第218話 「すべての糸を引いていた黒幕の正体」
暗く重厚な石造りの居室。
されどその縮尺は、人間のそれとは比にならないほどに広大で。
人間の体長すら圧倒的に凌駕する椅子に坐した、単眼の巨人は報告を聞いていた。
木の幹ほどに太い指を機嫌よく軽快に突きつつ、その口角は半月状に歪んでいる。
その目の前には口達者なローブの人物が。
「さてさて、計画の進行も上々。あとはカース王国に侵攻している国々の間でも、魔物に辻斬りでもさせますか。人間同士の間に不和の種を撒いて参りましょう。国境線で騒ぎを起こして戦争を誘発できれば、勝手に自滅してくれることでしょうね」
「長きにわたる潜入任務、ご苦労だった。お前ほどあくどい魔物もそうはいないだろう」
「恐悦至極」
大仰に礼をする、狡猾極まりない魔物。
ニタニタと口元は喜悦に歪んでいた。
その前には魔王幹部であるタフモンオス。
つまり国王暗殺を果たしたローブの存在は、その部下か派閥の者という事だろう。
「すでに各国でも魔物の力を私利私欲のために利用している者たちが、数多くおります! 隣人すら信用できない世界。なんと素晴らしきかな!!!」
「クク……なんと滑稽かつ痛快な見世物よ」
ゲースリンス、そしてサンシータに甘言を囁いて、人類に混乱をもたらした存在。
このフードを被った者は、フードを脱ぎ捨てると魔物が現れた。
人型であるものの、異形の怪物。
ぬらりひょん。
人間の老人に近い姿、されど頭は異様な形状をしている。
神出鬼没のこの魔物は、どこからともなく家に入っても誰も気づかないという種族特性の賜物だったのだろう。
「それでは各国に潜ませた罠を全て発動させ、詰めとまいりましょう」
王国に入り込んでいた魔物たちが、この魔物の指示と共に暴れ出した。
魔物たちの真の目的は、人間同士を疑心暗鬼にさせて裏切り合わせる事だったのだ。
「うむ。この功績をもって、俺は遂に魔王に至る」
「万雷の喝采と共に、閣下の望みは遂に果たされることでしょう」
「この戦功は魔王すら認めざるを得ない。そして一国を落としたことに釣り合う褒美などないだろう」
力を尊ぶ魔物たちは、最も強い魔物を全面的に支持するだろう。
このサイクロプスは頂点に登りつめるため、手練手管を弄していたのだ。
「俺が魔王に至る」
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