第194話 「青肌の魔物少女、王都襲来」
聖女としてのパレードが終わり、僕たちはつかの間の憩いの時間を満喫していた。
最近は特に忙しかった。
少し休みを入れようと話していた時に、彼女は訪れた。
緑の髪をしたドリアードが現れる。
待っていた彼女の到来に、僕は安堵と期待を込めて出迎える。
「マノワールさん~勝手を聞いて頂き、その間子どもたちの面倒を見て頂き、ありがとうございました~」
「オキャルンさん! 早かったですね!」
「わたしには植物を生やす能力がありますので~それにそのぉ……」
「……?」
生やしたのは巨大な鳳仙花。
これで推進力を得ていたんだな。
前もやっていた。
しかし何か言い淀んでいる。
何か懸念でもあるのだろうか?
「――――――――――私がいるからだ」
「魔王!?!?!?」
青い肌をした黒い目と金の瞳孔を持った、魔物の少女。
いつの間にか魔王マオが目の前にいた。
余りの衝撃に臨戦態勢を反射的に取った。
訓練の賜物であるが、マズい。
これだけの至近距離では自宅を作る時間すら――――――
「ここで戦う意思はない。私は人間を滅ぼそうなどとは思っていない」
「なら何故ここに現れた!? エルフと人間を殺し、お前の言う事を誰が信用すると―――――」
「魔物が死ぬから。戦争など極力御免こうむる」
憎しみの籠った口調のエルマージ。
故郷を燃やされ大勢の同胞を失った彼女には、許し難き相手だ。
端的に回答するマオ。
彼女の要求は単純なことではあった。
「死んでほしい魔王幹部の情報を渡す。お前たちが殺していい。お前たちの功績になるし、侵略者を殺せる。悪い話ではないだろう」
魔王の提案は一見して都合のいいものに見える。
しかし僕の従妹の侯爵家当主は、疑義を指摘する。
巧みな甘言に乗せられて魔王の陰謀には嵌められまいと、彼女は全力を尽くしてくれているのだ。
「ボクは協力するとは即答できないな。その情報を渡される魔物が戦争推進派とは限らないだろう? むしろ戦争停止派だったら目も当てられない」
「アクレイ・オッサツイホ。お前の養子を殺した魔物を、知っていると言ってもか?」
「え?」
唐突に告げられる衝撃的事実。
もしそれが本当なら、間違いなく戦争推進派の魔物だ。
そしてアクレイの仇。
従妹の妙齢の女性は目を見開いて、見るからに動揺している。
それを見据えながら魔王は話し続ける。
何処まで僕達の情報を知っているんだ。
人類勢力の有力者に関するプロファイリングも、相当に行っているとみていいだろう。
「この国で起きている事件。それには共通項がある。魔物と思われる、しかし一向に掴めない情報。まるで消えたかのように、証拠は見当たらない」
「なにを」
「セイリムリ。あの男が犯人だ。あれが殺害していた人間に擬態している魔物」
ゲースリンスが突然連れてきた、セイリムリ男爵。
いやな直感はしていた。
あれは魔物だったのか?
本物と入れ替わったのか、何が起きているのかはわからない。
真実か定かではないが、アクレイの養子もそうやって殺されたらしい。
だから復讐心を抱くのは当然。
彼女の表情を見れば憎悪に染まっていた。
「ということはゲースリンス王太子が加担しているという事ですね」
「そうだ。それに関しても裏が取れている」
「これは……王太子の密書……なんてこと……魔物を使って、自身の政治的影響力を強めるなんて……」
魔王マオが放り投げたのは、王太子の印章が押された手紙。
それを確認すれば、次々と悪事をほのめかす文章の羅列が。
言葉はないが、仲間の間に激震が走る。
一国の王子。それも次代の王が人類を裏切っていたのだ。
「わかりました。そちらの処理もいたします。情報提供感謝いたします」
「セイリムリ。あれを殺してくれればそれでいい。お前たちの国のことは、お前たちの好きにすると言い」
魔王は淡々と感謝を受け流す。
心底どうでもいいようだ。
彼女の興味の向かう先は、魔物の安全。
そういう事なのだろう。
すぐに信用はできないが、彼女の行動方針が段々と掴めてきたかもしれない。
「話を戻すがセイリムリ、奴はあれでなかなかに強い。魔王幹部になってもおかしくはない。いや多くの魔王幹部よりも確実に強いだろう」
「マノワールさんなら倒せます!」
「そこの人間は中々やるが、セイリムリより強そうには見えない。だがエルフの里では非常に強そうには見えた、何故?」
「それは心配無用だ。僕にはパワーアップできる秘められた力がある」
「マノワール! 魔王に情報を渡すなどダメだ!?」
魔王に返事をした時、エルマージが慌てて制してきた。
うかつだったと顔が青くなる。
僕の能力がばれれば、弱点である強化前を突かれかねない。
「すでに推測している。あの謎の土の小屋。あれが能力強化のトリガーになっていると推測する」
「いや違う」
「お前の隣の小娘の反応で確信した。何らかの特別な職業かスキル。それが引き金になっているのだろう」
ニンメイちゃんがびっくりした顔をしている。
そして申し訳なさそうな上目遣いを、ウルウルと見せてきた。
可愛い食べちゃいたい。
じゃなくて、まぁ仕方ないか。
少し頭が回れば、推測できそうなことだし。
「―――――お前、自宅警備員のマノワールか?」
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