第220話 「覚醒」
セインセス様はステータスを見る。
それを見て、緑の髪をした魔物の女の子は察したらしい。
「聖女として覚醒したのでしょう~」
オキャルンさんは様々な感情が入り混じった言葉を呈する。
彼女は聖女という存在のことを知っているのだろう。
皮肉にも聖女という事を否定されて追放されたこの時、聖女の職業が開花する。
セインセス様は真の聖女だったのだ。
「今までよりもステータスに上方修正が……それにこの魔法は……」
「あのように職業が変わるとは……! 何か凄い魔法も得たようですし、特別な職業なのですね!!!」
「インディグネイトシャイニングレイと、トータルマスヒールの魔法でしょうか~? 聖女専用魔法であると言い伝えられていると魔王様が昔おっしゃっていました~」
魔王にはその威力が伝えられているようだ。
それほどに強力な効果なのだろう。
「この力がもっと早くにあれば、いえ。私がゲースリンスともっと早くによく話していれば…………私自身がこんな女でなければ」
しかしさらに落ち込む僕の妻である聖女。
少しタイミングが違えば、違う未来だったかもしれない。
可能性を思えば落胆は激しい物だろう。
僕も経験していたからわかる。
自宅警備員の真の能力を理解していれば、僕の人生は大きく違うものだっただろう。
でもそれではみんなと出会う事はなかった。
「マノワール様ともっと早くに会っていれば、そんな醜い事ばかりを考えている女なのです」
泣きながら無理をした笑みを向ける妻。
僕は何も言えなくて、ただ抱きしめた。
聖女であるセインセス様は、僕の胸に顔を埋めて泣くばかり。
涙を止めてほしかった。
大切な人の悲しむ姿は見たくはないから。
「どんな目に遭っても、それでも私は聖女として世界を掬います。それが私の役目だから、責任だから」
「あなたは一人じゃない。ずっと支えます。いつまでも」
「マノワール様……この愚かな女を、今だけは泣かせてください……もう泣きませんから……ぅ……うぅ……」
「辛い時は泣いていいんです。その時は必ず僕が傍にいます」
泣くことすらできなかった王女。
追い詰められた彼女に世界は、どこまで重責を負わせるのか。
僕だってそうだ。
もっと早くセインセス様に近づいていれば、
彼女の悩みを少しでも取り除くことができれば。
今となっては後知恵で、そんなことは難しかったとは頭ではわかる。
でも心が納得しない。
そして魔物たちは無情にも襲い続くだろう。
無力感が胸を苛んだ。
なんて間が悪いオッサンなんだ。
なんて情けないオッサンなんだ。
なんて弱いオッサンなんだ。
第9章終了となります。
次回より最終章となります。242話で完結となります。
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