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第224話 「国王に推挙されるマノワール」




 そう言った瞬間、誰かが来たようだ。

 使用人から話を聞くと、意外な名前が。

 急いでお通しすると、ロマンスグレーの貴族男性が目の前に。






「失礼いたします。マノワール様」



「どうされましたかヴェンリノーブル侯爵? 僕のことを敬う必要はありませんよ」



 やけに畏まった口調で、僕の恩人は話し始めた。

 セインセスと結婚報告したからかな?


 貴族って難儀なものだ。

 そういった爵位やらのあれこれで、態度をすぐに変えなくちゃいけないんだから。

 でももう貴族でも何でもないので固辞しようとするが、否定される。




「あなたを主君と仰がせて頂きたく、参上仕った次第です。我ら一同、あなたを王としたく」



「ええっ!?!?!? 僕が王に!? なんでまた!?!?!?」




 とんでもない爆弾発言。

 仲間のみんなも口元を手で押さえた。


 だがアクレイとセインセスは訳知り顔のように、あまり動揺の色は見られない。

 予測していたことなのかもしれない。






「実は―――――」



 最近の国際情勢を伝えられる。

 先ほどにコックロが口にしていたことの、補足情報だ。




「―――――そのようなわけで我らが領地は魔物たちに蹂躙されるか、他国に食い荒らされるしかない。よって皆様の麾下に加えて頂きたく。もちろん志願制ですが、多くの領民が我らに着いてくるとのことです。王国からの支援もこの状況では望めなく、魔界付近で暮らすには生活が立ちいかない者ばかりで」


「それは……僕は受け入れたいと思うんだけど、皆はどう思う?」


「私は賛成いたします。貴族の伝手は多く欲しいですし、魔王との交渉のためにも数は大きな交渉材料となるでしょう」


「僕たちに向けられるかもしれない、追っ手の数を減らせるかもだしね。連れて行かないと意図しない形でも情報源と成ったりして、僕たちの敵になりかねないだろう」


 僕の政治能力ではないので、妻に話を振る。

 セインセスとアクレイは賛成のようだ。


 確かに僕たちの部下だったことで、脅されかねないな。

 だから責任を持つ立場は嫌だったんだけど、でも引き受けてしまったのが運の尽きか。






「ヴェンリノーブル侯爵。あなたを歓迎します」



「忠義を捧げますマノワール陛下」



 跪いて頭を垂れる貴族たち。

 陛下……僕なんかその辺のオッサンなのに……






「もう民族大移動だな。私たちエルフに加えて、人間たちもここまでの規模となるとは」



「オキャルンさんの集落にも、人間と結婚した魔王領出身の獣人は少なくないし。もう国みたいなものニャ!」



 エルフと獣人の家族が興奮しながら、この件について語りだした。

 国家建設か。


 色々足りない者は多いと思うけど、規模的には小さな国くらいにはなってしまったな。

 その懸念は皆も同様のようで、文官であるオーエラさんが心配そうに尋ねた。




「これだけの規模の人達を養える植物を、オキャルンさんは生やせますか?」



「10万人規模となると、ギリギリですね~マノワールさんが土を出してくだされば、たぶん行けます~でも戦闘は魔力的にちょっと無理です~」



「できるんですか」



「年の功ですね~」



 胸を張るこの場で最年少にしか見えない、褐色肌の妻。

 物凄い女性だな。


 いや能力的な意味だよ?

 でも僕の視線は一点に収束してしまう。

 凄い母性だ……






「そうなるとマノワールの魔力が心配だな」



「それは大丈夫だ! エルフの秘術があるからな!!!!!」



「エッチなことはダメですぅ~」



 食い気味に話すエルマージ。

 その内容を知っているのか、オキャルンさんは体をくねらせて恥ずかしがっている。




「え、エッチ」


「セインセスも反応しないで!?」


 そういう話に耐性がないのか、固まってしまった聖女。

 エッチな魔力対策って何!?

 

 ニンメイちゃん達は黙っちゃって、チラチラとこちらを見てくる。

 いやもう家族になるって言ったけど、まだそういうのは早いと思うんだ!

 いや夫婦なら当たり前なんだろうけど、付き合っている期間すらなかったから付き合いたてカップル気分なんだよ!






「ん゛んっ!!! 体の弱い人に馬車を優先させれば、馬車も十分ある。国境付近の馬はほぼすべて持っていきますからな」



「ボクもそうしていこうか」



 ヴェンリノーブル侯爵が咳払いをして、ピンク色の空気を消し飛ばしてくれた。

 年長者として、言いづらいことを引き受けてくれたのだ。

 ありがたいけど気まずっ……


 エルフの皆さんやあまり話したことのない貴族の皆さんは、所在なさそうにしていた。

 うわ急に恥ずかしくなってきた!?




「……☆」


「……ズコズコ……パンパン……ギシギシ……アンアン」


「……あへぇ」


 陽キャたちはニヤニヤしてんじゃない!?

 満面の笑みで親指を立てて、ウィンクするな!?

 小声で卑猥な声を出してジェスチャーするな!?

 白目剥いて汚いアヘ顔するな!?


 笑い転げたアクレイ。

 恥ずかしがっている女の子たちを横に、僕は立ち上がって宣言する。







「それじゃ領民を回収しに行こう!!!!! その間にオキャルンさんが魔王と交渉しに!!!!!」







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旧作も読んでくださると嬉しいです!

 『異世界神様チート貴族転生したら、女装して女学園に通って悪役令嬢を誑かして婚約破棄させるように言われた。クラス転生していた悪役令嬢に男バレして追放されたがもう遅い。聖女(?)として復讐だざまぁ!』

テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
追放ザマぁの構造的問題への解決につながるかもしれないアプローチ。
新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  遂にマノワールに国王フラグが!  きっと続々と続く貴族が出るでしょう(良くも悪くも)   さて、魔王はどうでるか……
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