢の女性。
これは自衛の範囲で、いつもは明るくて優しい女性なんだ。
決して思い込もうとしている訳ではないはず。
「こちらがマノワールさんの担当地区となります。それではよろしくお願いします」
「わかりましたジュクレンコさん。それじゃ僕は建設作業をするから、皆には護衛を頼みたい。何かあったら呼んでくれニンメイちゃん」
「お任せあれです!」
「騎士として任を果たそう」
ニンメイちゃんとエルマージは索敵。
一応は客人扱いでもある僕の近くで、コックロは護衛だ。
オーエラさんは安全な基地の中で書類仕事。
彼女も負担は大きいが、やっていることは他言できないことなので隔離しないとな。
ちなみにサンシータはサボって日向ぼっこしながら寝ている。
本当にムカつく顔しているなコイツ。
「ふぅ。一休みだな。やっぱり体力が上がっただけでも効率が違う。若返った気分だよ」
「凄いな……お兄ちゃん……じゃなくてマノワール殿はいつもこんなことをやっていたんだな」
「もうお兄ちゃん呼びでいいと思うよ……既にこの現場の人達にもバレてるから」
「あうぅ……」
真面目一徹の厳しそうな美人だが、結構ポンコツなんだよなこの子。
それは今でも変わらない様子。
しゅんとすると叱られた大型犬のようだ。
「君と別れてから、土木作業員をやっていたんだ。それくらいしか仕事もなかったからね」
「キツくはなかったのか? お兄ちゃんは字も書けるし、計算だって……」
「そういう仕事はコネがないと無理なんだよ。信頼性が一番大事なんだ。この仕事も慣れたころには、いつの間にか好きになってた。今となっては趣味みたいなものさ」
世の中やっぱりコネが一番だ。
頑張っていた頃は社会のあるべき姿なんて、思い描いていたけど。
現実のことなんて、何一つわかっちゃいなかった。
誰も他人がどんな人かなんて、すぐにわかる人はいない。
貴族として生活していた頃の方が、楽に暮らしていたなんて思えなかった。
自分ならすぐに仕事を取って、バンバン稼げると思い込んでいた。
何も言わずに家出して、無戸籍になったのも大きいけれど……
今となってはいい思い出だけどね。
「そうか……私の剣のようなものだな」
「コックロは昔から男顔負けに、剣がうまかったからなぁ」
昔のことを思い出す。
実家にいたころは忌まわしき記憶だが、この子とあともう一人の女の子。
彼女たちとの思い出は大切な輝く過去だ。
「あの頃ですら大人の男に勝っていたのだから、今は物凄い剣士なんだろう」
「私などは大したものではない。若い頃に家を飛び出して己の力を試そうとして、広い世界で叩きのめされたことは山ほどあった。色々な意味でな」
「君も色々あったんだろうな……剣は諦めてしまったのかい?」
あれだけ打ち込んでいた人生の目標となるもの。
女の子でも男に勝てると息巻いて、修行を熱心にしていたからな。
僕がいなくなった後、山にでも籠ったり。
諸国遍歴でもしているのかと思ったが、まさか騎士になっていたとは。
だが人が変わるのは当たり前だ。
彼女ももう子どもではない。
いつの間にか大人になっていた幼馴染は、柔らかい笑みを浮かべながら次のように言った
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