表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

211/241

第211話 「荒れる王宮」




 その頃の王宮は荒れていた。

 王太子の怒りは頂点に達していたからである。






「あのデブ! 慎重に行動しないからこうなるっ! だから自分の生活にも慎重じゃないデブはダメなんだ! 死んで当然だデブがっ!!!!!」



 脂肪の多いタイプの人々に対する罵詈雑言。

 体型は人それぞれであるのに、このように一括りにしてバカにする言い草が。

 この王太子の人間力を言い表しているといえよう。




「セインセス! そしてマノワール! アイツらが真犯人なんだ! 都合がよすぎるとは思わないのか! 早速捕らえて参れ!!!」



「お待ちください!? 仮にも貴族ですぞ!? もし王女殿下たちを証拠もなく逮捕すれば、恐怖政治を恐れた他の貴族たちからの反発を大きく買いかねません!?!?!?」



 面目を潰されたとして排除しようとする王太子。

 彼の妹である聖女を拘束しようとしたが、大臣たちが止めた。






「それが魔物たちの策だと言っている!? それであやつらが犯人だったとして、責任を取れるのであろうな!?!?!?」


「それは……」

 

 それも魔物の陰謀だとして、糾弾する。

 責任問題を避けるべき、言いよどむ貴族たち。




「とても難しい懸案事項です。まずは慎重に捜査するとしましょう」


「同感です。皆様も頷いていらっしゃることですし、調査しながらまた後日会議をすることとしましょう」


「グギギギ……!? 勝手にしろっ!!!!!」


 彼らの提言により王太子は激昂し、会議室から飛び出した。

 政治闘争へと至ることが確定したようなものだ。


 暗い未来を予感した貴族官僚たちは、暗澹たる思いで溜息を吐いた。

 原因である王太子への愚痴は、留まることを知らない。







「王太子には呆れたものです。知らぬとはいえ、あのような魔物を引き入れていたとは。本当は裏切っているのではないか?」



「さすがに王太子が魔物を引き入れたというのは、穿ち過ぎだ。あの王子はそこまで愚かではない」



「セイリムリは確かに魔物を撃退しておりましたからなぁ……実際は魔物同士で八百長をしていたのかもしれませんが。我らもわかりませんでしたし、仕方ないことでしょう……」



 セイリムリが談合に基づいて、領内の安全を保障していたのだと。

 文武の権臣たちは可能性を討議する。





「教会は完全に王太子を疑い、聖女である王女殿下に着く」


「命の危機に二番目に近い地点にいらっしゃいましたからな。さぞやご立腹でありますことでしょう」


「国が割れるぞ。どうなってしまうのだこの国は……」


 貴族たちは虚空を見つめ、表情を曇らせる。

 この国の未来が暗澹たるもののように見えたからかもしれない。







「クソッどうしてこうなってしまった!? 私の策は完璧だったのに!?」



 会議室から出たゲースリンス王太子は、自身の予想が裏切られたことを信じられない様子。

 そして彼の目論見を瓦解させた人物へと、文句を口にした。






「おのれおのれおのれおのれマノワールぅぅぅぅぅっっっ!?!?!? 私はこんなにも頑張ってきたのに!? なぜお前のような低度な人間が私の邪魔をするっ!? なぜ昔から世界は私の思い通りにいかないんだ!? 私は一人孤独に、この国のために努力してきたんだ! 強い私が負けるはずがない!!!」




 髪を振り乱して荒れるゲースリンス。

 呪詛を唱え続けるその姿は、まるで幽鬼のようだ。


 強さを履き違えている彼は、機能不全家庭の所産。

 幼き頃から王室外交などを押し付けられ、何とか歯を食いしばって乗り越えてきた彼。




 それを手伝ったセインセスは、その才能から多大なる評判を受けた。

 彼が更に捻じ曲がってしまったのは、そこだろう。


 才能の差を実感して歪むということという、往々にしてある悲劇が。

 親の愛を受けて育たなかった彼らは、好意を伝える事、絆を育むことが健全にできなかったのだ。






「何用だ!? 入れ!!!」



「ご機嫌麗しゅう王太子様。素晴らしい吉報がございます」



「私は今苛ついているんだ! くだらない要件なら覚悟はできているのだろうなっ!?」



 自室に入ったゲースリンスは、息荒くしてベッドに腰掛ける。

 そんな折に怪しい人物がノックをして入室した。


 顎まで覆い隠したフードを着た、謎めいた人物。

 その指には髑髏の指輪が嵌められており、サンシータたちを唆した人物と同じ存在だと認識できる。

 





「もちろん有用なことです。この者のステータスをご覧ください」




 このものの後ろには、これといった特徴のない茶髪の女性が。

 その後姿だけが見えるが、半透明のボードが空に浮かんだ。




「なっ! これは」




 段々と眉間の皴は解きほぐされ、喜悦に染まってゆく表情。

 ゲースリンスは高笑いしながら、己の幸運を喜んだ。






「これならセインセスの奴を……! ククク……神は私を見放していなかったようだ!!! ハーーーーーハッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!!」









面白い、または続きが読みたいと思った方は、


広告下↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓の☆☆☆☆☆から評価


またはレビュー、ブックマークしていただけると、モチベーションに繋がりますので執筆の励みになります!!!!!!!!!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


旧作も読んでくださると嬉しいです!

 『異世界神様チート貴族転生したら、女装して女学園に通って悪役令嬢を誑かして婚約破棄させるように言われた。クラス転生していた悪役令嬢に男バレして追放されたがもう遅い。聖女(?)として復讐だざまぁ!』

テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
追放ザマぁの構造的問題への解決につながるかもしれないアプローチ。
新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


一日一回投票いただけると励みになります!(クリックだけでOK)

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点]  ゲースリンクを唆すさらなる悪……!?  一件落着かと思われた展開に意外すぎる波乱が……先の展開から目が離せません!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ