第213話 「偽聖女」
聖女と結婚。
なるほど権威が付与される。
そうすれば国王に確実に選出されることであろう。
自らへの疑惑も、払拭されると睨んだのか。
「このスパダリはわたくしのものですわフヒヒ」
特徴のない、女性を表現するには失礼だが地味な女性。
小さく何事かを口にして、粘着質に笑っている。
「どうした! 何も言えないか! 言い訳ができないほどに追い込まれているという事だな!!! ハーーーーーハッハッハッハッハ!!!!!」
「それでは一度魔物を見破ったマノワール様に、確かめて頂きましょうか」
「僕ですか? まずは王太子の密書を、公開するところからですかね」
無茶ぶりをされるが、そんな名探偵みたいなことは普通のオッサンにはできない。
僕は密書の数々を、ばら撒くように貴族たちへと配った。
ここにある者は全てではない。
ここまで量がある程に、やり取りを重ねていたのだ。
当然魔王も証拠を山ほど抱えているだろう。
「なっ!? これは王太子としての押印! それに内容も魔物たちと取引し、貴族を襲わせるだと!?!?!?」
「なんということだ……これは偽造できるはずがない!」
「やはり王太子様は魔物と共謀し、あの事件を……」
それを回し読みしていた貴族たちは、疑惑を募らせた。
王太子へと更に非難の視線を送り始める。
「ええいっ!?!?!? こんなものが証拠だと!」
ゲースリンスは血迷ったか、びりびりに密書を破り捨ている。
しかし貴族たちは冷ややかな視線を浴びせかけている。
この行動自体が疚しいことがあったという証拠のようなものだ。
「このとおりマノワール様はこのような功績も挙げております。英雄としてだけではなく、能吏としての能力もあるという事です」
「確かに」
「ふむ。流石は英雄殿です」
セインセス様は好機と見て僕に賛辞を送り、貴族たちも同調する。
僕達に形勢は傾いていく。
だが決め手にはならない。
「貴族としてこれ程頼りになるお方が他にいるでしょうか!? 彼こそが国を救う人物であることを私は確信いたします!!! よって―――――」
身振り手振りを交えたスピーチ。
そして本題へと移る。
僕たちの間だけで取り決められたこと。
それを周知のモノとすべく、彼女は宣言した。
「私こと聖女セインセスは、マノワール伯爵と結婚することを宣言いたします!!!!!」
貴族たちの反応は鈍い。
しかしヴェンリノーブル侯爵が拍手すると、釣られて手を叩いていく。
だがその音は少ないし、微妙な表情のモノばかり。
雰囲気には流されてくれないか。
貴族社会という伏魔殿に長らくいた貴族たちは、騙されてはくれないし簡単には派閥を明確にはしないよな。
どうしたものか
頼りになる仲間に効いてみるか。
僕なんかじゃ何もできることはないし。
「う~ん……魔物に詳しいオキャルンさんなら、その人のことを知ったりしていますか?」
「はい~その方は幻覚を見せる魔物、妖狸ですね~ステータスを改竄したのではなく、幻影しか見せられていないのでしょう~」
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