第２６話　「ザマ―バッカ―街最強パーティ、ラグニアの実力」

　報告によれば、かなりの数のオークがいる。

　僕達だけならば、かなり苦戦するだろう。

　天下のラグニアの実力、お手並み拝見だな、

「おうご苦労。へっへっへ……今日は卸したてのブラジャー着けてきたから、俺の調子は最高だぜぇ……」

　不敵な笑みを浮かべて、背中から抜剣するパラフィリオ。

　あんな大きな大剣を持っても、姿勢は揺るがない。

　相当の膂力があるという事だ。

「ストレングス！　ハードニング！」

「いきり勃つぜぇ……ニンメイは周囲の警戒！　オッサンは護衛でもしとけ！」

　エルマージさんが二人に付与術をかけると、パーティリーダーは駆け出した。

　僕は言われた通り、エルマージさんの隣で剣を抜いた。

「へへへオークどもが。犯し殺してやるよ」

「すごい……！」

　街唯一のBランクであるという言葉に偽りはない。

　自宅内の僕でも、勝てないだろう。

　この実力があるからこそ、街を支配しているのだ。

　見る見るうちにオークたちは狩られていった。

　ニンメイちゃんすら自然と称賛の声は漏れていた。

「オラ串刺しぃ！　歯ごたえがねぇなぁ～１００はいねぇと楽しくねぇだろうがよっ！　輪姦されるのも悪かぁねぇが、こんな雑魚どもじゃなぁ」

「おいおいアイテムボックスでも持って帰れねぇだろ！」

　一気に殲滅すると、つまらなそうに魔物たちの死体を踏む。

　これ程の敵でも、まったく歯ごたえがない様子だ。

　魔法の道具といっても、万能ではない。

　質によって容量限界があるから。

「アイテムボックスなら、わたしたちも持ってます」

「あ～ん？　事前準備はできてるな？　そこだけは加点してやるよ」

　意外といった面持ちで、僕たちを見るパラフィリオ。

　アイテムボックスの用意ができないくらいに、貧乏そうに見えたのだろう。

　善意で貰ったものなので、事実だが。

「だが俺が狩った素材をくすねたら殺す。俺らが持てない分は、荷台に乗せてマノワールが持ってけ」

「なっ！　そんなの無理ですよ！」

　ニンメイちゃんが抗議するが、意に介さないパラフィリオ。

　そして意地悪く口角を持ち上げて、僕の能力を評価した。

「ニンメイは認めるが、マノワールは認めてない」

「ならわたしが持てばいいでしょう！」

「斥候に余計な荷物持たせるバカがどこにいんだよ！」

　正論に見える発言。

　しかしまず議論の起点から、余計な負担を押しつけようとする欺瞞がある。

　その魂胆は当然、僕を追放するためのモノだろう。

　今までやられてきた事だから、すぐわかる。

「ったく頭の巡りが悪い奴らだな。オッサンだけ追い出そうってことだよ。わかんねぇか？」

「はぁ！？　そんなこと許すわけないでしょう？」

「お前の許しなんざ、どうでもいいだろうが！」

　プチン、と何かが切れた幻聴が聞こえた。

　ニンメイちゃんは怒気に満ちた表情で、脱退を表明しようとする。

「わたしは抜けさせてもらいま―――――――」

「抜けたらお前の家族、知り合い、どうなるかわかってんだろな？」

　明白な脅迫だ。

　だが俺たちにはなす術などない。

　ニンメイちゃんは憎しみの籠った表情で、口を噤んで俯いた。

　なんてことだ。それしか言えない。

　

「老若男女問わずレイプだ。物分かりが良くなったな。オッサンも荷物持ちにしてやるから、ありがたく思えよ」

「……」

　重い雰囲気のまま、帰路に就く。

　エルマージさんすら意外な展開だったようだ。

「まさかこうなるとは……ここまで執着するとは思わなかった」

「本当に迷惑しているんですから！」

「本当に申し訳なかった。ニンメイの実力があそこまで高いとは、手放そうとしないのはそのせいだ」

「マノワールさんの方が凄いんですから！　アイツら目が腐ってます！」

　受付で清算したのちに別れて、三人で話す。

　信頼できるという宿を選んでもらって、横並びの三つの部屋を借りて密談をしている。

　ここで目立つのは得策ではない。

　それに下手に目立って本格的にギルドに覚えられれば、僕のスローライフ計画が夢幻と消える。

「まぁまぁ……抑えて抑えて。そんな事にはならないんだし、仮にそうならもっとマズいよ」

「くぅぅ……あんな奴らのせいで……」

　わかってくれたようで、ニンメイちゃんは腰を下ろす。

　しかし今後どうしたものか。

　そう考えた時、エルフの女性はある申し出をしてきた。

「取り急ぎ何か詫びをしよう。金はいくらでも払うが、すぐ街を出ることはオススメはしない」