第60話 「セインセス第一王女」
空間を飲み込む程の美貌。
美しいサイドテールの豊かな金髪に、王族の象徴であるティアラを付けた人物。
豪奢なるドレス姿の、他を超絶した美少女が現れた。
「こんにちは皆さん。このザマーバッカー街ギルド長に代わり、カース王国第一王女である、私ことセインセスが、火急の要件を果たしに参りました。突然来た理由はもちろん粛清です」
淡々と事後通告のように、薄い笑みを浮かべて告げる王女。
非情な台詞は、ギルド内に激震を齎した。
「しゅ……くせ……い……?」
「まさか……」
「すでにパラフィリオは始末させて頂きました。ナルシオさんにはギルドの掃除までは頼んでおりませんでしたが……帰ってしまわれるとは、難しいお方です。遺体を持って帰ってくれただけでも、よしとしましょう」
ため息をつく美しき姫。
彼女はナルシオの扱いには困っている様子。
その事実に恐慌する汚職職員たちは、ついに差し迫った現実を受け入れられないでいる。
「そんな!?」
「パラフィリオさんが死んだ!?」
「まったく街一つが丸ごと汚職濡れとは、とんでもない不祥事です。汚職が判明した者たちは逮捕の後、鉱山奴隷か戦争奴隷か選ばせてあげましょう……あっ。ワルカン支局長は見せしめに死んでもらいますね。主犯格であるあなたは、流石に減刑の余地がありませんので。ラグニア傘下の半グレたちを擁護し、数千件の犯罪行為を隠蔽した罪は決して許されるものではありません」
「ふざけるなぁぁぁっっっ!? 儂を誰だと思ってムゴゴゴゴ!?」
恐慌状態に陥るギルドの職員たち。
それを無視して王女は一方的に通告した。
抗議したギルド幹部、パラフィリオの親族であるワルカンは王女の護衛に拘束され。
猿轡をかまされて、あっという間に身動きを封じられた。
彼の運命は絶望へと決してしまったことだろう。
誰もが恐れを抱いた表情で、この王女を見つめる。
セインセスと名乗る姫は微笑みを絶やさないが、少女とは思えないほどの眼力で彼らを見渡した。
「粛清でいいのではと思いましたが、善意から女性の汚職職員の方々は鉱山奴隷にしておきます。女性ならば大事に使ってもらえると聞きます。効率は大事ですので、資源は有効活用いたしましょう。何百もの殺人や婦女暴行を幇助したあなたたちには、お似合いの待遇であると思います」
「何が善意よキチガイ女っ!?!?!? 肉便器として生きるだなんて、そんな人生死んだ方がマシよぉっっっ!?!?!?」
オツボッネが金切り声をあげて、泣き叫び始めた。
すぐに死なないというだけの、生き地獄に堕とされることになるからだ。
セインセスは虫けらでも見るようにしてから視線を外して、無視して話し出す。
「本当に迷惑です。いったい何人の無辜の被害者が、彼らに破滅させられたのか。ここで処理できて、本当によかった。あなたもそう思うでしょう?」
「は……はぃぃ……」
「共感してくださりませんか。難しいものですね。数百人規模の半グレたちを、まだ掃除しなければならないのというのに」
何を思ってか怯えているギルド暗部の男に向けて語りかけるが、何かズレた言葉を口にする王女。
興味なさげに話を打ち切る。
その無機質な瞳は手元の資料へと移った。
怯えているギルド職員のことは、もう既に眼中にないようだ。
事後処理に移ろうと、金髪の王女は書類の束を手に取る。
彼女の周りでは数名のギルド職員が乱心し、刃物を取り出して狂乱していた。
それをギルド長直属の暗部たちが次々と殺害しているが、セインセス王女は全く気にも留めていない。
表情筋一つ動かさず素早くページをめくりあげ、ある資料を見据えた。
カース王国で最も尊き一族の一員である彼女は、いったい何を考えているのだろうか。
「――――――マノワールさん、ね……ギルド籍を復活させて、後を追いなさい。適切な報酬と迷惑料、そして何より謝罪と地位、名誉回復の約束を。他国に流れてしまえば、国益に反します。直ちに向かいなさい」
第3章終了となります。
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