第196話 「仲間への襲撃」
激動の日々を迎えていた僕ら、早速情報収集に努めていた。
貴族たちにはアクレイとコックロ。
商人や冒険者にはオーエラさんを中心に。
人海戦術が必要な時は、陽キャたちやオキャルンさんと集落のみんなが頑張ってくれていた。
だが後手に回るばかり。
襲う方が襲う時間や場所、そして狙う人物を決められるのだから捕まえることは困難。
やはり犯人確保をするしかない。
「ますます貴族たちの被害は増えております。分析結果はこちらとなります」
「露骨に王太子の対抗派閥に集中している。黒ですね。オーエラさんのおかげです」
「恐れ入ります」
捜査のために行動科学的に分析し、プロファイリングをするオーエラさん。
証拠確保のため、精力的に活動してくれている。
「ヴェンリノーブル侯爵も動いて下さっておりますが、彼の身自体も危ないでしょう。護衛が多い軍務官僚に襲いかかるとは思えませんが、屋敷にいる時に襲われたりしたら……」
「同感だ。彼にはここで生活頂くのがいいかもな」
相談するうちに話をしに行くこととなった。
ヴェンリノーブル侯爵がいなければ、いろいろマズいことも多い。
国軍が彼のような有能な人間に統制されなければ、この国は本当に終わりかねない。
「私達で情報を伝えに参ります。マノワールさんとエルマージさん、ニンメイさんは王女殿下をお願いいたします」
「わかった。気を付けて」
アクレイとコックロ、ミーニャとオーエラさんが連絡員として向かう事となった。
僕たちパーティ初期メンバーは護衛に当たる。
その間に伯爵としての職務を果たすべく、書類に埋もれる。
そうやって待っているが、どうにも彼女たちの帰宅予定時刻を過ぎているようだ。
「少し遅いなぁ」
「ヴェンリノーブル侯爵はお忙しい方ですし、話し合う件も難しい内容ですから」
その可能性が非常に高いのだが、心配をしてしまう。
自分の手が届かないところに仲間が行って、それを待つのはもどかしい。
ニンメイちゃんにも苦笑されるくらい呆れられてしまっているが、でも心配だ。
時計の秒針を眺め、歯痒い時間を過ごしていた時だった。
急に屋敷の扉が乱雑に開け放たれる。
「敵襲か!?」
「お兄様! 大変だ! 襲撃されてオーエラが重傷を負った!」
飛び込んできたのは、コックロ。
そして彼女に背負われた、眼鏡をかけた血濡れの女性。
大怪我をした大事な仲間の姿。
大怪我しているオーエラさん。
頭が真っ白になった。
「ごめんなさいマノワールさん。私のせいにゃ……私がセイリムリを抑えきれなかったから……」
「いや私がカバーできないのが悪かった。私が重装騎士として守る役目だったのだから。陽キャたちが駆け付けていなければ今頃……」
「二人のせいじゃないよ! それよりも早く回復を!」
「必ず助けよう!」
傷だらけのミーニャさんとコックロ。
相当な激戦だったのだろう。
疲弊しきっているのに、よくもここまで賭けてきてくれた。
エルフの皆さんも助けてくれたようだ。
次々と見知った顔が屋敷に入って魔法陣を起動する。
エルリフォムさんが回復魔法をミーニャたちにかけてくれている。
「回復魔法を直ちに。皆さんは落ち着いて、周囲の警戒などを。慎重を期して王都の情報を収集して頂ければ」
「…………」
「オーエラさん」
医療のスペシャリストである聖女セインセス様。
彼女も走り寄ってきて、オーエラさんに癒しの魔力を込める。
意識不明の重体。
懸命に回復魔法をかけていたのだろうが、命が危ういほどに肩から背中にかけて切り裂かれている。
「峠は越えました。命に別状はありません」
「よかった……生きていてくれて……」
「ですが傷が……」
痛々しい傷跡が残ってしまっている。
息は平静になって来たが、まだ痛みに表情を歪めている。
大切な仲間の窮状。
義憤は強まり、後悔と怒りが同時に押し寄せる。
「よくもオーエラさんに……よくもっ……!?」
拳を握り締め、悔し涙が出てきた。
いやな予感はしていたんだ。
さっきミーニャさんが漏らしていたが、セイリムリの仕業だろう。
僕がふがいないせいで、あんなに怪しいやつを真剣に追及していなかったせいで。
女の子の身体に一生消えない傷を残してしまった。
皆の怒気は頂点に達した。
包帯を巻いたコックロが、状況説明をする。
「セイリムリだ。偶然セイリムリと出くわしたかと思うと、アイツは醜悪な魔物に変化した。そして交戦したんだ」
「そうか……セイリムリが……」
「襲おうとしたのはヴェンリノーブル侯爵だろう。そちらを集中して狙っていた。私たちは彼も守ろうとして、このザマだ。騎士を目指していた身として、あるまじき不覚」
「生きていてくれただけで嬉しいよ。皆を守ってくれてありがとう」
「でも傷が……私のせいなんだよ……お兄ちゃん……」
ヴェンリノーブル侯爵を襲撃するべく、セイリムリは待ち構えていたのだ。
迎えに行ったコックロたちが偶然遭遇し、戦闘になったのだ。
コックロの身体も傷つけて、そして彼女の心にも大きな傷を残させた。
彼女たちのせいじゃない。
そんなことは絶対に言わせない。
傷つけるやつが悪いんだ。
「こうなればセイリムリの不正を必ず暴く。ダイフラグ殿下の死に関わっているはずだ」
僕は決めた。
この行動は多くの混乱を呼ぶだろう。
しかしやらなければ国民、いや世界が。
何より大切な仲間たちの身が危ない。
「王太子と完全に敵対することになります。よろしいのですね?」
「王太子は君側の奸」
セインセス様に念押しされるが決意が固まった。
仲間のために、国のために。
聖女様の幸せのためにも、僕は戦わなければならない。
「ゲースリンスを王太子から引き摺り下ろす」
王国打倒。
つまりゲースリンスを排除することを決意する。
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