第208話 「結婚宣言」
「早速報告に参りましょう。仲間の皆さんにも筋を通さねばなりません」
「…………あぁ! そうですね。大切なことです」
僕たちは部屋に入り、皆がいる今に赴く。
心なしかセインセス様は立ち直ってくれたように思える。
先ほどよりも覇気が灯った瞳。
少し安心した。
セインセス様に忠誠を誓えば、みんなに迷惑がかかるだろう。
勝手なことをするなと、裁かれてもかまわない。
きっと出ていく人も出るかも。
でもいい機会だ。
僕のことを好きでいてくれる彼女たちが、新しい道を見つけたのなら祝福したい。
それは寂しいことだけど、別れもまた人生だ。
遠くから彼女たちの成功を祝ってあげたい。
そんな男にボクは―――――
「―――――皆さん。申し訳ございませんが、マノワール様と結婚させて頂きます」
「ん……?」
え?
…………え?
「マノワールさんのことは悪く言わないでくださいませ。彼は本当は私のことなど好きではないのかもしれない。むしろ迷惑がっているのかも」
「いえ! そんなことは!」
「いいのです。私のような女としての魅力がない人間。自分でもわかっております。私にのようなつまらない女。話していても退屈でしょう。同性の友人だって、いないのですから」
卑屈な笑みを浮かべて自虐するセインセス様。
皆から慕われる彼女だったが、対等な目線で、本心を打ち明けられるものは恐らくいなかっただろう。
随分と唐突だったし、意図してない事だった。
ってあれはプロポーズだと思われていた!?!?!?
重要すぎることだが一旦は置いておいて、彼女の心を癒すべく言葉を紡ぐ。
あなたが卑下するのなら、いったい僕はどこまで卑小な存在となってしまうのか。
「セインセス様は素敵なお方です!!! とてもお優しく、気高く、逆境にも負けない心の強さを持つ、私の理想とする女性です」
「うぅ」
「ご自信を卑下なさらないでください! あなたは幸せになるべきお方です! そのためになら私はなんだってする所存です!」
目を見開いたセインセス様。
そして美しい形をした桃色の唇を動かすが、何も言葉にならず俯く。
かわいい。
「みんなの前でお熱いことだね」
「わたしたちの気持ちをわかっているんですか~?」
冷え切った雰囲気の仲間たち。
僕のことを好きだと言ってくれたた人たち。
更にセインセス様は俯いて、浮かない表情をした。
自責の念で胸が張り裂けそうになっているのだろう。
「すべて私のせいです。マノワール様ではなく、私を糾弾してくださいませ」
すべての憎しみを背負おうとするセインセス様。
僕も腹を決めた。
身勝手すぎる言い分であることは、わかっている。
でも好きって気持ちは止められなくて、背を向けることなんてできない。
彼女たちとは釣り合わないってわかっているけど、
もう一緒に居たくないと言われたら、潔く身を引こう。
せめてものプライドだ。
「僕はもうオッサンだし、人間だし、ダメな男だ。おまけに多くの女性に懸想する、クズ男なのに。おまけに皆と出会うまで、今まで誰一人として真剣に向き合ってこなかった。そして誰か一人だけとも決められない、そんな社会不適合者だよ」
自分で言っていて、どれだけ自分が最底辺の人間かわかる。
長年付き合ってきた子にすら、愛想をつかされてもおかしくないだろう。
でも嫌だ。
子どもの駄々みたいに惨めな行動けれど、彼女たちと一緒に居たい。
ずっと一緒に生きていて欲しい。
そのためになら僕は、世界で一番の男だって目指して見せる。
「一人一人と向き合うと誓う! 僕みたいな冴えなくて鈍くさくてダメなオッサンだけど、
それでもみんなとずっと特別な関係で一緒に居たいんだ! 君たちのためなら何でもできる! 誰よりも幸せにして見せる!」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「全力で頑張るから、結婚してください!」
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