表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

222/241

第222話 「オキャルンの秘密任務」




「いま皆さんを集めております。まだ王城での騒ぎは広まっていないようです。仕事は抜けてもらう事になりますが、緊急事態ですからね。まだマノワールさん達は大貴族に変わりありませんですし、名前を使わせて頂きました」


「僕の名前なら構わないよ。もう使えなくなる称号だしね。もともと不相応な代物さ」


 セインセス様の別邸にたどり着くや否や。

 怪我の療養から屋敷にいることが多かったオーエラさんは、テキパキと人外じみた速度で指示をして情報共有を行う。


 如才なく万事完了させられたようだ。

 これができる女……!




「流石だオーエラくん! この際また借金して、王都から財産を捲き上げちゃおうか!」


「いやいや王都の皆さんも、この先は大変なんだから駄目だよ」


 もう一人の普段ならできる女アクレイが、あくどいことを講じている。

 悪役令嬢だからなのか、冷酷なところがあるからな。

 冗談かは不明だが、ストッパーとして見ていないと。




「周囲の間者も制圧しました。皆さんの安全は確保できましたが、ここからどうなさりますか? もう時間もあまりありません。」



「そのことなんですが~わたしからいいですか~?」



「ありがとうニンメイちゃん。どうかなさいましたかオキャルンさん」



 オキャルンさんがおずおずと手をあげている。

 肩を縮こまらせて、二の腕でその豊かな胸部が挟まれて凄いことになっている。






「あの~逃げる先を提案させて頂きたいのです~」



「何か腹案があるなら聞きたいな。同胞たちの安全がかかっているのだから、是非行って欲しい」



「エルマージに同意する。どこに逃げればいいか、皆目見当もつかないからな」



 エルマージとコックロも促している。

 僕も賛成だな。

 他の女の子たちも頷いて、合意している。






「逃げる先は魔王様のところです~」




 そうやって意を決して話し出した、褐色肌の魔物の女の子。

 魔王マオのところか、彼女が出してくるだろう条件にもよるが一考の余地はある。


 魔王と親しいみたいなオキャルンさんがいれば、そう酷いことにはならないだろうが……

 でも魔王も余裕がないように見受けられた。

 どこまで取引に応じてくれるものか……




「皆さんを騙すつもりではなかったのですが~わたしは魔王様に秘密任務を承っていました~」




 皆の雰囲気が引き締まる。

 マズい。


 オキャルンさんへと、信じられないと言った視線が向けられた。

 それは時間と共に敵意に代わっていく。






「ひうぅ……」


「皆、オキャルンママが裏切ったというわけではないよ。ボクたちはまず話を聞くべきだ」


「…………マ……マ……? それは置いておいてアクレイの言う通り、魔物たちすべてが敵ではないことは私でもわかる。セイリムリを共に倒したことを忘れてしまったのか? エルフの森を焼かれた私の顔に免じて、オキャルンさんを許してほしい。この通りだ」


「アクレイさん……エルマージさん……」


 更に怯えて体を震わせたオキャルンさん。

 彼女の分厚すぎる胸板も、ものすごい勢いで揺れている。

 それを見ないようにするため、無言で彼女を背に置いて仲間たちから阻む。


 そこに年長者二人がフォローしてくれたので、安堵する。

 エルマージは頭まで下げてくれた。

 アクレイの謎の奇天烈発言は置いておいて、オキャルンさんは感動しているようだ。






「わかったニャ」


「少し心がささくれ立っておりました。申し訳ございません」


「あんなことがあったばかりですから~仕方ないですよ~頭をあげてくださいオーエラさん~」


 仲直りできてよかった。

 これから多くの敵が待ち受けているだろうから、仲間割れなんて駄目だ。




「オキャルンさん。お話を聞かせて頂けますか?」


「はい~わたしの任務とは、人間たちを魔王様の派閥に引き込むことです~」


 セインセスが代表してその内容を聞く。

 秘密任務とは、人間の取り込みだったらしい。

 しかしなぜそのようなことを?






「なるほど……読めてきました。単純に人間を人類社会から裏切らせる、という事に留まりませんね」


「魔王は対抗派閥に人間たちを取られる前に、自分が有効活用したいという事だねセインセス様?」


 頭脳派貴族の二人が分析する。

 魔王はそんなことまで考えて動いていたのか。

 流石は一国を差配しているだけある。

 



「お二人は流石ですね~魔王幹部は人間たちを侵略したら奴隷にするだろうから、その前にすべて取り込んでおけば相対的優位を築けるとおっしゃっていました~」




 ふにゃふにゃした声だが、会話内容はとんでもない悪辣な策謀でギャップに引く。

 あの青い肌をした魔物のお姉さんも、本当に魔王なんだな。




「エルフの里に行って駐屯している魔物たちに、魔王様と取り次いでもらいます~あそこを復興させてまいりましょう~わたしとマノワールさんがいれば、できると思います~」



「なるほど。やってみる価値はあると思うがアクレイ?」



「ああ。実現可能性は高いと睨んでいるよ。実はボクもそれを狙っていたんだ」



 コックロが話題を振ると、アクレイも同じような魂胆だったようだ。

 頭脳明晰な才媛である従妹の女性に、皆も感心している。

 魔王とも謀略で張り合えるとは、差別されている女性の身で次期当主争いを勝ち抜いただけのことはある。






「これだけすごい仲間の皆さんがいるんですから、きっとできます!」


「ニンメイちゃんだって頼りにしてるニャ!」


「やってみようか! 皆でなら、やれるはずだ! そうと決まれば陽キャたちと話してこよう!」


 希望がみえてきたぞ!

 後は皆を説得するだけだな。

 難しいけど、やらないとだ。

 









面白い、または続きが読みたいと思った方は、


広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価


またはレビュー、ブックマークしていただけると、モチベーションに繋がりますので執筆の励みになります!!!!!!!!!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


旧作も読んでくださると嬉しいです!

 『異世界神様チート貴族転生したら、女装して女学園に通って悪役令嬢を誑かして婚約破棄させるように言われた。クラス転生していた悪役令嬢に男バレして追放されたがもう遅い。聖女(?)として復讐だざまぁ!』

テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
追放ザマぁの構造的問題への解決につながるかもしれないアプローチ。
新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


一日一回投票いただけると励みになります!(クリックだけでOK)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点]  まさかのエルフの里へのUターン! しかし、これが最も合理的! 盲点をつく展開に驚愕です!  オキャルンさんに一瞬過敏な反応をしてしまうのもこの経過では致し方ないですよね。魔王サイドがま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ