第63話 「ヴェンリノーブル侯爵」
「改めましてマノワールと申します。領主様でいらっしゃいましたか! 私たちも仕事探しのため、丁度そちらに向かっていたところです」
「本当か! 偶然もあったものだな! お前たちのような猛者が来てくれるならば、これ以上のことはないぞ! 今晩は我が屋敷で歓待させてくれ! 絶対に我が領で魅了させて見せよう!」
「それは有難い限りです! 是非お願いいたします!」
「うむ! しばし不便をさせるが、馬車にて同行してほしい。それでは後程また会おう」
ヴェンリノーブル侯爵の指示の下で、僕たちは先ほど乗っていた馬車に乗り込む。
しかし僕たちが依頼した、御者の人も大変だな。
魔物に出くわしただけでなく、貴族様の馬車についていくとは災難だ。
「はわぁ……マノワールさんカッコいいです……」
「貴族相手の作法までこなすとは、本当に器用な奴だなお前は。何ができないんだ?」
「いや料理とか細かい作業とか苦手だよ? 冒険者としても、まだまだだし」
「いやできないわけじゃないだろう。何でも卒なくこなすのは、普通は無理だぞ」
腰を下ろすや否や、ニンメイちゃんがよくわからないことを言っている。
なんだろう煽っているのかな?
僕みたいな冴えないオッサンがカッコイイなんて、意味不明だし……
エルマージも同調している。
過大評価も甚だしいな。
「マノワールさんは渉外も事務も担当していらっしゃいましたし、何か特定作業に注力できないブラック環境でしたから……でもあらゆる分野で専門家顔負けでしたよ!」
「う~んオッサンだから年季だけはあるってだけなんだけどな」
「でもお料理はやらなくていいですよ! 私が今まで通り作りに行きますからね! ほっておいたらすぐ体に悪い物ばかり! 健康に良くないことは、メッ!なんですからね!」
「ぐっ……面目ない」
可愛らしく指を立てて僕を注意する、メイド服を着ている職業忍者の女の子。
子どもを躾ける様なことを言われてしまい、気恥ずかしくなる。
女の子に心配されるほど、確かに私生活はだらしないかもだけど……
年を取ると体力も無くなるからか、色々雑になるんだよ。
でも服なんかはちゃんとしてたよマナーだし。
それを聞いてエルマージは、またイジワルな顔をし始めているし。
最近ニンメイちゃんと競うように、起きた時や寝る時に世話を焼いてきて揶揄ってくるんだよな。
仲間として距離を詰めようとしてくれているんだろうけど、男女の機微は弁えてほしいんだけれど……
色々な意味でこの話は避けたいな。
危ない危ない。
話を逸らすか。
「そんなことより、勝手に決めちゃったけど本当によかった? 断れなかったけど、いいお話だと思ったから」
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