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第36話 「帰還を喜ぶニンメイとエルマージ」




 ニンメイちゃんは号泣していて、言葉もあげられないようだ。

 僕の腰に抱き着いて離れない。


 若い女の子がはしたないと思うけど、言っても聞いてくれなかった。

 そんなに心配させちゃったか。

 オジサンの心にジーンとくる仲間の絆。




「あの……臭くない……?」


「マノワールさんは臭くないです! 万が一臭くても大丈夫です!」


「バリバリ臭いって言われて傷ついてたんだけど」


 そう言った途端に口籠ってしまったニンメイちゃん。

 そういう反応が一番傷つく。

 そして話を逸らすという魂胆もあったのだろうが、僕の今までの経緯について聞いてきた。






「今までどうしてたんですか!? 本当に心配したんです!」


「実は―――――――」


 僕は今までのことを詳細に説明した。

 彼女は納得して、僕の生還を喜んでくれた。




「よかった……大変でしたね……でも本当に生きててよかった」


「うん。ありがとう」


「―――――マノワール」


 エルマージさんがよろよろと近づいてきて、何事かと思ったら。

 なんと彼女は僕に抱きついてきた。




「生きていてくれたんだな」


「エルマージさん!? 手が胸に!? マズいですよ!?」


「マノワール。心配していた。食事もとらないで、あの迷宮を」


 感極まって抱き着いてくる。

 ニンメイちゃんとエルマージさんという、二人の極上の女性たち。

 柔らかい感触が、僕の身体と接触する。


 ご褒美みたいだ、っと変態みたいな思考だな。

 極限状態であっても、心だけは紳士であらねば。






「生きていてよかった。この数日お前のことばかり考えて――――――ってくっっっせ!?!?!?!?!?」



「ひどくない? わざとやってますか?」



 エルフの優れた五感は、僕の臭気を的確に把握しすぎたようで。

 なんというオジサンに厳し過ぎる世界。


 こんなことなら、風呂に入ってから会いたかった。

 なんて間が悪いオッサンなんだ。




「―――――――コホン。失礼した」



「いえ。もう慣れましたので」



「本当に申し訳なかった!」



 正座して謝罪してくるが、僕のハートは罅割れてしまっている。

 目を逸らしながら返答すると、土下座するエルマージさん。


 人に不快にさせたとしても、不可抗力なんだよ。

 もっとそれとなく伝えるとかあるでしょ。

 苛めだよそれは。






「いやいやいやいや頭をあげてください!? そうだ! 今まで外はどんな感じだったんですか!?」


「ああ。まず全く迷宮からの脱出を支援できなかったことを、深く謝罪しよう。私たちはすぐにでも赴こうと思ったが、全く前衛が集まらなかった。パラフィリオたちに邪魔されたんだ」


「それは……いえ。探そうとしてくれただけでも有難いです。」


「本当にすまなかった。だが人命がかかっている結果商売だ。私は評価されるべき人間ではない」


 義理固いし、自分に厳しい人だ。

 そんな彼女だからこそ、これ以上話題にしない方がいいだろう。


 あの時のことを思い出す。

 絶対に殺害を事前準備された、計画的犯行だった。




 万が一落下から生きていたとしても、ジャイアントバットをはじめとした魔物が待ち構えている。

 念入りに僕を殺そうとしたのだろう。

 本当に卑劣な奴だ。




「やつはこの町はともかく、他の町にすら手をまわして、妨害工作をした。恐らくギルド経由の伝達手段のみならず、私が個人的に送った手紙なども処分されているのかもしれない。」


「そこまでしますか!?」


「それだけ斥候は大事で、ニンメイは能力が高いのだ。あそこまでレベルの高い斥候はなかなか育たない」


 確かに偵察を今まで失敗したことがない。

 そんな秘められた才能があったという事か。


 だが斥候の重要性はこの短い冒険者生活で理解した。

 儲けが違うし、リスクも違う。

 敵に先手を打てるという事は本当に大事なのだ。


 冒険者になりさえしなければ、目を付けられることもなかった。

 僕達は揃って、間が悪い仲間同士だ。






「冒険者に誘ったのはお前だと聞いているが、絶対にお前のせいではない。悪いのはあいつだ。それにニンメイは言い寄られている。女としても」


「はい。ありがとうございます……って大丈夫なんですか!?」


「まだ何もされてません。恐らくはマノワールさんの捜索から引き離そうと、今は強制依頼を申請されておりましたが、現時点ではギルドからは連絡はありません。しかし、これからはどうなるか」


 僕が思いつめた顔をしていたからか、エルマージさんがフォローしてくれる。

 余りの嫌悪感に、両腕で体を抱きしめたニンメイちゃん。

 相当気色の悪いことを言われて、口説かれたのだろう。


 嫌がる人にしつこく言い寄るなんて、本当に下劣な男だ。

 これ以上放置すれば、取り返しのつかないことになりかねない。




 だがどうやってこの状況を切り抜けるか。

 ニンメイちゃんの言葉通りなら、ギルドも向こうについているだろう……




「エルマージさん。もし僕を捜索で見つけていたら、今後どうする予定だったのですか? 僕が見つかった状況で、このまま姿を現して状況に身を任せるのは危険かと思います」


「そう。お前はパラフィリオに嵌められたことを伝えられる、生き証人となるわけだ。だからこそ確実にお前を消しに来るだろう。よってギルド長に報告し、国家の裁きを下されるのを狙いたい」










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テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
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新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 臭いと言われるのはおじさん、きっとショックですよね(;´∀`) でもお風呂はいってさっぱりして現れても色々言われそうです(^_^;) ニンメイちゃんはマノワールさんの匂い好きそうなんで大丈…
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