第68話 「地獄のような女子会トーク」
「あぁもう……既に貴族籍はないと思うけれどね。って隠してたのに言わないでくれよコックロ」
「あっ……すまん!? 本当に申し訳ない!? 酒のせいか口が滑った」
あたふたとしているコックロ。
ドジなところがあるのも変わらないな。
「別にいいよ。もう昔のことだし、僕自身もう関係のないことだ」
「いやお兄ちゃんは……いや、ここでする話じゃないか」
散々大喧嘩して、そのまま出ていった過去の僕。
俺のことを毛嫌いしていた兄弟たちは、もう当主の座をあの子に奪われたと風の噂で聞いたし。
僕の貴族籍を残しておく意味もない。
従妹のあの子も、嬉々として僕の生きた証を消したことだろう。
「道理で紳士的で学があると……! お名前も貴族様みたいだと思ってたのは、そんな訳だったのですね」
「こんな冴えないオッサンを紳士って」
余りに似合わない表現に、頬が引き攣る。
もう頭の中身は完全に平民だ。
「マノワールさんを知れば、粗野でデリカシーもない、テーブルマナーが汚い男たちなんて目に入りませんよ!」
「言い過ぎだよ……取引先の商人の人とかいたでしょ」
「あんな金儲けのことばかりしか話さない方々、恋愛対象になりませんよ! 女性の好きそうなものを見繕って進めたりするところも、手慣れすぎていて信用なりません!」
僕なんて全然すごくないし、どれも気をつければ誰だってできることだ。
まぁショワジ組の奴らや、冒険者の人達は見るに堪えないのも多かったけれども……
「同感だ。貴族男も鼻持ちならない奴らばかりだ。自慢話ばかりして、政敵となり得る周囲の人間を蹴落とすことしか考えていない。それから結婚話なんかから逃げてばかりいたら、このざまだよ」
「何を言っているんだ。こんなに美しく聡明で、騎士の鑑とも称せる人格の君を好きにならない男がいたら、それこそ嘘だ。コックロは自分の魅力に自信を持つべきだよ」
「お兄ちゃんという奴は……いつもそうやって!」
顔を真っ赤にさせたコックロ。
いつも怒るとこうなるんだよな。
褒めたつもりだったが、嘘くさかったのだろうか?
何が悪かったのか、なぜ怒るのかわからない。
気に障るようなことは言ってないはずなのに……
きっと複雑な女心を解していないから、この年まで女っ気が……
「もっ……もういいだろう! この話はやめだ!!!」
「マノワールさんは罪な人ですね……多分昔から……」
「罪を犯したの!? まさか僕が女性と話すこと自体が、罪なまであるの!?」
衝撃的事実に泣きそうになる。
何故か呆れたように首を振る女性陣。
常識なまでと言っているみたいな仕草をされてしまった。
そうして僕は居づらい酒の席から、そそくさと逃げ出す。
あまりに厳しい世界に背を向け、部屋に戻ろうと階段を上る。
世間は冴えないオッサンに冷たすぎる。
もう女性はこりごりだよ……
「――――――ところでマノワールさんのことみんな好きなんですよね?」
「なななななな何を言うかニンメイ! え? まさか私だけじゃなく、皆も番としてマノワールを?」
「わわわわ私が久しぶりに会ったマノワールお兄ちゃんを、好きなわけないっ!? そりゃこの年まで彼氏もいたことないけど、それとは別なんだからなっ!?」
「はい。かなりわかりやすいと思いますよ……マノワールさんが鈍感すぎるだけです……」
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