第59話 「ギルドの末路」
「剥奪剥奪剥奪剥奪剥奪剥奪追放追放追放追放追放追放」
「……また言ってるよオツボッネさん。本当に白けるわ~」
「もう彼氏の職場に転職しようと思うの。このギルド泥船よね」
「最近この状況で色んな人が辞めたから、ギルド長が急遽戻って来るって、アクカンさんが大騒ぎしてたわよ? 仕事が禄に回ってないし、汚職してた奴らもう終わりでしょ」
オツボッネは血走った目で書類を捌いている。
いつもサボっていた彼女がまじめに仕事に打ち込む程に、人手不足になっていた。
加えて急務の問題が。
魔物の大量発生が、マノワールたちを追放したせいで引き起こされたのだ。
「――――――エルマージたちが引退したせいで、Cランク級依頼をこなせる冒険者すら居なくて、高位討伐依頼が溜まりに溜まってるんですけど!?」
「冒険者たちが次々と死んでいる!? このままじゃ対処できなくなるぞ!?」
「Cランクの冒険者たちも他の町に行ってしまったというのに! ラグニアメンバーも全員行方不明だし、どうすればいいんだ!?」
もはや汚職の証拠隠滅どころではない。
自身の命が危ういのだ。
金があっても命を落とせば意味はない。
そちらに手を取られることになり、隠蔽作業は遅々として進んでいなかった。
ラグニアに依存していたこと、エルマージたちを追放したことが仇となったのだ。
数少ない良識ある一人オーエラは、まだ必死に働いていた。
マノワールたちに辞職を進められたが、彼女は生まれ育った町のため孤独に奮闘していたのだ。
「新人んんんんんっっっ!? 怠慢が好きかーーー!? 全然使えないわねっ! 私ならこんな書類5分で終わらせているわよっ!」
「すみませんすみません!」
相も変わらずオツボッネは甲高い声で新人指導をしていた。
多忙を極めてストレスが溜まっていたのだろう彼女は、普段よりも非常に厳しく叱責する。
それにより新人も、この状況下で数人辞めていた。
「オツボッネさん! そんなだから有望な新人が、他所に移ってしまうんですよ!」
「うるさいわね!? あんたはクビよクビ!」
「わかりました。マノワールさんにもお誘いを受けてますし、辞めますね」
「は?」
上司であるオツボッネは、口を挟んできたオーエラが気に食わず当たり散らした。
その言葉を待っていたというように、銀髪のギルド受付嬢は承諾する。
オツボッネはマヌケに口を半開きにして、理解できず受け入れられなかったらしい。
オーエラがやる事は全てやっていたのは、もうこのギルドに失望したからだろう。
だからこのタイミングで新人苛めに、わざと口出ししたのだ。
マノワールからの誘いとは何か。
もう少しで明らかになるが、彼女はそちらに向かうことを決めていたらしい。
「カース王国労働法に記載されている通り、会社都合退職通達とみなさせて頂きます。引き継ぎもしませんのでご了承ください」
「ちょっ噓よ嘘!? あなたがいないともう仕事が回らなくなっちゃうから! ねっ!」
「パワハラですか? ならばそちらの方面でも訴えさせていただきますが」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!!!!」
オツボッネは額に青筋を立てながら、醜く唸る。
思い通りにいかないことばかりだが、思うが儘に怒りを発散してしまえば。
彼女自身に悪いことに繋がりかねないと、自分でもわかっているのだろう。
「オーエラまで辞めちゃって。バカでしょあのオバサン」
「私にもクビって言ってくんないかなぁ~来年からだっけ? 失業手当が自己都合でもすぐにもらえるの」
「確かそうね。早くクビにされたい~その後に集団訴訟すれば、そこそこの額が貰えるでしょ」
若い女性職員はさらにやる気をなくし、悪口に明け暮れる。
すでにギルドに見切りをつけていた者たちは、適当に過ごしていた。
対照的に汚職職員は寝る間もなく、証拠隠蔽に明け暮れている。
「――――――お前たち! 早く立って門の前に並べ!」
「アクカンさん? 何でですか!」
「王女殿下が今から来るらしい! 仕事はいいから早く! くそっなんで何も通達もないのだ!?」
慌てて立ち上がる職員たち。
アクカンを含めて余裕がない。
それは王女が来るというニュースのせいであろう。
きっと予感していたのだ。
知らせもなく突然来るという事はつまり―――――――
「―――――――セインセス王女殿下! ご入来!」
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