第33話 「裏切者の大嘘」
マノワールが落とされてから少し経った頃、ニンメイとパラフィリオたちは合流していた。
そして彼からマノワールについて報告がなされる。
「はぁ!? マノワールさんが崖から落ちた!?」
「俺は引き留めたんだが、自分の能力を見せつけようと魔物たちに向かっていったんだ。それで追い詰められて崖から落ちてよ」
パラフィリオは日頃のお茶らけた様子を捨てて、真剣な表情を見せる。
その内心は伺い知れないが、ニンメイの心情を労わってのモノなのかもしれない。
「俺が強く引き留めていれば……あいつにキツイ条件を突きつけちまったから、暴走させちまったのかもしれねぇ。もう少し冷静な奴だと思ってたんだが……」
「ふざけないでください!? マノワールさんはそんな単純な性格じゃありません! そもそもそんなに弱くないし、そんなことをする必要性がありません!!!」
ニンメイはマノワールと付き合いが長く、その慎重すぎる性格を知っている。
それに何よりそんな条件など気にもしていないことも知っている。
そんなことをせずとも、夜逃げすればいいのだから。
しかしパラフィリオは諭す。
不可避の悲劇だったのだと。
「お前は素人だからわからんのかもしれん。アイツはそこまでの雑魚じゃないことはわかってる。だが数に押されちゃ、土地勘のないアイツじゃ勝てない、そういう事だ」
「マノワールさんが本気を出せば、こんな魔物たちは物の数じゃありません! そもそもあなたが守って時間を稼いでいれば、マノワールさんは奥の手を使っていたはず! あなたが陥れたんでしょう!」
「なんだよ奥の手って! 俺がアイツを見捨てた証拠でもあんのか!? 俺だって好みの男が死んで悲しんでいるのに、なんてことを言うんだよ! まさか俺のせいだってのか!!!」
このパーティのリーダーは逆ギレする。
しかし明確な証拠を出せないニンメイは、反論ができない。
それを目ざとく見つけたパラフィリオは、にやりと一瞬口角を歪めた。
他者を貶めることが得意な人格は、些細な弱点も見逃さない。
「ないみたいだな。自分でそういう表情してるもんな? 証明できない。誰にもな」
「マノワールが崖から落ちたという地点。このダンジョンでも屈指の難地帯だ。なぜそんなところに赴いたパラフィリオ?」
「それはあいつが勝手に、自分の力を証明しようとしたに決まってんだろ?」
「なぜダンジョン内の情報を知らなかったマノワールが、それを知っている? お前がわざと教えて誘い込んだようにしか受け取れないのだが?」
だが長年この男と共にいたエルマージには、見破られた。
元よりパラフィリオの主張には穴がありすぎる。
証人も一人しかいない。
信じろと言う方が、難しい話だ。
「そうですよ! あなたの言っていることは都合がよすぎます!」
「チッ……! うるせぇんだよ! おいお前らどう思う!?」
ついに逆上するパーティリーダーの男。
大声と威圧でニンメイの主張を退けようとするが、彼女は一歩も退かない。
そして仲間二人に判断を仰いだ。
それすらも仕込みだったのだ。
「さすがに決めつけすぎだ。根拠が乏しい」
「パラフィリオはそんなことをする奴じゃない。こんな状況で、まさか仲間を疑うとは流石に引くデブ」
「そうらしい。多数決で俺が正しいってこった」
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