第67話 「生き別れのはとこ」
「ありがたきお話です。ぜひよろしくお願いいたします」
「うむ。こちらこそよろしく頼む。それでは失礼する」
足早に離席したヴェンリノーブル侯爵。
彼も大変だな。
黙って同席していたコックロも席を立って、頭を下げた。
凛々しい顔立ちは、申し訳なさそうになっている。
「主人が失礼をした。謹んでお詫び申し上げる」
「いえ。お気になさらず。お役目が最も大切なことは国民として理解しております」
「ありがたい。深く感謝を」
コックロはそう言うと僕と目も合わさず、モジモジしている。
昔の姿と重なった。
意外と内気なところがあるんだよな。
「昔はお兄ちゃんお兄ちゃんといって、ついて来ていたのになぁ」
「なっ……!? 昔話はいいだろう!?」
「あはは……っと失礼をば」
「いえ当主様のご客人なのだから、砕けた対応で構わない。何より旧知の仲であるのだから、遠慮しないでくれ」
「そう……か……わかったよ」
僕のはとこは相変わらず真面目だ。
でも和やかな雰囲気になった。
ちょっと気後れするが、遠慮なくそうさせて頂こう。
僕たちは世間話に興じる。
最初はぎこちなかったが、積もる話があったのですぐに緊張は解けた。
そんな折にニンメイちゃんが、ある質問をしてきた。
「コックロさん。マノワールさんの昔のお話を聞かせて頂けませんか?」
「私も聞いてみたい」
「構わない。何が聞きたい?」
「ちょっと恥ずかしいんだけど!?」
抗議するが一顧だにせず、話し込む女性陣。
女性が集まると、男はこうも肩身が狭いか。
「だってマノワールさん子ども時代の話を、全然しないんですもん」
「それには理由があるからな。私からは話せるだけ話そう」
ニンメイちゃんの言葉を聞くや否や、目配せしてくる。
彼女も察してくれているようだ。
僕も聞かれたい話ではないので、少しだけ頷いて返した。
「そうだな。いつも貧乏クジばかり引いているような、お人よしの子だったよ」
「今と同じですね! 全然変わらないってことです!」
「ひどいよ二人とも……自覚はしているけども」
なんでこんな星の元に生まれついてしまったのか。
今は充実しているからいいけど。
もうすぐ安定した生活を営めそうだから、これ以上は望むべくもない。
「そんなところが好きなのだけれどな。お兄ちゃんを狙う女は意外といたぞ。ステータスは低いとはいえ、努力家かつ小器用で能力も高かったし」
「えっ!? 何それ揶揄ってるの!? 出来損ないって有名だったじゃん!」
「こういう自己評価がやけに低いのは、昔からの経験が元だったという事かな」
エルマージも同意している。
女性陣の共感がなんかすごい。
本当に今でも大したことがなさすぎる、どうしようもないオッサンなんだけれどな。
「それをオッサツイホ侯爵家から冷遇されて、出奔してしまって……もう二度と会えないかと思っていた」
領主の騎士である、昔の幼馴染はしみじみと呟く。
その声は少し震えている。
はとこでもある、僕なんかに良くしてくれていた優しい子。
きっと心配させてしまい、今でも悲しませてしまっているのだろう。
「って……ええっ!? マノワールさんって貴族だったんですか!?!?!?」
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