第204話 「職業変態シェイプシフター」
セイリムリの残骸、ドロドロの液体に溶けていない個体たちはまだ動いていた。
人間なら何度も即死しているような傷。
それでもセイリムリの生命力は、生存能力を失していなかったのだ。
セイリムリたちは這いつくばって、必死に集まろうとしていた。
戦闘で追い詰められ食糧源も断たれたことから、奥の手を使おうとしたのだろう。
そして同族の体に触れると、身体が溶け合って一体化してゆく。
「ぼくたんは変身できる特性を持った魔物シェイプシフター」
それは自らの姿を、多彩な生物の姿に変化させることができる魔物。
その本来の姿を知る存在は、ほぼいないと言われている。
オキャルンすら知らなくても無理はない。
セイリムリはあまりにも希少な特殊個体であったのだから。
「遺伝子を取り込んだ生物に、自由自在に成れるということでしゅ。まぁこの能力は僕は限定されてしまったんでしゅけどねぇ」
ミニセイリムリたちは手を繋ぎあい、身体同士が繋がっていく。
そして元の形へと回帰してゆくのだ。
他の魔物に変身せず、醜悪な人間の姿に固定されているところを見るに。
変身できる幅は限定されているのかもしれない。
「その原因となった職業は変態。これがどういうことか、わかりましゅかぁ?」
「なん……だ……このデブ……」
エルマージは目を見開いて、揺れた瞳で空を見上げる。
尋常でない量の脂肪の塊だ。
「変身生物に更に変態職業が加わった結果、多様な変身性能は失われた代わりに。生物として変貌を遂げることができまちた」
巨大なる変態のデブ。
人間など足の裏でペシャンコにできるくらい、巨人化したセイリムリがエルマージ性質を見下ろしていた。
「ぼくたんは無敵の生き物なのでしゅ♡」
最後の最後に集まって、真の姿を現したセイリムリ。
ここまでの大きさとなると通常攻撃が何処まで効くか。
余程の攻撃力がないと、ダメージにならないだろう。
ミーニャは絶叫して、対策が思い浮かばないことを嘆く。
「無敵の変態デブ……どうすればいいのニャ!?!?!?」
その頃アクレイたちもそれを発見していた。
遠くから見ても判別できるくらいの巨体に、兵たちすら恐れ慄いている。
「なんだあの化け物は? セイリムリか!?」
「マズい! 王城へと進んでいるぞ!」
「あそこにはセインセス様たちがいるんだぞ!?」
王城へ向かって、物凄い勢いで走って来る変態デブ。
貴族たちを最優先に皆殺しにしようと、このシェイプシフターは企んでいるのだろう。
悍ましい光景に誰もが右往左往する。
その間にも敵は接近しているのに。
「なんだあれは!? もう少しで辿り着いてしまう!?!?!?」
「マノワール様……助けて……」
貴族たちも魔法を使う者は多くいる。
だがあそこまで大きな魔物に対抗できる術を持つ者は、この場において皆無だった。
聖女セインセスすら、彼女の光魔法の威力では打倒は敵わない。
必死に祈るが、ついに目前まで迫る敵。
彼女の瞳にはハイライトが消え失せていた。
「あなたは絶対に守ると言いました。そこで見ていてください」
「あっ――――――――」
その時だった。
白目を剝いたゲースリンスを転がし、この人物は現れた。
カース王国の英雄。
魔王幹部とダンジョンボスを打倒した、最新の伝説。
そうは見えないほどにさえない風貌をした、身体だけは鍛えられている中年男性。
おそらくは彼が相手取っていた二体のセイリムリは、持久戦の末にカロリーを使い果たし消滅したのだろう。
それを成し遂げた男マノワールは、王城内から姿を現した。
その後姿に、胸元を抑えて赤面したセインセス。
夢を見るようにその雄姿に目を奪われていた。
「マノワールさーーーーーん!!!!!」
「無事だったかニンメイちゃん! みんなも!!!」
セイリムリの隣から大回りして、4人の女性たちが駆けてくる。
マノワールは彼女たちの無事に安堵し、すぐに表情を引き締めた。
「マノワールさん!? 私たちのことはいいから、早くセイリムリを!」
「ミーニャ達は皆を避難させて、下がっていてくれ! アイツは僕が片を付ける!!!!!」」
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