第25話 「新パーティの試運転 Cランク任務」
僕たちは森へと歩いていた。
試運転という話に、乗らざるを得ない状況に追い込まれたからだ。
肩慣らしにCランク任務。
僕たちがギリギリ丁度いいかもしれないくらいだが、どうなるか……
「申し訳ない。勝手に連れてきてしまって。報酬は約束しよう」
「約束って……ああ言ってましたけど」
「あいつは自分が気に入った者には気前がいい。駄目そうなら私の報酬から、二人に補填する」
「いやそんなこと!」
とんでもない事を言うこの人。
なんで自分から貧乏くじを引きに行きたがるのか。
恐らくは初対面でパーティメンバーが非礼を働いた俺たちのために、責任感を感じているのだろう。
エルフは誇り高いと聞くから、尚更にそうなのかもしれない。
「そもそもエルマージさんは、なんであんな人のパーティに入ってるんですか」
「このパーティくらいしか、私が真に実力を発揮できる所がない。それにあいつを野放しにしていては、私のこの町の知り合いにまで、迷惑がかかることは間違いない」
「そんな……」
やるせないように肩を落とすニンメイちゃん。
まだ若いのに、こんなことに巻き込まれるだなんて、なんて可哀そうなんだ。
エルマージさんの話に関しても世知辛い話だ。
「実をいうと前の斥候も、あいつを嫌って辞めたんだ。ここらじゃアイツの親戚の影響力が、ギルドで凄くてな。最悪は他国まで流れると言っていた」
「もう酷過ぎて何と言っていいやら」
「私はエルフの端くれだから目が効くし、森の中での移動の心得がある。だが斥候の負担は大きすぎる。私の本職である付与術師との両立は難しいからこそ、探していたんだ」
エルマージさんは悄然としながら、過去の経緯を語った。
一人でパーティすべての安全を確保するなんて、土台無理な話だ。
「斥候が何くっちゃべってやがる! 耳コキされたいのかエルマージ! 前に行って確認してこい! もたもたしてると勃起しちまうぞ!」
「チッ……今行きます!」
ニンメイちゃんが舌打ちをして、恐ろしく低い声で返答した。
これ本当に嫌いな人にする対応じゃん。
こんなに早く彼女から嫌われるとは、相当の人間だぞ。
いや本当に下劣な、即逮捕されていてもおかしくない野郎なんだけど。
「でも他のパーティメンバーの方々は、どう思っているんですか? みんなで止めればいくらなんだって……」
「あの二人は昔はまともだったが、悪い遊びを覚えてあのザマだ。大方弱みも握られている。アイツに利権だの女だの渡されているのさ」
吐き捨てるようにエルフの女性は告げた。
この町は腐っていたのか。
庶民は何もわからないのだな。
「だがアイツがいなければ、もうこの町はまわらない。そこそこの腕があるやつは、あいつを嫌って他の町に流れたからな。だからこの町の冒険者は、中堅層の空洞化が本当に深刻なんだ。おかげでアイツの専横は凄まじい。だからこそあいつらが死んだらこの町は終わりだ。忌々しい」
「……」
「巻き込んでしまって申し訳なかった。恨まれて当然だ。私の金ならいくらでも出すから、少しの間でもこの町を守ってほしい」
これは……ある程度金が貯まったら、夜逃げするしかないのかも。
なんてことに巻き込まれてしまったものだ。
だが実績を上げれば、どうなろうとニンメイちゃんは目をつけられていただろう。
この世界では転居や町の移動にはかなりの金がかかるし、暫くは冒険者をしなくてはならなかっただろうし。
無理やり納得させて、エルマージさんへ恨みを向けないようにした。
「魔物まで狩って来るとは、そこそこ気が利くじゃねぇか。これはニンメイは入れてやってもいいかもな」
「だなぁ! 斥候が丁度来てくれて、それなりに戦えるならよ!」
「ロリメイド……ヒヒ……」
前方にいる男三人は、厭らしい視線でニンメイちゃんを眺めた。
彼女は背中に向けられた視線を感じ取ったのか、ブルリと一瞬背筋を震わせた。
「最低だ」
「……なんと詫びたらいいか。絶対に彼女が手出しをされないように、私が常に見張っておく」
「お願いします」
エルマージさんが頭を下げて謝った。
僕は余裕がなく、ぴしゃりと返答するだけだった。
そこにニンメイちゃんの高い声が響き渡る。
「接敵します! オークが前方に20体!」
面白い、または続きが読みたいと思った方は、
広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価、またはレビューしていただけると、執筆の励みになります!!!!!!!!!!




