第31話 「パラフィリオの裏切り」
僕は崖から落ちそうになり、咄嗟に手をひっかけた。
下を見れば奈落の底。
死が目前に迫っている。
「あいつがニンメイに張り付いてくれていたおかげで、お前へのマークががら空きでよかったわ~!」
頭上から嘲りの声が聞こえた。
怒りがこみ上げる。
油断していたんだ。
エルマージさんとニンメイちゃんでなく、僕を排除しようとしていたのか。
奴はこれを狙っていたのだ。
「バカにわかるように伝えてやるよ! お前は嵌められちゃいました~!」
「おまえぇっ!」
罠だったのだ。
僕を処理してニンメイちゃんを取り込もうとしているのだ。
「まともに試験何ぞやってやるかよ間抜け! ニンメイは中々俺に靡かねぇからよ。お前に死んでもらった後、家族でも人質にとるわ。戦闘でも肉便器でも使えるとか、最高だからよぉ!」
「クズが!!!」
「それでもいう事聞かなきゃ、親兄弟共々ボコボコにして犯せばいい話だしな。ニンメイの親父だ。顔は極上だろうからよぉ」
難関ダンジョンに置き去りにされてしまうだけでも、死にかねない。
それもこんな状況では、もう追い詰められて死は目前に迫っている。
体はもう冷や汗の感触しかしない。
指の感覚も痛さすら感じなくなるほどに、負担がかけられていた。
「そんじゃお疲れさん♪ 俺に股を開かないお前が悪いんだぞ。死んどけオッサン」
「お前たちが誘ってきたくせに、用済みなら捨てるってのか!? ふざけんな!!!」
「ばぁーーーーーか! お前みたいなクズは、俺みたいな強者に搾取されるのが運命なんだよ! こいつは退職金代わりにくれてやるよ! 空裂斬!!!」
俺に向かって、斬撃を飛ばしてきた。
手を離さねば、斬られるだけ。
落ちるしかなかった。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「トドメ刺してやるとか、俺って超優しい~♪ 帰って奴隷でも殺すかなぁ~」
俺は崖から落ちていった。
落下する体は徐々に速度を増してゆく。
早急に手を打たないと、死あるのみ。
「まずいっ!? アース!」
咄嗟に土魔法を使えてよかった。
崖から土を操作して間一髪、足場となる地面を伸ばす。
だが10m以上は落ちた衝撃で、足が折れたらしい。
脹脛をつんざくような激痛が走る。
「う……あ……っ!? グッ……!?」
まともに歩けない。
思考が纏まらず、一気に脂汗が滴り落ちた。
「アース!」
ここで家を形成する。
身体能力が上昇し、少し体が楽になって動きやすくもなった。
アイテムボックスの中にはある程度の食料と、ポーションがある。
エルマージさんに高いものを貰えてよかった。
だがじり貧だ。
痛みは引いてきて、日常生活くらいはできるだろうが崖の上まで土魔法を伸ばすには数日かかる。
それよりも魔物がいる中で折れた足を抱えてよじ登り、ダンジョンを脱出するなどあまりに困難。
それも強力な魔物ばかり。
「誰かいるかーーー!?」
叫ぶが、応答はない。
しかし暗闇の中から異変が訪れた。
期待していない、むしろ都合の悪い存在だ。
僕の声に引き寄せられてしまったのだ。
「クソっ! 魔物か!? 蝙蝠みたいな……ダメだわからない!」
安直だがジャイアントバットとでも呼ぶか。
人間よりも大きな蝙蝠が、次々と飛来する。
それを迎撃するため、崖の土を掴んで投擲した。
もう必死だった。
やらなきゃやられる。
生存本能が体を限界以上に動かしていた。
がむしゃらな攻撃が命中すれば、巨大蝙蝠は爆散する。
そして次々と蝙蝠は下から飛んできた。
その時、意図していなかった事態が起こった。
「これは……レベルアップ!?」
存在の格が上がる、軽快な音が頭の中で聞こえる。
ステータスが上がる感触がする。
「これなら……!」
次々と僕に襲い来る巨大蝙蝠。
いや今の僕にとっては経験値の塊。
おそらくここは魔物が多い危険ポイントだったのだ。
それを見越してアイツは僕を落とした。
事前に調べ上げて、入念に殺しにかかって来ていたのだ。
「好都合……ここでレベルアップして、何とか脱出する!」
僕は土塊を次々と投げつけ、応戦する。
こうしている間にも、ニンメイちゃんは何をされているかわからない。
エルマージさんが守ってくれているだろうが、いつまで保つことか。
一刻も早くここを脱出できるだけの力をつけて、帰らなければ!
「待っていてくれニンメイちゃん! 絶対に脱出して、助けに行く!」
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