第34話 「ニンメイの選択」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、パラフィリオはそう嘯いた。
痺れを切らしたニンメイは彼らに背を向けて、ダンジョンの奥地へと向かって走り出そうとした。
「埒があきません! 探しに行きますから!」
「俺はいかねぇぞ」
「俺もだ。自分で勝手に行動する奴の御守なんぞ御免だね。何よりもう死んでるだろ?」
「まさか一人で探しに行かないブヒねぇ?」
無感動に見捨てる選択を取る、ラグニアの面々。
それに反発してニンメイは、振り返って痛烈に罵倒する。
「卑怯者の薄情者! わたし一人で行きますので、お構いなく!」
「待てニンメイ!? 無謀すぎる! ここまで来るのにも危険なことは多かった! 初探索のお前が、どうしようというんだ!!!」
「離してエルマージさん!? わたしが行かなきゃマノワールさんが死んじゃうかもしれないんです!!!」
引き留めようと羽交い絞めにするエルマージ。
ニンメイは必死に抵抗する。
それに代案を提示して引き留めた。
身を切ってでも、ニンメイを案じている。
責任感の強い彼女は、全財産を賭してでもマノワール救出を果たすようである。
「捜索隊を送ってもらおう。私の有り金をすべてはたけば、それなりに大規模な人手が集まるはずだ」
「あの高さの崖だ。もう死んでると思うがね」
「下半身を犠牲にしたところで、瀕死確定。そこに魔物どもの大軍が食いつくとなったら、もう確実に死んでる」
「帰ったら墓を建ててやるブヒ。それがせめてもの手向けブヒ」
デブの言葉に失笑を漏らすパラフィリオ。
皮肉だったのだろう。デブは厭らしい表情で口角を歪めた。
ニンメイはそれにより確信を持ったらしい。
殺意が漏れ出ながら、腰の剣に手を添えた。
「ここじゃマズい。返り討ちになるだけだ」
「くっ」
「今は雌伏の時。復讐の時を待とう」
マノワールの真の実力を知らないエルマージは、悔しそうに小声で言った。
それはニンメイの相棒の死を確信しているという事。
「何を話しているのかは知らないが、行くってんなら、痛い目に遭ってもらうぜ」
「二次被害は避けなければブヒ」
「そういうこった。行くのか帰るのか決めろ」
男三人は据わった目で、ニンメイに詰め寄る。
形勢不利と見たのだろう。
彼女は苦渋の決断をせざるを得なかった。
「…………帰り……ます……」
「賢明な判断だニンメイ。帰ったらアイツの冥福を願ってやろう。それが冒険者の流儀ってもんだ」
「汚い手で触るな下衆」
ニンメイは嫌悪感を剥き出しにして、パラフィリオの手を振り払う。
彼は額に青筋を立てるが、何とか笑顔を取り繕った。
そして道端に唾を吐いて、無言で帰路に就く。
しかしマノワールの実力を知っているニンメイは、迷う。
自分が行けばマノワールは生還できるのではないか。
ニンメイの視線はマノワールのいる方向へと向けられた。
だが自分一人が行って、何ができるかと考えたのだろう。
震える拳を握り締め、帰路に就くことを選択した。
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価、またはレビューしていただけると、執筆の励みになります!!!!!!!!!!




