第57話 「痛烈な皮肉」
「別に転職のための腰掛だったのですから、いいではありませんか。なんだかレベルと実績はとんでもない事になってしまいましたが、こんな仕事は別に続けたくないですから。特にこんなゴミどもとはね」
ニンメイちゃんは事も無げに、冒険者証を雑に受付に放り捨てた。
突然の行動に、僕は困惑する。
毒気を抜かれたのか、エルマージも同じ行動をした。
冷めきった声で、かつ無表情に。
美人が怒ると本当に怖いな。
「私も辞めよう。もう愛想が尽きた。義理はこれ以上ないほどに果たしたし、もうこの町にも危険もないだろう。魔物の処理もお前たちだけで行え。ギルド職員なのだから、多少は戦う心得もあるだろう」
「なら僕も。転職資金は既に貯まっているんだし、万が一ニンメイちゃんが足りなければ出すよ」
「私もエリート職業に内定してるから、別にいいにゃ」
よく考えてみれば、どうでもいいな。
皆も能力があるから、どこでもやってけるだろう。
今となっては僕も一流の建築作業員として働けるだろうし、ギルド籍なんて要らなかった。
「えっ……!? ちょっと待ちなさい! いいのそこまでランクを上げたのに!? 誠心誠意謝罪すれば、許してあげなくもないわよ! そのダンジョンコアを置いて行きなさい!」
「バカかお前? ダンジョンコア売った方が余程儲かるのに、何で渡す必要がある? その勲功で貴族にだってなれるのに、お前に従う必要ないだろバカバカしい」
「他人が自分と同じ低度な思考回路を持っていると、勘違いするのはお勧めしないにゃーただでさえ品性下劣な畜生にも劣る女なんだから、ものの考え方くらいは気を付けた方が無難にゃー」
「こんなテンプレお笑い人間がいることが驚きであり、滑稽です。もしかしたら笑わせようとしているのかもしれませんが、マジで滑ってますよ。証拠はあなたの同僚の方の反応です」
痛烈過ぎる罵倒の数々に、オツボッネは音が鳴る程に歯軋りをする。
そして地団太を踏んで、みっともなく癇癪を起こし始めた。
「きぃぃぃぃぃっっっ!? 冒険者風情がぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?」
「ヒステリック起こすなら、付き合ってくれる人だけにやってください。取引先である冒険者の方々がこれだけいる中で全員バカにするって、同僚でも付き合いきれないと言われるかと思いますが」
「そもそもほとんどの人にスルーされるか、ドン引きされるからな? 自分の程度を理解していないと、とてもできないぞ」
「頭脳どころか心まで不細工なのは同情に値するニャー」
ヒステリーを起こすオツボッネ。
見るに堪えない愚劣な振る舞いだ。
周りの冒険者たちも反感を抱いているようだ。
オツボッネを見ている視線は厳しい。
彼らは人々を護っているという自負があるのだから。
粗暴な人間も多いが、彼らは公共に奉仕しているのだからバカにされる謂れはない。
「帰りましょう。冒険者たちはいざ知らず、同僚に後で陰口叩かれるでしょうから、わたしは満足しました」
「もう反面教師としても役立たずになったから、相手をしてやる意味もない。他ギルドにでも行ったときにでも、この出来事は報告させてもらう。証人は多くいるのだし、仲間に売られないように気を付けておけ。どうせ破滅の未来しか待っていないだろうが」
「最後に追撃ニャ。お前の周り見れば、自分がどう思われているかを知ることができるニャ。最後まで働きづらくなると思うけど、頑張ってニャ」
「覚えてなさいよぉおぉぉぉ!!!!!」
金切り声をあげて、肩で息をしている中年女性。
僕たちは呆れながらギルドを出ていく。
そしてドアを閉めた時、この女は周りを見ることもできず項垂れているのが見えた。
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