第222話 「オキャルンの秘密任務」
「いま皆さんを集めております。まだ王城での騒ぎは広まっていないようです。仕事は抜けてもらう事になりますが、緊急事態ですからね。まだマノワールさん達は大貴族に変わりありませんですし、名前を使わせて頂きました」
「僕の名前なら構わないよ。もう使えなくなる称号だしね。もともと不相応な代物さ」
セインセス様の別邸にたどり着くや否や。
怪我の療養から屋敷にいることが多かったオーエラさんは、テキパキと人外じみた速度で指示をして情報共有を行う。
如才なく万事完了させられたようだ。
これができる女……!
「流石だオーエラくん! この際また借金して、王都から財産を捲き上げちゃおうか!」
「いやいや王都の皆さんも、この先は大変なんだから駄目だよ」
もう一人の普段ならできる女アクレイが、あくどいことを講じている。
悪役令嬢だからなのか、冷酷なところがあるからな。
冗談かは不明だが、ストッパーとして見ていないと。
「周囲の間者も制圧しました。皆さんの安全は確保できましたが、ここからどうなさりますか? もう時間もあまりありません。」
「そのことなんですが~わたしからいいですか~?」
「ありがとうニンメイちゃん。どうかなさいましたかオキャルンさん」
オキャルンさんがおずおずと手をあげている。
肩を縮こまらせて、二の腕でその豊かな胸部が挟まれて凄いことになっている。
「あの~逃げる先を提案させて頂きたいのです~」
「何か腹案があるなら聞きたいな。同胞たちの安全がかかっているのだから、是非行って欲しい」
「エルマージに同意する。どこに逃げればいいか、皆目見当もつかないからな」
エルマージとコックロも促している。
僕も賛成だな。
他の女の子たちも頷いて、合意している。
「逃げる先は魔王様のところです~」
そうやって意を決して話し出した、褐色肌の魔物の女の子。
魔王マオのところか、彼女が出してくるだろう条件にもよるが一考の余地はある。
魔王と親しいみたいなオキャルンさんがいれば、そう酷いことにはならないだろうが……
でも魔王も余裕がないように見受けられた。
どこまで取引に応じてくれるものか……
「皆さんを騙すつもりではなかったのですが~わたしは魔王様に秘密任務を承っていました~」
皆の雰囲気が引き締まる。
マズい。
オキャルンさんへと、信じられないと言った視線が向けられた。
それは時間と共に敵意に代わっていく。
「ひうぅ……」
「皆、オキャルンママが裏切ったというわけではないよ。ボクたちはまず話を聞くべきだ」
「…………マ……マ……? それは置いておいてアクレイの言う通り、魔物たちすべてが敵ではないことは私でもわかる。セイリムリを共に倒したことを忘れてしまったのか? エルフの森を焼かれた私の顔に免じて、オキャルンさんを許してほしい。この通りだ」
「アクレイさん……エルマージさん……」
更に怯えて体を震わせたオキャルンさん。
彼女の分厚すぎる胸板も、ものすごい勢いで揺れている。
それを見ないようにするため、無言で彼女を背に置いて仲間たちから阻む。
そこに年長者二人がフォローしてくれたので、安堵する。
エルマージは頭まで下げてくれた。
アクレイの謎の奇天烈発言は置いておいて、オキャルンさんは感動しているようだ。
「わかったニャ」
「少し心がささくれ立っておりました。申し訳ございません」
「あんなことがあったばかりですから~仕方ないですよ~頭をあげてくださいオーエラさん~」
仲直りできてよかった。
これから多くの敵が待ち受けているだろうから、仲間割れなんて駄目だ。
「オキャルンさん。お話を聞かせて頂けますか?」
「はい~わたしの任務とは、人間たちを魔王様の派閥に引き込むことです~」
セインセスが代表してその内容を聞く。
秘密任務とは、人間の取り込みだったらしい。
しかしなぜそのようなことを?
「なるほど……読めてきました。単純に人間を人類社会から裏切らせる、という事に留まりませんね」
「魔王は対抗派閥に人間たちを取られる前に、自分が有効活用したいという事だねセインセス様?」
頭脳派貴族の二人が分析する。
魔王はそんなことまで考えて動いていたのか。
流石は一国を差配しているだけある。
「お二人は流石ですね~魔王幹部は人間たちを侵略したら奴隷にするだろうから、その前にすべて取り込んでおけば相対的優位を築けるとおっしゃっていました~」
ふにゃふにゃした声だが、会話内容はとんでもない悪辣な策謀でギャップに引く。
あの青い肌をした魔物のお姉さんも、本当に魔王なんだな。
「エルフの里に行って駐屯している魔物たちに、魔王様と取り次いでもらいます~あそこを復興させてまいりましょう~わたしとマノワールさんがいれば、できると思います~」
「なるほど。やってみる価値はあると思うがアクレイ?」
「ああ。実現可能性は高いと睨んでいるよ。実はボクもそれを狙っていたんだ」
コックロが話題を振ると、アクレイも同じような魂胆だったようだ。
頭脳明晰な才媛である従妹の女性に、皆も感心している。
魔王とも謀略で張り合えるとは、差別されている女性の身で次期当主争いを勝ち抜いただけのことはある。
「これだけすごい仲間の皆さんがいるんですから、きっとできます!」
「ニンメイちゃんだって頼りにしてるニャ!」
「やってみようか! 皆でなら、やれるはずだ! そうと決まれば陽キャたちと話してこよう!」
希望がみえてきたぞ!
後は皆を説得するだけだな。
難しいけど、やらないとだ。
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