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第39話 「エルマージの想い」




「よかった! マノワールさんは助かったみたいですね」


「まだ完全に一件落着とまではいかないが、かなり状況は良くなった」


「二人のおかげです。本当にありがとうございます」


 二人の女性の祝福に嬉しくなる。

 やっと生きた心地がしてきた。

 一般人には荷が重い事ばかりだったよ。


 やっぱり彼女はエルフなだけあって、老練だなぁ。

 あの交渉力とか見ていて、そう感じた。

 麗しい淑女のエルマージさんには言わないけど。






「―――――――エルマージ! パラフィリオが捕まった話は聞いたブヒか!?」



「あぁお前か。そうだ。マノワールから証言を受けてな。アイツの陰謀をばらしてやったぞ。ブタ箱行きだな」



「はぁっ!?」



 太っちょのパーティメンバーが駆け寄ってきて、焦った様子で先程の会議について問いただしてきた。

 エルマージさんが答えると頓狂な声で驚いて、打って変わって気色悪い声でゴマすりをしてくる。




「仲間ブヒよね!!! パラフィリオを助けてあげようブヒ! 何が欲しいブヒか? 金でも何でも払うブヒよ!?」



「話は聞いたぞ! 考え直せエルマージ! 俺たち仲間だろうがよ!? 仲間のためなら、誇りあるお前は何だって惜しくないはずだ!!!」



「今更遅い!!! 仲間を大事に出来ないお前達とは、もう一緒になんか居られない!!!」



 もう一人のラグニアのパーティメンバーも駆けよってきて、説得し始める。

 だがエルフの付与魔法使いは一顧だにしない。


 つまりエルマージさんもパーティから離脱。

 斥候兼、魔法使いをなくしては全然討伐できないだろう。

 こうしてパーティの大半を失ったラグニアらは、壊滅することになるだろう。






「そうなれば私に手を出すか? お前らの目も曇り切ったらしい。マノワールから漏れ出る闘気すら感じられないとは」


「なんだとぉ……!? ってマノワール! 生きていたのか……って誰だお前!?」


「はい? マノワールですが」


 エルマージさんに話が通じないとみると、彼ら二人は前傾姿勢をとった。

 戦いになるかもしれないと、僕は戦闘態勢に移行する。

 その瞬間彼らは僕の存在に気づいたようで、何故か恐れ始めた。


 何を言っているんだこいつらは?

 もう髭も剃ったし身なりも整えた。

 まさかほんの一週間足らずで、僕の顔を忘れたのか?




「なんだそのオーラは……パラフィリオよりも強ぇんじゃねぇのか!?」


「別人ブヒ!? そんなに強くなるなんて、ありえないデブ!」


「あぁ……そういえば格上の魔物を、少なくとも僕だけで百は倒したからな」


「あのダンジョンの魔物を、一人で百!?」


 あんぐりと口を開けるラグニアの面々。

 そしてガタガタ震えながら、二人は顔を見合わせた。

 そして彼らの行った行動とは―――――






「「―――――しっ……失礼しましたぁーーーーー!?!?!?」」




 脱兎のごとく背を向けて駆け出した。

 物凄い速さだ。




「あの人たち追いかけなくていいので?」


「あいつらは小物だ。それにすでにギルドが確保に動いている」


 冷めた目で見送りながら、エルマージさんは冷え切った返答をニンメイちゃんにした。

 相当ストレス溜まってたんだろうなぁ。


 そんなエルマージさんは俺をまじまじと見ている。

 何かを言葉にしているようだが、言いあぐねているようだ。

 それに気が付いた僕は、彼女に話を促した。






「どうしました? 何か言いたいことがあるようですが」



「私のようなあんなクズに加担していたような女は、嫌かもしれない。だけどお前たちといて、こう思った。こんな仲間たちと冒険できればと……」



 ぽつりと呟いたエルマージさん。

 彼女は高潔な方で、僕達はとても助けられた。


 ラグニアの付与術師は、冒険者を志して諦めた僕にとって、星のような憧れ。

 イメージ通りの尊敬できる女性だったのだ。






「マノワール! お前たちのパーティに入れてくれないか!」




 潤んでいる揺れた瞳。

 断られることを予期しているようだ。


 エルフ特有の耳は垂れて萎びていた。

 だが僕の返答は一つしかない。




「僕こそ是非お願いしたいです」


「本当かっ! ありがとうマノワール!」


 花が咲いたように満面の笑みを浮かべた。

 尖った耳も犬の尻尾のように跳ねまわっている。


 いつもは華麗なる美人なのに、とても可愛らしい仕草だな。

 気品のある美女にそんな表情をされると、ドギマギしてしまう。






「これからよろしく頼む」


「こちらこそよろしくお願いいたしますエルマージさん」


「敬語もいいし、呼び捨てでいい。仲間なんだからな」


「そうか……わかったよエルマージ」


 彼女はふわりと微笑んだ。

 憧れていた人を呼び捨てにするのは、なんだか気恥ずかしいな。


 視線を逸らした先で気づいたが、ニンメイちゃんは少し離れたところで、ため息を吐いている。

 彼女に許可を取るのを忘れていた!

 僕は急いで駈け寄り、説得と言い訳をしようと試みる。






「マノワールさん昔から流されやすいですから……冒険者辞めて、転職するって覚えてるのかな……」










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 『異世界神様チート貴族転生したら、女装して女学園に通って悪役令嬢を誑かして婚約破棄させるように言われた。クラス転生していた悪役令嬢に男バレして追放されたがもう遅い。聖女(?)として復讐だざまぁ!』

テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
追放ザマぁの構造的問題への解決につながるかもしれないアプローチ。
新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] パラフィリオのパーティーはもうだめですね(;´∀`)残念な豚さんがいい感じでしたが、解散です笑 マノワールさんの強さはパッと見で誰だかわからないほどになっていましたか! オーラだけで逃げ…
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