第195話 「明かされるマノワールと魔王の関係」
「なぜそれを!?」
魔王は何故か僕の職業を知っている。
なぜ漏れた?
まさか裏切者が他にも、それも僕の近くに―――――
皆が警戒する。
「名乗らなかったが、行き倒れた子どものお前を助けてやっただろう。20年ほど前の、昔の私とお前のことだ。あんなゴミステの存在が、この世にいるとは思わなかった。野良犬に半殺しにされかけていたのを見た時は、笑ってしまった」
「忘れて!?」
唐突に暴かれる黒歴史。
こんな方向から過去の傷口を抉られるとは思いもしなかった。
それで一念発起して、土木作業員あるいは冒険者として筋肉つけようと思ったんだよね。
この懐かしい口調、そして過去であった憧れの女性を思い出す。
彼女は―――――
「―――――もしかしてあの時、僕を助けてくれたお姉さん!? 僕が子どもの頃に、しばらく面倒を見てくれたお姉さん!? 名乗りもせず生活も適当で、旅の仕方も雑で何もかも脳筋方法で解決していた、謎に魔法が得意だったお姉さん!?」
「そういえばそう呼んでいたな」
魔王が闇に包まれると、肌の色が変わる。
間違いなくお姉さんの顔だ。
神と肌の色が変わると、印象が凄く変わるな。
無表情な茶髪の凄まじい美少女。
どこか見覚えがあると思ったら、あの頃と全く変わらない容姿の女の子が目の前にいた。
「やけに貫禄あるかと思ったから年上だと思ってたけど、まさか魔王だったとは」
僕の方が身長は上だったけど、女の子だったし。
随分と老成していて旅慣れていた様子だったから、童顔な大人の女性だと思っていたけど
いや当時から人間からすれば大人だったんだろうけど、
今でも信じられない。
「なんで人間の領に」
「お父様が生きていた頃、私は旅をしていた」
「とても長い反抗期でしたからねぇ~」
「閉じ込めようとしていたお父様が悪い」
眉を顰め、父への不満を述べている女の子。
初めて感情を見せた魔王マオ。
彼女は相変わらず事務的に、滔々と用件を並べ立てる。
「ともかく聞いての通り、私は人間に隔意はない。エルフにも獣人にも」
「そんなものはいくらでもどうとでも言える! エルフを大勢殺したお前の言葉など!?」
「信用しないならば、それでもかまわない。だがそれはお前たちの同胞を危険にさらすだけと知れ。どちらかが滅びるまで、永遠に絶滅戦争をするつもりか?」
「グッ……」
魔王にう通り、戦争には落としどころを見つけなければいけない。
激憤するエルマージは、いつもの冷静沈着な彼女らしく正しい論理を前に口籠った。
「マノワールを助けてくれたことには礼を言うが、お前など信用しないぞ!」
「利害関係が一致すればいいだけの話。オキャルンを伝言役とする。何かあれば連絡しろ」
エルフの仲間は懊悩していたが、ある程度の協力関係を結ぶことに消極的に賛成した。
それを聞いたマオは用事を済ませたとばかりに、即座に背を向ける。
風を起こして、空に飛んでいった。
嵐のような女性だ。
昔と変わらないと、複雑な感情が渦巻いた。
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