第27話 「エルフの美女の提案」
「なぜですか?」
「町の外で異常発生した魔物が、今はうようよしている。引越しなどは命がけになるだろう。それに今頃アイツの手勢の暗殺者たちが、お前たちを監視しているはずだ」
彼女は窓の外に視線を固定した。
俺たちも視線だけずらすと、俺たちを監視しているだろう怪しい男たちが足を止めて宿の前にいた。
移動は難しいという訳か。
僕の力は移動に適さない。
固定地点でなら無類の強さを発揮するが。
防衛戦でならば、そこそこやれると思うけど……
ダメだ。僕の頭では解決法が思い浮かばない。
「私が攻撃魔法や近接戦闘に長けていれば、護衛してやれたんだが……マノワールを守りながら、あいつらに敵対されるのは厳しすぎる」
「ならいつでも出れるようにお金! あとは武器とか情報とか下さい!」
「失礼だよニンメイちゃん」
気を悪くされたら、僕たちは八方塞がりとなる。
ここで彼女に見切りをつけられれば、破滅一直線なのだから。
「いや。それくらい当然だ」
「ありがとうございます。本当に申し訳ございません。ニンメイちゃんはまだ子どもで、気が立っていたんです……ニンメイちゃん、エルマージさんに見捨てられたら、僕達はもう終わりだよ」
「あの……申し訳ございませんでした……」
余りにも悄然とされながら受け入れられたので、ニンメイちゃんも普段の冷静さを取り戻したようだ。
この子はまだ若いから、自制心が効かないところがある。
大人として、こうなった原因の一人として制御してあげなければ。
だが今の一件で、エルマージさんにも罪悪感を植え付けられたなら何より。
僕の言葉に俯いて、悔恨を美しい面貌に浮かべている。
「エルフからすれば、人の子は赤子のようなものだ。些細なことで目くじらは立てないさ」
「あ、赤子……いえありがとうございます」
釈然としないが、下手なことを言って機嫌を損ねるのは得策ではない。
子ども扱いされるのは、オッサンにとって違和感しかないが。
気を取り直して話を続ける。
ありがたいことにエルマージさんは受諾してくれた。
「そうだな。今言ったものは全て用立てるし、君たち自体の戦闘力も上げておこう。パーティに貢献するためといえば、反対されることもない」
「そうですね。お言葉に甘えさせて頂ければ幸いです」
そこまでしてくれるのも気が咎めるが、四の五の言っていられる状況じゃない。
ニンメイちゃんの人生がかかっているのだから。
「私の知り合いのギルド職員に、誰か師範を紹介してもらって護身術を習わせよう。二人とも筋がいいから、役に立つだろう」
「僕はともかく、ニンメイちゃんはそうですね」
「マノワールもCランクを一人倒した。それだけの実力があって、センスがないなど有り得ない」
「恐縮です」
一般人よりは体を動かしているから。
でもケンカとか子どもの頃くらいしか、やったことないんだよな。
若い頃魔物を狩ったこともあるが、普通よりマシくらいにしか思えない。
このステータスのおかげだろう。
「それでは金や武器をもって来るついでに、依頼しに行く。今日は疲れただろう。休むといい」
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