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第206話 「祝福されるマノワール」




 体力を相当に消耗した。

 目が霞む。


 剣を杖代わりにして、荒く息を吐く。

 尋常でない能力だった。

 もっと時間を与えてエネルギーを蓄えさせていたら、負けていたのは僕だったかもしれない。




 仲間たちが追い詰めていなければ、セイリムリは分裂して壊滅的な被害を与えていただろう。

 それに安心した瞬間、ガクガクと笑う膝は遂に屈するが如く折れようとした。






「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!!!!!!」」」」」」」」」






 だが空間が爆発したような大音量に、僕の意識は覚醒した。

 周りを見ると僕を取り囲んで、腕を振り上げて喜びを表している。


 カーズ王国の貴族も平民も、獣人も人間もエルフも陽キャも問わず。

 僕たちを祝福したのだ。






「英雄マノワール様ばんざーい!!!!!」



「助けてくれてありがとうーーーーー!!!!!」



「カッコよかったぞーーーーー!!!!!」



 守れたんだ。

 どうしようもなかった僕が、こんなに感謝されている。


 少しは社会の役に立てるようになったんだ。

 ようやく本当の大人になれた気がする。






「兄貴カッケェーーーーー!!!!! ヤッベェーーーーー!!!!!」



「なんという人間だ!!!!! マノワール殿!!!!! あなたは本当の英雄だ!!!!!」



「伯爵様ステキーーーーー!!!!!」



 陽キャやエルフたちも、集落のみんなも熱狂的に叫んでいた。

 皆の感動と熱が、鼓膜を通して伝わってくる。






「お前ならやってくれると信じていたぞマノワール!」



「マノワールさんカッコよすぎたニャア♡ ミーニャますます惚れちゃったにゃあ!」



「マノワールさんを見てると、胸がドキドキしちゃいますぅ~……はぅ…….」



 他種族の仲間たちも、褒めてくれていた。

 皆のおかげだ。

 僕が変われたのは。





「マノワールさんは凄いんですから!!! わたしは最初からわかってました!!! でも本当にカッコよくて……!」


「お兄様はもう昔の無力な子じゃない。ボクの自慢の旦那様だよ」


「よかった……お兄ちゃんがやっと認められたんだ……それだけでも嬉しいよ……」


 ニンメイちゃん達妹分も、喜んでくれている。

 支えてくれたからだ。

 一人で戦ったからじゃないんだ。






「マノワール様。本当にありがとうございました。あなたと出会えて本当によかった」



「セインセス様。お辛い思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」



 ウェディングドレスを纏った聖女。

 セインセス様が感謝を述べてくれた。


 戦いには勝てた。

 でもそれまでで彼女は深く傷ついただろう。

 兄からの裏切りに肉親の死、そして望まない結婚、




 僕が情けないから、望まぬ恰好でセイリムリなんかと……

 僕がもっと頭がよくて、強ければこんなことにはならなかったのではないか。

 そう思うと、この賛辞は素直には受け取れなかった。







「土で汚いですよ。素敵なお召し物が―――――」




「いいんです」




 幸せそうな笑みを浮かべて、僕の手を取る。

 そうされて初めて自分の身体が砂埃まみれであることに気づいた。


 素敵な恰好の女性に、こんな汚れた身で触れられない。

 それをやんわり振りほどこうととすると、更に両手を握られる。




 そして彼女の豊かな胸元に押し付けられた。

 彼女の早い生命の鼓動を感じる。

 僕の心臓も共鳴するように、脈拍を募らせた。




「きっとあなたとなら私はなんだってやれる。だから何も怖くありません」




「セインセス様。僕なんか……もっとうまくやれた筈なんです。僕は本当にダメな男で」




「そんなこと言わないで」




 決然とした、そして悲し気に否定する。

 俯いた僕の顔に、少し屈んで見上げてくるセインセス様。






「あなたは素敵な人です。強さだけじゃない。一番大切な心が美しいのです。私はそれに救われました。守ってくれるって言ってくれて嬉しかった。それだけでもどんなに辛くとも生きていけると思えました。そんな素敵な人が、ご自身を責めないでください」






 そうか。

 僕が自己嫌悪していれば、僕なんかを好きでいてくれた仲間のみんな。

 そしてその僕に守られたと思っているセインセス様を、侮辱しているのと同じだ。




 本当にそう思ってくれたなら嬉しい。

 僕みたいなやつでも、お姫様に褒められたんだ。


 こんな冴えない41歳のオッサンでも、少しでも変わることができたのかもしれない。

 嬉しくて仕方なかった。

 涙が零れた。






「一緒に居て下さって、助けて下さってありがとうございました。マノワール様」






 僕の涙をそっと指で拭い、セインセス様は笑った。

 僕も笑えただろうか。

 何とかぎこちなく口角を持ち上げた。


 今までで一番美しい笑みを浮かべた彼女。

 僕は救われた気持ちになってしまった。

 彼女の美しい心に触れた気がした僕は、視線を目の前の女性に奪われる。




 時間が止まった気がした――――――――――









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 『異世界神様チート貴族転生したら、女装して女学園に通って悪役令嬢を誑かして婚約破棄させるように言われた。クラス転生していた悪役令嬢に男バレして追放されたがもう遅い。聖女(?)として復讐だざまぁ!』

テンプレ末期戦異世界チート転生女学園潜入もの書いてます。
こんなタイトルですが、神々の争いに主人公が巻き込まれるシリアス戦記です
 

 『追放ザマぁジャンルの研鑽について、また個人的対策案の成否に関する所感』

初エッセイです。本作品を基に書きました。
また初創作論です。
追放ザマぁジャンルを執筆する作者として、自分なりに反省点を交えた考察。
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新追放ザマぁシステム『連続追放』を通して分析することで、違和感なく楽しみながら完読できる小説を目指すという、ジャンル全体における質の向上を目標とする文章です。
皆さんの目で、お確かめ頂ければともいます。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  大勝利キター! ヒロインズとセインセス王女のハートも鷲掴み! なのに驕らないマノワールは本当に美しいハートの持ち主ですね(๑•̀ㅂ•́)و✧  ……あれ、誰か一人忘れてるような
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