第210話 「新しい家族たち」
あまりにも無様な、しかし僕らしいプロポーズは受け入れられた。
もちろん改めて一人ずつ結婚を申し込まなければ。
婚礼道具とかも用意しないとだし、お金を稼がなくては。
そんなこんなで結婚準備も加わり、忙しい日々を送っていた。
王都の復興も大分目途がつき、壊れた家は僕の魔法で立て直すことができた。
あとは個人の頑張り次第だろう。
「しかし盲点でした。自分で婚姻相手を選べるのなら、これ以上の相手はいません。婚姻は私が決める事ではないと、思い込んでおりました」
「伯爵位なら、おかしなことではないからね」
なぜか伯爵位まで貰えていた僕。
しかも侯爵位の内示まで貰えている。
アクレイとヴェンリノーブル侯爵と同じ爵位とは、僕になどとても不相応なものだと思う。
でもみんなを養うためにも、みんなを守るためにも必要なことだ。
絶対に向いてない貴族社交も頑張って見せる。
それが一家の大黒柱として負うべき責任だろう。
「皆さん。マノワールさんにご助力いただければ」
「もちろんさ。ここにいる皆は仲間、いや家族なのだから」
「……! えぇ。そうでしたね。フフ♪」
アクレイの返答に、驚きを呈するが。
とても嬉しそうに目を細めたセインセス様。
家族ができたんだ。
本当の家族が。
今までで一番嬉しかった。
「あぁアクレイが王女殿下を泣かせてしまったぞ」
「セインセスを泣かせる人間がいるとは、エルフの人生でもお前とマノワールくらいのものだろうな」
「ボクのせい!? いい事言ったはずなのに!」
コックロとエルマージが早速弄っている。
慌てふためく妙齢の貴族女性。
見た目は悪役令嬢という職業に相応しい、美麗かつ華麗なる女貴族の鏡なのに。
アクレイはイジワルするのもされるのも、輝いてしまうのだ。
「アクレイさん弄りはさておいて~セインセスさんを放置するのは可哀そうです~」
「オキャルンさんまでボクの扱いが雑に!? 僕を慰めてくださいセインセス様!」
「普通は逆ニャ……」
セインセス様に抱き着いて後ろに隠れたアクレイ。
本当にエキサイティングな子だな……
でもセインセス様は鷹揚に微笑む。
アクレイを邪険にしない、器の広い女性なのだ。
「いえ。嬉しかったんです。本当の家族みたいで」
「本当の家族です。セインセス様。私のことも遠慮なく頼って頂きたく」
「えへへ……はい」
男前にコックロは言った。。
あれ? 僕のセリフ盗られちゃったんじゃない?
「血のつながった家族は、私になど興味はありませんでしたから」
「国王陛下もですか?」
「私が生まれたばかりの頃。陛下は早くに母が亡くなってから、次の王妃も娶らず自室に籠る様に……王太子にも幼い頃から負担をかけてしまっていました。だから彼もあそこまで歪んでしまったのかもしれません。私はそんな彼を支えたくて。政治の道を進んだのですが……」
そうだったのか。
王太子も心労に押しつぶされ、歪んでしまったのだな。
それでも彼なりに王国を想って、暴走してしまったのか。
セインセス様が他人に頼ることが苦手なのも、幼少時代からの孤独がそうさせてしまったのだ。
それでも王太子のためにと頑張っていたのか。
何と報われないお方なのか。
そしてそんなセインセス様たちを放置した王も、愛する人を失ったから心を病んでしまったのだろう。
そうするとなんとこの世界は救われないのか。
「その国王陛下がこの期に及んでも姿を現さないとは、おかしいですね。何か事情があるのでは?」
「調べる必要があるかと。魔物の手が伸びているという線も大きいと推測します。恐らくは王太子が手をまわしているのでしょうが」
王太子が父である国王を憎んでいないはずがないと思う。
親であっても、親であるからこそ許せないことがある。
僕はきっと王太子と同じだ。
彼は僕が辿る可能性の一つだったのかもしれない。
「あとは……王太子はどのような処遇を受けるか。そして王太子がどう動くかですね」
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